上 下
53 / 555

顔合わせ!

しおりを挟む
「おかえり千春、何を作ったんだい?」
「お父さんただいまー、メインと酒の肴を少しね。」
「それは楽しみだ、魔物肉で作ったの?」
「そだよ、牛の代わりにミノタウロスで、豚はオーク、鳥はコカトリスで作ったからね。」
「うわぁ凄いね!楽しみだよ。」
 2人は日本の方でゆっくり時間を過ごし、久しぶりに親子で近況を話した。

「チハル国王陛下がお呼びです。」
「もうそんな時間なのね、お父さん行こうか。」
 大樹はスーツ姿でビシッと決め準備万端だ。

「普段着で良いと思うけどなぁ。」
「そうかも知れないが、やっぱり大人としてこう言う場はビシッとしたいんだよ。」
「はいはいそうですにゃー。」
 扉を抜け異世界に入るとサフィーナとモリアンがお辞儀をする、応接室の方を通るとドアに兵士が立っている。

「物々しいな。」
「なんだろう、護衛の人だよね?」
「はい、この時間貴族の目も有りますので、要人として対応させて頂いております。」
 気付くと執事長のセバスが横に居て説明をしてくれた。

「それならしょうがないな、郷に入っては郷に従えだ。」
「まぁ分かるけどねー、私は既に住めば都だけどね。」
 千春がそう言うと大樹は安心したように微笑み返す、そしてセバスの後を歩きエイダン陛下の元へ向かった。

「チハル王女殿下、タイキ様を御連れしました。」
 そう言うと兵士は扉を開く。

「ようこそジブラロール王国へ、私はエイダン・アル・ジブラロール、この国の王をしておる。」
「藤井大樹です、千春をいつも見て頂き有難う御座います。」
 2人は握手をし微笑み合う、裏の読み合いの様な空気もなく友達が会うような雰囲気だ。

「紹介しよう、マルグリットとはチハルの部屋で会ったと聞いている、これが儂の息子エンハルトだ。」
 マルグリットとエンハルトはお辞儀をする、どちらも微笑んでいる。

「さぁ座ってくれ。」
「失礼します。」
 皆がソファーに座りセバスがお茶を入れる。

「まずは謝罪しなければならない事がある、タイキ殿の許可も得ずチハルを娘にした事、申し訳ない。」
 エイダン陛下は頭を下げる、横ではマルグリットも頭を下げていた。

「頭をお上げ下さい、話は聞いております、チハルが断れば無理強いはしないと言う事も聞いておりますので謝罪の必要は御座いません。」
「そう言って頂けると此方も有難い。」
「それに千春から『異世界の知識と技術』と、それを知る千春の保護を目的としていると聞いています、千春がこの世界で安全に生活出来るようにとの配慮を考えると、過分すぎる条件でしょう。」
 エイダン陛下の言葉に大樹は千春の身分の対価として過分だと答える。

「実の所を言うと儂としても貴族爵位を渡し相談役をして欲しいくらいだったのだが、妻がのう。」
「何をおっしゃいますの?まだ若い娘が貴族になって他の貴族の相手が出来る訳が無いでしょう、私、いえ!国が保護するのが当たり前です。」
「と、言う訳じゃ。」
 苦笑いで返すエイダン陛下、そしてそれを千春と大樹は微笑ましく見ていた。

「マルグリット王妃、いつも千春を見て頂き有難う御座います、これからもお願い出来ますか?」
「勿論ですわ。」
 当然です!と言わんばかりのマルグリットは大樹と千春を見つめ返す。

「有難う御座います、私もあと2週間程は日本に居ますので良ければお手伝いさせて頂きますよ、少なくとも千春よりも現場を知っていますからお役に立てるかと思いますので。」
「なんと!それは有難い事です、まぁその件は後ほどゆっくりと話すとして、夕食を一緒に如何ですかな?」
「是非、今日は千春が夕食に此方の食材を使って作ってくれたので楽しみにしているんですよ。」
「チハルの新しい食事か、それは楽しみですな。」
 そして皆は食卓へ移動する、次男のライリーと三男フィンレーも紹介をしテーブルに着く。
 前菜やスープが出たあと肉料理が来る。

「これが新しい料理か。」
「はい、ミノタウロスのローストビーフです。」
「うむ、食べてみよう。」
 皆がローストビーフを口にする、ソースはそれぞれが気になるソースを掛けていた。

「・・・うむ、言葉に出来んな、美味い。」
「美味しいで良いじゃ無いですか、こんな柔らかくて美味しい肉は初めてですわ。」
「千春この肉美味しすぎるよ、A5ランクの牛肉だよ。」
 大人3人も喜んでくれた、もちろん子供たちもニコニコしながら食べている。

「おいしい!」
 ニッコニコで食べているユラを、そしてライリー、フィンレーを見ると同じように食べている。

「ハルト兄様どうですか?」
「聞くまでも無いだろう、このレベルの食事なんて何処の夜会やパーティでも出ないぞ。」
「それは良かったです、お父様達は食事の後はお酒をお飲みになりますよね?今も飲んでますけど。」
「あぁ、タイキ殿とも飲みたいからな。」
「お酒のお摘みも準備してますので楽しんでくださいね。」
 そして無事食事も終わり大人達は別の部屋に移動した。

「チハル今日は私も陛下達とご一緒するから、ごめんなさいね。」
「いえ、きっと飲んだ事の無いお酒が沢山あるので飲み過ぎないでくださいね。」
「そうなの?それは楽しみね、でもほどほどにしておくわ。」
 そう言ってウキウキしながら別れた。

「さて、ユラちゃんお風呂どうしようかー・・」
「チハル様、湯浴みは大丈夫ですので王妃殿下の部屋で一度お待ち頂けますか?」
 サフィーナが王族対応モードで千春に話しかける、後ろには数人の侍女が立っている。

「モリーは?」
「食堂です(ボソッ)」
「うん、平常運転だね、それじゃ王妃殿下の所で待ちましょかね。」
 王妃殿下の部屋に入るとアルベルさんが居た。

「おじゃましまーす。」
「いらっしゃいませチハル王女殿下、ごゆっくりされて下さい。」
「ありがとう、そうだ、アルベルさんも参加して欲しいんだけど。」
 千春はアイテムボックスからスーパーで買ったお茶を色々出す。

「飲み比べしたいんだけどお母様の好きそうなお茶わかる?」
「はい、お好みは知っていますので。」
「それじゃサフィーお茶お願いしていい?」
「はい、それではご準備させて頂きますね。」
 サフィーナはアイテムボックスからいつものお茶セットをさっと出し準備をする。
 ユラは紅茶をあまり飲まないのでジュースを出してやる、100%果汁だ。

「こちらの香りが良いですね。」
「アールグレイだね、サフィーナは?」
「ダージリンの渋みも甘いお菓子と一緒でしたら合うと思います、チハル様の好みはどれですか?」
「緑茶かのう・・・。」
「何故急にお年寄りみたいに言うんですか?」
「なんとなく、でも緑茶の香りと渋みが好きなんだよ。」
「そうですね、飲んだ後のスッキリした口当たりは紅茶には無いですね。」
 3人はワイワイ言いながらお茶の飲み比べをする、ユラをそれを見ながらグレープジュースを飲んでいる。

「チハル様湯浴みの準備が出来ました。」
「ありがとう、ユラちゃんお風呂いこー。」
「はーい!」
「ユラちゃんお風呂好きだよね。」
「うん、きもちいいー。」
「気持ち良いよねー、今日はお母様遅くなりそうだし私の部屋で寝ようか。」
「うん!チハルおねえちゃんの国?」
「いや・・・あっち寒いから門の部屋にある寝室でねよう。」
「ユラさむいのすきだよ?」
「あ、そう言えば寒い所で育ったんだっけ、それじゃ向こうで寝よう。」
「うん!」
 2人はお風呂で温まり、日本へ戻ると2人でベッドに入る、寒いのにユラと一緒に寝る布団は暖かく幸せだった。


しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【全話まとめ】意味が分かると怖い話【解説付き】

ホラー / 連載中 24h.ポイント:80,215pt お気に入り:656

若妻はえっちに好奇心

恋愛 / 完結 24h.ポイント:731pt お気に入り:272

自白魔法の暴走?!えっちな本音を隠せません!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:92pt お気に入り:166

短編作品集(*異世界恋愛もの*)

恋愛 / 完結 24h.ポイント:227pt お気に入り:154

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:92pt お気に入り:2,336

フィリス・ガランの近衛生活

BL / 連載中 24h.ポイント:753pt お気に入り:290

没落貴族の異世界領地経営!~生産スキルでガンガン成り上がります!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:3,509pt お気に入り:3,504

それは愛ではありません

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:10,104pt お気に入り:267

処理中です...