上 下
37 / 748

オークの生姜焼き!

しおりを挟む
ピピピッピピピッ

「お?ご飯炊けたねー。」
 炊飯ジャーを取りに扉を抜け台所へ戻る。

「サフィー、これも持って行きたいから入れてくれる?」
 炊飯ジャーごとテーブルに置く。

「はい。」
 サフィーナはアイテムボックスを開き炊飯ジャーを入れた。

「それじゃ晩御飯を作りに行こうかー。」
「「はーい!」」
 モリアンとユラは元気よく挨拶で返す。

「夕食は王族と食べないんですか?」
 サフィーナは3食自分達と食べている千春に問いかける。

「今日はお米とオーク肉でおかず作るつもりだから出せないでしょ?」
「お米はどうか分かりませんが少なくとも国王陛下と王妃殿下はお食べになりますよ?」
「え?でもルノアーさんが出さないって言ってたよ?魔物肉は。」
「貴族が魔物肉を忌諱する事が多いので王族に出す事を避けてるんですよ。」
「でも大丈夫なの?」
「えぇ、国王陛下も王妃殿下も冒険者でしたから、それこそ私よりよっぽど食べてると思いますよ?」
「そう言う事ねー、でも一応出すならお伺いしてた方がいいよねぇ。」
「そうですね、お米も出すんですよね?」
「そのつもり。」
「お米はパンも一緒に出してお好きな方を選んで頂けば問題ないですし、良いんじゃないですか?」
「そだね、それじゃぁオーク肉出して良いか聞きに行くかなぁ。」
「そうですねぇ、殿下が食べないかもしれませんし、それでしたらセバスさんに伝言を頼みましょうか。」
「そだね、サフィーは調味料出して貰わないとだし、モリー聞いてきてくれる?」
「はーい了解です!」
 モリアンはユラと繋いでた手を放し足早に去って行った。

「ユラちゃん。」
 千春はユラに手を出すとニコッと笑ったユラは千春の手を握る。

「ルノアーさーんまた来たよー。」
「おー?夕食にしては早いな、何か作るのか?」
「うん、オーク肉でちょいと美味しいご飯のおかずをね。」
「ほ~、またみんなが食いたがるんだろうな、ちょっと待っててくれ。」
 ルノアーは数人に声をかけ、オーク肉を持ってこさせる。

「今日は王族もオーク肉食べれるようだったらあっちで食べるから。」
「あぁ、肉は昼に使ったロース肉か?」
「ぶっちゃけどこの部位でも美味しい!でもロース肉使おう、柔らかくて美味しかったし。」
「どれくらいで切る?」
「3㎜くらいの薄さでおねがーい。」
「そうすると1人5~6枚、いや野郎どもなら10枚食いそうだな、よし、とりあえず目の前に在るオークは全部切っとけ!」
「「「はい!」」」
 料理人達はルノアーに言われ直ぐに切り出す。

「チハルさん・・・なにしてんだ?」
 野菜庫の隅っこでしゃがみこんで箱を漁っている千春に声をかける。

「あった、これこれ、結構置いてるね。」
「あーそれはジンジャーだ、辛みが強いが香りは悪くない、日持ちもするから結構置いてるぞ。」
「これを全部すり下ろしておいてくれる?」
「コレを全部か?」
 千春は手一杯に持った生姜をルノアーに渡す。

「さーて、後はっと。」
 野菜庫からキャベツと玉ねぎを取り出し箱を引きずる。

「おーもーいー!」
「チハル様!お手伝いします!」
 付いてきた料理人がキャベツと玉ねぎを運ぶ。

「チハル言ったら手伝うのに。」
「いや、すぐ目の前に在ったからついね。」
「やっぱりMP無いとアイテムボックスはきつい?」
「うん、だいぶ回復したけど明日学校だから無理して使わなくても良いかなと。」
「それが良いわね、私が代わりに使うから何か有ったら言ってね?」
「ありがとサフィー。」
 2人は野菜庫から出てルノアーに野菜の指示をする。

「玉ねぎは皮を剥いて芯を取って4~5㎜くらいにスライス、キャベツはお昼に切ったくらいに千切りで。」
「玉ねぎはどれくらい使うんだ?」
「2人前で半玉くらいの計算で、キャベツは付け合わせだから適当でいいよ。」
「わかった、それじゃ野菜を切ってくれ。」
 料理人へ指示を出し切れたオーク肉を持ってきた。

「これくらいでいいか?」
「仕事早いなぁ、この肉を平らな容器・・・あ、バットあった、これに広げていきまーす。」
 オークのロース肉を適当に並べていく。

「これにすり下ろした生姜と白ワインを軽く浸る程度に漬けて、あとは片栗粉を少しまぶしまーす。」
 横でルノアーはメモを取りながら見ている。

「それじゃ切った玉ねぎ少し貰うねー。」
「はい!どうぞ!」
「ありがとー、それじゃ焼いていくよ!」
 コンロにフライパンを置き、火を入れる。

「油を少々ひきまして~、肉を入れる。」
 じゅわぁぁぁといい音を立て肉が焼ける。

「ある程度火が通ったら玉ねぎ投下。」
 フライパンを軽くゆすりながら混ぜていく。

「ココでおっかけ生姜に砂糖と醤油を少々。」
 じゅぁぁぁぁぁ!

「いい香りね。」
「うん、醤油の焼ける匂いは食欲そそるよねー。」
「おいしそー。」
 ちらっとユラを見るとサフィーナにだっこされ調理を見ていた。

「これくらい水分が飛んだらおわり、キャベツは切れてる?」
「おう、水に一度浸けて水切りしといたぞ。」
「わかってるう!」
 器にキャベツを乗せ肉を横へ添えるように置く。

「オークの生姜焼き出来上がり~♪」
「「「ぱちぱちぱちぱち」」」
 なぜかサフィーナとユラ、ルノアーまで拍手していた。

「これ味見用だから食べていいよ。」
「そうなのか?」
「だってまだ早いじゃん、今からじゃんじゃん作るんでしょ?」
「勿論!こりゃまた沢山出そうだなぁ。」
 そういってルノアーは肉をナイフとフォークで一口サイズに切り口に入れる。

「こりゃうめえ!ジンジャーってこんな感じになるんだな、辛いばっかりだと思ってた。」
「生姜は色々使えるから一杯仕入れていいと思うよ、余ったらコレにすれば消費出来るでしょ。」
 千春はひと口サイズに切った生姜焼きをサフィーナとユラの口にも入れてあげる。

「・・・・美味しいわぁ。」
「(コクコクコク)」
 2人もニコニコしながら味見している、千春も自分の口に入れる。

「うまぁ、オーク肉やっぱり美味しいわ。」
 筋も綺麗にとってあり脂身も甘味が有り美味しいオーク肉に千春は喜んでいた。

「チハルさーんもどりまし・・・ああああああ!!!!」
「モリアンうるさいなぁ。」
 千春はうるさいモリアンに一口サイズにしてない丸々一枚のオーク肉を折り曲げ口に入れてやる。

「もごがっ・・・・もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ。」
「それじゃぁルノアーさんこんな感じの盛り付けで量産してもらっていい?」
「分った、王族の方はどうなったんだ?この味付けなら猪肉でも十分美味いだろう?」
「そうだねぇ。」
 そういって2人はモリアンを見る。

「もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ」
「早く飲み込みなよ。」
「・・・・・・もぐもぐ・・・・・大丈夫だそうです。」
「おっけー、それじゃルノアーさん王族にもオーク肉で準備してください。」
「わかった。」
「サフィーちょっとご飯出してくれる?」
「はい。」
 サフィーナはユラを下ろしテーブルに炊飯ジャーを置く、そして千春はパカっと蓋をあけ、ちょっと深めのお皿へご飯をよそう。

「これは米か?真っ白で綺麗だな、それにいい匂いだ。」
「うん、これが私の所で主食のお米、米を真っ白になるまで精米して糠を取ったやつだよ。」
 そういってフォークに少しご飯を乗せパクっと食べる。

「んぁぁ、やっぱり生姜焼きにはご飯だよねぇ。」
「一口食べても良いか?」
「うん、食べてみて。」
 ルノアーがフォークを何本か持ってくる、そして自分の口に入れ咀嚼する、千春はまた少しフォークで取りユラの口に入れてあげる、サフィーナとモリアンは自分達でフォークを使い試食していた。

「おいしい!ちはるおねえちゃんすっごくおいしい!」
「甘いですね、家畜の餌と言ったら怒るチハルの気持ちがわかりました、主食になりますね。」
「おいしいです!こんな美味しい食べ物を家畜の餌にしてたんですか!?」
 3人とも白飯は大丈夫なようだ。

「うん、この反応なら王族に食べさせても大丈夫っぽいね。」
「大丈夫どころじゃないぞ、これは美味い、作り方を教えてくれれば食堂で常備したいくらいだ。」
「ほんとに!?やったぁ!これで毎食ご飯食べれるかもしんないね!」
 千春は食費を浮かせる為に王国で夕食を食べていたが毎回パンだった、それだけが不満だった為白飯常備されるとなれば大喜びである。

「あ、でも精米技術がどうなんだろうか・・・食べれるなら全力で調べて作ってもらわないと・・・ブツブツ。」
「チハル?」
「あ、サフィー、大丈夫なんでもない、ただ全力でご飯推しの準備をしないといけないなと思ってただけ。」
「そう、協力するわよ、私もお米食べたいもの。」
 サフィーナもお米の美味しさを知ってくれたのが嬉しく千春もうんうんと笑顔で答える。

「今すぐに米を準備は出来ないから今日はパンで行くが米の方はこっちでも調べて手に入れておくよ、精米ってのも商業ギルドに聞いておこう。」
「うん、お願いするね。」

「よーし!お前らもうすぐ兵士達が来るぞ!オークジンジャー焼きの準備を進めろ!」
「「「「「「「「 はい!!! 」」」」」」」」
 一斉に料理人達がまた動き出す。

「それじゃぁ夕食まで、いつもの様にお母様の所で時間つぶしますかぁ。」
「ユラもいっていいの?」
「いいんじゃない?お母様喜ぶよ?ユラちゃんもメグ様の事お母様って言ってあげて?」
「おかあさま?」
「そ、喜ぶよー?」
「うん。」
「どうしたの?」
「おかあさんのことおもいだしたの。」
「そっか、私もおかぁさんいないんだ、メグ様が新しいお母さんなんだ。」
「ユラといっしょ?」
「そ、ユラちゃんと一緒、メグ様すっごく優しくて本当のお母さんみたいなんだよ。」
「・・・・」
「一緒にお母様の所に行く?」
「いく。」
「一緒にお母様って呼ぼうか。」
「うん!おかあさまってよぶ!」
 2人は少し目を潤ませながら手を繋ぐ。

「それでは行きましょうか。」
 サフィーナは千春とユラに声をかけ促す。

「うん、行こうか。」
 千春は繋いだ手をギュっと握りサフィーナの後ろを付いていく、ユラも手を握り返す。

「いってらっしゃーい。」
 モリアンは手を振り見送る。

「モリアンさんは?」
「ご飯食べたら来るよ。」
 そう言って3人は振り返り、人が入りだした食堂を見る、そして千春は一声上げる。

「生姜焼きマヨバーガー超うまいよ!!!!!」
 ざわつく食堂、目を見開く料理人達、モリアンが一瞬で食堂に走って行く姿が見えた。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幸子ばあさんの異世界ご飯

雨夜りょう
ファンタジー
「幸子さん、異世界に行ってはくれませんか」 伏見幸子、享年88歳。家族に見守られ天寿を全うしたはずだったのに、目の前の男は突然異世界に行けというではないか。 食文化を発展させてほしいと懇願され、幸子は異世界に行くことを決意する。

聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!

伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。 いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。 衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!! パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。  *表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*  ー(*)のマークはRシーンがあります。ー  少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。  ホットランキング 1位(2021.10.17)  ファンタジーランキング1位(2021.10.17)  小説ランキング 1位(2021.10.17)  ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。

転生王女は現代知識で無双する

紫苑
ファンタジー
普通に働き、生活していた28歳。 突然異世界に転生してしまった。 定番になった異世界転生のお話。 仲良し家族に愛されながら転生を隠しもせず前世で培ったアニメチート魔法や知識で色んな事に首を突っ込んでいく王女レイチェル。 見た目は子供、頭脳は大人。 現代日本ってあらゆる事が自由で、教育水準は高いし平和だったんだと実感しながら頑張って生きていくそんなお話です。 魔法、亜人、奴隷、農業、畜産業など色んな話が出てきます。 伏線回収は後の方になるので最初はわからない事が多いと思いますが、ぜひ最後まで読んでくださると嬉しいです。 読んでくれる皆さまに心から感謝です。

ぬいぐるみばかり作っていたら実家を追い出された件〜だけど作ったぬいぐるみが意志を持ったので何も不自由してません〜

望月かれん
ファンタジー
 中流貴族シーラ・カロンは、ある日勘当された。理由はぬいぐるみ作りしかしないから。 戸惑いながらも少量の荷物と作りかけのぬいぐるみ1つを持って家を出たシーラは1番近い町を目指すが、その日のうちに辿り着けず野宿をすることに。 暇だったので、ぬいぐるみを完成させようと意気込み、ついに夜更けに完成させる。  疲れから眠りこけていると聞き慣れない低い声。 なんと、ぬいぐるみが喋っていた。 しかもぬいぐるみには帰りたい場所があるようで……。     天真爛漫娘✕ワケアリぬいぐるみのドタバタ冒険ファンタジー。  ※この作品は小説家になろう・ノベルアップ+にも掲載しています。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

幼馴染み達が寝取られたが,別にどうでもいい。

みっちゃん
ファンタジー
私達は勇者様と結婚するわ! そう言われたのが1年後に再会した幼馴染みと義姉と義妹だった。 「.....そうか,じゃあ婚約破棄は俺から両親達にいってくるよ。」 そう言って俺は彼女達と別れた。 しかし彼女達は知らない自分達が魅了にかかっていることを、主人公がそれに気づいていることも,そして,最初っから主人公は自分達をあまり好いていないことも。

大聖女の姉と大聖者の兄の元に生まれた良くも悪くも普通の姫君、二人の絞りカスだと影で嘲笑されていたが実は一番神に祝福された存在だと発覚する。

下菊みこと
ファンタジー
絞りカスと言われて傷付き続けた姫君、それでも姉と兄が好きらしい。 ティモールとマルタは父王に詰め寄られる。結界と祝福が弱まっていると。しかしそれは当然だった。本当に神から愛されているのは、大聖女のマルタでも大聖者のティモールでもなく、平凡な妹リリィなのだから。 小説家になろう様でも投稿しています。

魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん
ファンタジー
 誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。  運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……  与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。  だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。  これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。  冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。  よろしくお願いします。  この作品は小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...