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使い道がない!
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「ごちそうさまでした。」
ユラは千春に口を拭かれながら食後の挨拶を言う。
「さて、人も増えてきたし戻ろうか~。」
「そうですね、座る所も減ってきましたから。」
4人は席を立つ、流石は王宮中央の食堂、どんどん人が入ってきている。
しかも最近は料理が格段に美味しくなり日々新しいメニューが増えている為、いままで他の食堂を使っていた人まで王宮の食堂を使うようになった、原因は概ね千春のせいなのだが、当の本人は気付いていなかった。
「おー?戻るのか?」
ルノアーが4人に声を掛ける。
「うん、食べ終わったのに座ってたら悪いしね。」
「それは気にしなくていいぞ、チハルさん達はいつもそこに座るだろ?」
「うん。」
そういってさっきまで座っていた場所を見るが誰も座っていない。
「ん?なんで誰も座らないの?」
「あそこチハルさん達の特等席らしいぞ、誰も座らないんだよ。」
「誰が決めたのよ。」
「知らん、誰も座らないから兵士に聞いたらそう言ってた、チハルさんがいつ来ても座れるようにだってよ。」
「いつ来るか分かんないし、王族ともご飯食べる事あるし、空いてる所に座るから別にいいのに。」
ルノアーと千春が話していると周りから声があがる。
「美味いもん作ってくれるからいいんだよ!」
「いつも座る席の方が安心するだろ。」
「チハル様が何食べてるか、そこ見れば分かるからな!」
「俺たちの席は幾らでもあるからな!」
次々と兵士や文官の人間までもが声を上げる。
「あははは、ありがと、遠慮なく使わせてもらうね!」
千春はお礼を言い食堂を出ていく。
「どおりでいつもあの席が空いてたわけですね、厨房から近い特等席ですのに。」
「いつもあそこ空いてましたから座ってましたもんねー。」
サフィーナもモリアンまでも呆れていた。
「それで、チハルはまた戻ってお勉強ですか?」
「んー・・・・飽きた。」
「なにモリアン見たいな事言ってるんですか?明日から試験ですよね?」
「そうだけど平均取れれば良いし集中力切れたもん。」
「ではどうされますか?」
「遊びに行きたいけど昨日の今日で街はなーって思うし、どうしよかな、こっちって何か娯楽ってあるの?」
「娯楽ですか、演劇を見たり本を読むくらいしか私は分かりませんね。」
「モリーはいつも何して遊んでるの?」
「私ですかー?んー?」
モリアンは顎に人差し指を付け「ん-ーー」と考える。
「街にお出かけして食べ歩きとか、お茶したり、お友達の所でお茶会ですかねぇ。」
「食べてばっかりだなモリーは、ユラちゃんは何してあそんでた?」
「えっとー、木の実あつめたり、狩りしてたー。」
「それは・・・遊びなのかな、トランプとかカードゲーム的な物は無いの?」
「聞いた事は無いですね。」
「そっかー。」
4人は門の部屋の前まで行くと侍女が1人立っていた。
「お帰りなさいませチハル様。」
「あれ?お母様の付き人の?」
「はい、アルベルと申します。」
そう言うとペコリと頭を下げる。
「どうしました?」
「王妃殿下からの言伝を。」
「はい、なんでしょう?」
「お時間が有れば来て頂きたいと。」
「いいですよ。」
「有難う御座います、今から宜しいですか?」
「ええ、やる事無くて何しようかと話してた所なので。」
「それでは案内させて頂きます。」
アルベルはそう言ってまた頭を下げる。
「サフィー達は部屋で待ってる?」
「そうですね、私はチハルに付いていきますのでモリアンはユラとお留守番しててください。」
「「はーい。」」
揃って返事をする2人を見て千春とサフィーナはクスっと笑う。
「お母様の部屋ですか?」
「いえ、別の応接室になります。」
「なんだろ?まぁ行けば分かるか。」
千春とサフィーナはアルベルの後ろに付いていく。
「こちらで御座います。」
アルベルは普段通らない豪華な廊下を歩きとある扉の前に着いた、そして扉の前に居る執事に声を掛けると執事が千春達を見て頭を下げ扉を開ける。
「チハル様が来られました。」
「入ってもらって。」
中からマルグリット王妃の声がする。
「参りましたお母様、何か御用ですか?」
部屋に入ると大きなテーブルがありマルグリットの前に2人の男性が座っていた。
1人は恰幅の良い男性、もう一人も小柄ではあるが身なりの良い服を着た男性だ。
「ごめんなさいね、お勉強の途中だったのでしょう?」
「いえ、丁度気分転換をしようかと遊びの相談をしていた所だったので。」
「あら、それはそれで申し訳無いわね、ちょっとチハルに相談があったのよ。」
マルグリットはそう言うと自分の横に座るように手招きする。
「失礼します。」
ペコリと頭を下げマルグリットの横にチョコンと座る。
「紹介するわね、私の娘、チハル・アル・ジブラロール第一王女よ。」
初めて王国のフルネームを言われ一瞬マルグリットを見たが、ニッコリと微笑み返された。
すると恰幅の良い男性が自己紹介を始める。
「商業ギルドのギルド長をやっておりますメイソンと申します、以後お見知りおきを。」
メイソンはそう言って頭を下げる。
「私はマルグリット王妃が経営しております商会長のローガンと申します。」
ローガンはチハルを見てニッコリと微笑み頭を下げる。
「よ・・ろしくおねがいします?」
「あら?緊張しているのかしら?」
フフッと微笑みながら千春を見るマルグリット。
「それでお母様、相談とは?」
「どれから話すれば良いかしらねぇ。」
そう言ってテーブルの上にある紙を1枚取る。
「まず、チハルが王宮で作った料理を幾つか商業ギルドに登録して市井に出したいと思っているのよ、その筆頭が『パン』ね。」
「登録?」
「えぇ、作り方を商業ギルドが市井へ売るのよ。」
「タダで教えても良いですよ?」
男2人もそうだが、マルグリットもチハルの言葉に驚く。
「あれですよね、特許とかそう言う事ですよね?必要ないです、今の王国のパンは食べにくいですから、作り方は無料で出して構いません、そうする事で小麦の需要も消費量も増えます、お父様にお教えしている件が上手くいけば供給も問題無いでしょうから。」
千春は淡々と語る。
「そ、そうは言いましても、あのパンを試食させて頂きましたが今までのパンとは全く別物、商品価値としても相当在ります、無料で製造方法を教えてしまうと何処でも作られ、商品としての価値が下がってしまいますが!」
商業ギルドの長は汗をかきながら力説する。
「はい、私としては今あるパンと同価格、もしくは付加価値を付けた商品で価格を上げるくらいで市井に出回る事を期待してます、色んな人が色々な商品を作る、それを食べ歩きする、最高じゃないですか、何か問題がありますか?」
「い、いえ。」
「チハル、レシピの販売であなたに利益額が入るわよ?」
「はい、多分数%のライセンス収入の利益だけで相当な額が入るでしょうね。」
「分っているのに見逃すのかしら?」
「はい、使わないですから。」
千春とマルグリットの会話を聞いてポカンと口を開けたまま凝視するメイソンとローガン。
「あはははは!」
大笑いするマルグリットに千春はギョッとする。
「久しぶりに大笑いしちゃったわぁ、メイソンそう言う事らしいわ、全て理解している上での言葉です、しっかり進めて頂戴。」
「は、はい!王妃殿下、王女殿下有難う御座います、しかし銭貨1枚すら渡さないと言うのもギルドとしては問題が有りまして。」
メイソンはギルド長として一言だけでも言わなければと口を挟む。
「チハル使わないからって王国全体どころかギルドの管轄、他国にまで影響あるのよ?それこそ領地を買えるくらいの金額よ?」
「領地とか要らないですもん・・・あ!それじゃ一定の金額まで貰ったら後はフリーってどうです?」
「あら?何か欲しい物思い出したの?」
「はい、孤児院を作って維持出来る程度のお金が最初からあれば楽かなと。」
「何言ってるの?それは国の仕事でしょうに、今回の件でしょう?もう動いてるからチハルは気にしないで良いのよ。」
「それじゃあそこの孤児院みたいに出資という形でどうです?」
コレは!?と千春は答えてみる。
「そうねぇ、領地が買えるくらいの金額を出資したらどうなるのかしらねぇメイソン。」
「考えたく無いですね、了解しました、孤児院を数件新しく建て管理者、初期投資分を見積もります、その後の管理費に関しても問題は有りません、足りなくなる事は先ず無いでしょうから。」
「そうね、レシピの販売と商品販売利益は最低限の設定で行きましょうか、それでも金額が大きいわねぇ、まぁ有って損は無いでしょう、メイソン、チハルの口座を商業ギルドに作って余った金額はそこに入れておきなさい、書類は用意しておくわ。」
千春を置いてきぼりでどんどん話は進んでいく。
「次はどれかしら?」
マルグリットはテーブルの紙をまた1枚取る。
「これは陳情の分ね、チハルの作った料理を市井で作ってもいいか、ね。」
「料理ですか?」
「そう、食堂で色々作っているでしょう?数人の料理人から王国の厨房以外でも作って良いかって事よ。」
「いいですよ、別に秘匿するような物じゃないですから。」
「・・・・パンでアレですものね、コレもお金になるのよ?」
「はい、いらないです。」
「分ったわ、王宮の料理人にはそう伝えておくわ、多分市井でやっている身内の料理人に教える程度でしょうけど、儲かるでしょうねぇ。」
マルグリットは呆れたように呟く。
「あーとは、これは私の分ね、シャンプーとコンディショナーが出来たわ、コレを私の商会で販売するわね、それでその売上の何%をチハルに渡すかなんだけど。」
マルグリットは千春を見る、ニコニコしながら一言。
「いらないですよ?お母様。」
「はぁ・・・・欲のない子ねぇ。」
「だって金貨使い道ないんですもん。」
心の中では何故日本で換金出来ないんだぁ!と叫んでいたが笑顔で答えた。
「ローガン、本来チハルに行く25%の利益額はそのまま別会計で回して、私がチハルに使います。」
「はい、了解致しました。」
「え?私に使うってなんですか?」
「そのままよ、本当なら国で出せるお金なの、私も使えるんだけど国民の税金じゃない?最低限しか使いたくないから商会のお金で私は色々使ってるのよ、チハルもそう言う風にするだけ。」
「あー、把握しました。」
そしてメイソン、ローガン、マルグリットは商談を続けるからと千春にお礼を言い、千春は退室した。
「はー疲れた、早く戻ってユラ成分補給してゆっくりしよう。」
「何ですか?ユラ成分って。」
「そのまま、ユラちゃんから発するマッタリ成分を補給するの。」
「分からないと思いましたが何となく分かってしまいました。」
「でしょ、良いよね心が休まるというかなんというか。」
「でもチハルってすごいお金持ちなんですね。」
「そうなりそうだね、領地買えるってさ。」
「まぁ金額的にと言うだけで買えませんけどね。」
「そりゃそうだ、国王陛下から預かってるんだから売れないよね。」
「そう言う事ですね。」
2人はクスクス笑いながら部屋に向かう。
「・・・・あ!」
「どうしました?」
「お金の使い道と言うか1個思いついた。」
「何か欲しい物が?」
「お風呂欲しい。」
「浴槽ならいつでも出せますよ?」
「出せるって?」
「アイテムボックスに入れてますから。」
「めっちゃ使いこなしてるね。」
「便利どころじゃないですねこの魔法。」
本当に便利なんですよとサフィーナは頷く
「で、浴槽じゃなくお風呂を作りたい!部屋に!」
「分かりました、セバスさんに言っておきます。」
「いや、私の稼いだお金でね?」
「いえ、チハルのお金は必要ないですね、言えば作ります。」
「えー・・・お金の使い道を考えてたのに。」
「別の事で使えば良いじゃ無いですか。」
「それを考えてお風呂っていったのー!」
大概の事は王女としての特権で普通に手に入ると言う事をサフィーナは言う、サフィーナのアイテムボックスには千春には言ってない追加の金貨が宰相からさらに渡されており、教えている金貨100枚ですら手付かずで入っており、その金貨だけでも浴室が幾らでも作れたりするのだ。
「使い道ないじゃーん!」
「そのうち有るんじゃない?」
ほっぺを膨らませながら歩く千春を微笑みながらサフィーナは答えた。
ユラは千春に口を拭かれながら食後の挨拶を言う。
「さて、人も増えてきたし戻ろうか~。」
「そうですね、座る所も減ってきましたから。」
4人は席を立つ、流石は王宮中央の食堂、どんどん人が入ってきている。
しかも最近は料理が格段に美味しくなり日々新しいメニューが増えている為、いままで他の食堂を使っていた人まで王宮の食堂を使うようになった、原因は概ね千春のせいなのだが、当の本人は気付いていなかった。
「おー?戻るのか?」
ルノアーが4人に声を掛ける。
「うん、食べ終わったのに座ってたら悪いしね。」
「それは気にしなくていいぞ、チハルさん達はいつもそこに座るだろ?」
「うん。」
そういってさっきまで座っていた場所を見るが誰も座っていない。
「ん?なんで誰も座らないの?」
「あそこチハルさん達の特等席らしいぞ、誰も座らないんだよ。」
「誰が決めたのよ。」
「知らん、誰も座らないから兵士に聞いたらそう言ってた、チハルさんがいつ来ても座れるようにだってよ。」
「いつ来るか分かんないし、王族ともご飯食べる事あるし、空いてる所に座るから別にいいのに。」
ルノアーと千春が話していると周りから声があがる。
「美味いもん作ってくれるからいいんだよ!」
「いつも座る席の方が安心するだろ。」
「チハル様が何食べてるか、そこ見れば分かるからな!」
「俺たちの席は幾らでもあるからな!」
次々と兵士や文官の人間までもが声を上げる。
「あははは、ありがと、遠慮なく使わせてもらうね!」
千春はお礼を言い食堂を出ていく。
「どおりでいつもあの席が空いてたわけですね、厨房から近い特等席ですのに。」
「いつもあそこ空いてましたから座ってましたもんねー。」
サフィーナもモリアンまでも呆れていた。
「それで、チハルはまた戻ってお勉強ですか?」
「んー・・・・飽きた。」
「なにモリアン見たいな事言ってるんですか?明日から試験ですよね?」
「そうだけど平均取れれば良いし集中力切れたもん。」
「ではどうされますか?」
「遊びに行きたいけど昨日の今日で街はなーって思うし、どうしよかな、こっちって何か娯楽ってあるの?」
「娯楽ですか、演劇を見たり本を読むくらいしか私は分かりませんね。」
「モリーはいつも何して遊んでるの?」
「私ですかー?んー?」
モリアンは顎に人差し指を付け「ん-ーー」と考える。
「街にお出かけして食べ歩きとか、お茶したり、お友達の所でお茶会ですかねぇ。」
「食べてばっかりだなモリーは、ユラちゃんは何してあそんでた?」
「えっとー、木の実あつめたり、狩りしてたー。」
「それは・・・遊びなのかな、トランプとかカードゲーム的な物は無いの?」
「聞いた事は無いですね。」
「そっかー。」
4人は門の部屋の前まで行くと侍女が1人立っていた。
「お帰りなさいませチハル様。」
「あれ?お母様の付き人の?」
「はい、アルベルと申します。」
そう言うとペコリと頭を下げる。
「どうしました?」
「王妃殿下からの言伝を。」
「はい、なんでしょう?」
「お時間が有れば来て頂きたいと。」
「いいですよ。」
「有難う御座います、今から宜しいですか?」
「ええ、やる事無くて何しようかと話してた所なので。」
「それでは案内させて頂きます。」
アルベルはそう言ってまた頭を下げる。
「サフィー達は部屋で待ってる?」
「そうですね、私はチハルに付いていきますのでモリアンはユラとお留守番しててください。」
「「はーい。」」
揃って返事をする2人を見て千春とサフィーナはクスっと笑う。
「お母様の部屋ですか?」
「いえ、別の応接室になります。」
「なんだろ?まぁ行けば分かるか。」
千春とサフィーナはアルベルの後ろに付いていく。
「こちらで御座います。」
アルベルは普段通らない豪華な廊下を歩きとある扉の前に着いた、そして扉の前に居る執事に声を掛けると執事が千春達を見て頭を下げ扉を開ける。
「チハル様が来られました。」
「入ってもらって。」
中からマルグリット王妃の声がする。
「参りましたお母様、何か御用ですか?」
部屋に入ると大きなテーブルがありマルグリットの前に2人の男性が座っていた。
1人は恰幅の良い男性、もう一人も小柄ではあるが身なりの良い服を着た男性だ。
「ごめんなさいね、お勉強の途中だったのでしょう?」
「いえ、丁度気分転換をしようかと遊びの相談をしていた所だったので。」
「あら、それはそれで申し訳無いわね、ちょっとチハルに相談があったのよ。」
マルグリットはそう言うと自分の横に座るように手招きする。
「失礼します。」
ペコリと頭を下げマルグリットの横にチョコンと座る。
「紹介するわね、私の娘、チハル・アル・ジブラロール第一王女よ。」
初めて王国のフルネームを言われ一瞬マルグリットを見たが、ニッコリと微笑み返された。
すると恰幅の良い男性が自己紹介を始める。
「商業ギルドのギルド長をやっておりますメイソンと申します、以後お見知りおきを。」
メイソンはそう言って頭を下げる。
「私はマルグリット王妃が経営しております商会長のローガンと申します。」
ローガンはチハルを見てニッコリと微笑み頭を下げる。
「よ・・ろしくおねがいします?」
「あら?緊張しているのかしら?」
フフッと微笑みながら千春を見るマルグリット。
「それでお母様、相談とは?」
「どれから話すれば良いかしらねぇ。」
そう言ってテーブルの上にある紙を1枚取る。
「まず、チハルが王宮で作った料理を幾つか商業ギルドに登録して市井に出したいと思っているのよ、その筆頭が『パン』ね。」
「登録?」
「えぇ、作り方を商業ギルドが市井へ売るのよ。」
「タダで教えても良いですよ?」
男2人もそうだが、マルグリットもチハルの言葉に驚く。
「あれですよね、特許とかそう言う事ですよね?必要ないです、今の王国のパンは食べにくいですから、作り方は無料で出して構いません、そうする事で小麦の需要も消費量も増えます、お父様にお教えしている件が上手くいけば供給も問題無いでしょうから。」
千春は淡々と語る。
「そ、そうは言いましても、あのパンを試食させて頂きましたが今までのパンとは全く別物、商品価値としても相当在ります、無料で製造方法を教えてしまうと何処でも作られ、商品としての価値が下がってしまいますが!」
商業ギルドの長は汗をかきながら力説する。
「はい、私としては今あるパンと同価格、もしくは付加価値を付けた商品で価格を上げるくらいで市井に出回る事を期待してます、色んな人が色々な商品を作る、それを食べ歩きする、最高じゃないですか、何か問題がありますか?」
「い、いえ。」
「チハル、レシピの販売であなたに利益額が入るわよ?」
「はい、多分数%のライセンス収入の利益だけで相当な額が入るでしょうね。」
「分っているのに見逃すのかしら?」
「はい、使わないですから。」
千春とマルグリットの会話を聞いてポカンと口を開けたまま凝視するメイソンとローガン。
「あはははは!」
大笑いするマルグリットに千春はギョッとする。
「久しぶりに大笑いしちゃったわぁ、メイソンそう言う事らしいわ、全て理解している上での言葉です、しっかり進めて頂戴。」
「は、はい!王妃殿下、王女殿下有難う御座います、しかし銭貨1枚すら渡さないと言うのもギルドとしては問題が有りまして。」
メイソンはギルド長として一言だけでも言わなければと口を挟む。
「チハル使わないからって王国全体どころかギルドの管轄、他国にまで影響あるのよ?それこそ領地を買えるくらいの金額よ?」
「領地とか要らないですもん・・・あ!それじゃ一定の金額まで貰ったら後はフリーってどうです?」
「あら?何か欲しい物思い出したの?」
「はい、孤児院を作って維持出来る程度のお金が最初からあれば楽かなと。」
「何言ってるの?それは国の仕事でしょうに、今回の件でしょう?もう動いてるからチハルは気にしないで良いのよ。」
「それじゃあそこの孤児院みたいに出資という形でどうです?」
コレは!?と千春は答えてみる。
「そうねぇ、領地が買えるくらいの金額を出資したらどうなるのかしらねぇメイソン。」
「考えたく無いですね、了解しました、孤児院を数件新しく建て管理者、初期投資分を見積もります、その後の管理費に関しても問題は有りません、足りなくなる事は先ず無いでしょうから。」
「そうね、レシピの販売と商品販売利益は最低限の設定で行きましょうか、それでも金額が大きいわねぇ、まぁ有って損は無いでしょう、メイソン、チハルの口座を商業ギルドに作って余った金額はそこに入れておきなさい、書類は用意しておくわ。」
千春を置いてきぼりでどんどん話は進んでいく。
「次はどれかしら?」
マルグリットはテーブルの紙をまた1枚取る。
「これは陳情の分ね、チハルの作った料理を市井で作ってもいいか、ね。」
「料理ですか?」
「そう、食堂で色々作っているでしょう?数人の料理人から王国の厨房以外でも作って良いかって事よ。」
「いいですよ、別に秘匿するような物じゃないですから。」
「・・・・パンでアレですものね、コレもお金になるのよ?」
「はい、いらないです。」
「分ったわ、王宮の料理人にはそう伝えておくわ、多分市井でやっている身内の料理人に教える程度でしょうけど、儲かるでしょうねぇ。」
マルグリットは呆れたように呟く。
「あーとは、これは私の分ね、シャンプーとコンディショナーが出来たわ、コレを私の商会で販売するわね、それでその売上の何%をチハルに渡すかなんだけど。」
マルグリットは千春を見る、ニコニコしながら一言。
「いらないですよ?お母様。」
「はぁ・・・・欲のない子ねぇ。」
「だって金貨使い道ないんですもん。」
心の中では何故日本で換金出来ないんだぁ!と叫んでいたが笑顔で答えた。
「ローガン、本来チハルに行く25%の利益額はそのまま別会計で回して、私がチハルに使います。」
「はい、了解致しました。」
「え?私に使うってなんですか?」
「そのままよ、本当なら国で出せるお金なの、私も使えるんだけど国民の税金じゃない?最低限しか使いたくないから商会のお金で私は色々使ってるのよ、チハルもそう言う風にするだけ。」
「あー、把握しました。」
そしてメイソン、ローガン、マルグリットは商談を続けるからと千春にお礼を言い、千春は退室した。
「はー疲れた、早く戻ってユラ成分補給してゆっくりしよう。」
「何ですか?ユラ成分って。」
「そのまま、ユラちゃんから発するマッタリ成分を補給するの。」
「分からないと思いましたが何となく分かってしまいました。」
「でしょ、良いよね心が休まるというかなんというか。」
「でもチハルってすごいお金持ちなんですね。」
「そうなりそうだね、領地買えるってさ。」
「まぁ金額的にと言うだけで買えませんけどね。」
「そりゃそうだ、国王陛下から預かってるんだから売れないよね。」
「そう言う事ですね。」
2人はクスクス笑いながら部屋に向かう。
「・・・・あ!」
「どうしました?」
「お金の使い道と言うか1個思いついた。」
「何か欲しい物が?」
「お風呂欲しい。」
「浴槽ならいつでも出せますよ?」
「出せるって?」
「アイテムボックスに入れてますから。」
「めっちゃ使いこなしてるね。」
「便利どころじゃないですねこの魔法。」
本当に便利なんですよとサフィーナは頷く
「で、浴槽じゃなくお風呂を作りたい!部屋に!」
「分かりました、セバスさんに言っておきます。」
「いや、私の稼いだお金でね?」
「いえ、チハルのお金は必要ないですね、言えば作ります。」
「えー・・・お金の使い道を考えてたのに。」
「別の事で使えば良いじゃ無いですか。」
「それを考えてお風呂っていったのー!」
大概の事は王女としての特権で普通に手に入ると言う事をサフィーナは言う、サフィーナのアイテムボックスには千春には言ってない追加の金貨が宰相からさらに渡されており、教えている金貨100枚ですら手付かずで入っており、その金貨だけでも浴室が幾らでも作れたりするのだ。
「使い道ないじゃーん!」
「そのうち有るんじゃない?」
ほっぺを膨らませながら歩く千春を微笑みながらサフィーナは答えた。
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