上 下
18 / 748

マヨネーズ!

しおりを挟む
「チハルさん次は何を作るんですー?」
「調味料って言ってたわよね、料理じゃ無いのかしら?」
 モリアンとサフィーナは作る物が料理じゃ無い事に疑問を持っていた。

「そ、万能調味料!その名もマヨネーズ!!」
 右腕を掲げ指を天にかざす、別に意味は無い。

「で、そのまよねーずの材料はー?」
「今から探す。」
「「えぇ~~~~~。」」
 モリアンが調味料の材料が気になったが千春はこちらの世界に材料があるかまだ確認していなかった。

「えーっと玉子は有るのは知ってる、塩もあった、あとは酢と油かな~ココの油って何油なの?」
「種から取った油だったと思いますけど?」
「何の種?」
「さぁ?」
「サフィー・・・。」
「そんな分かる訳無いじゃないですか、私厨房担当じゃないんですから。」
「ルノアーさーん!」
 サフィーナでは話にならないのでルノアーを呼ぶ千春。

「どうした?何かいるのか?」
「この厨房にある油って何油なの?」
「色々あるが、どういうのが使いたいんだ?」
「植物性の油で匂いが余り無いのが良いかな。」
「そうだな、それじゃ豆油だな。」
「んじゃそれをコップ一杯もらえますか?あと、酢も欲しいんですが。」
 そう言って油を受け取る。

「あーワインビネガーか?有るぞ、どれくらい欲しいんだ?」
「大さじ一杯くらいで大丈夫です。」
「そんだけでいいのか、ほらコレだ。」
 千春はボウルにそれを入れてもらう。

「確かワインビネガーでもレシピ有ったから大丈夫だよね・・よーし、あとは新鮮な玉子下さい、生で使うんで。」
「は?生だと腹壊すぞ?」
「いつ産んだ玉子なんですか?ソレ」
 調理場に置いてある玉子を2個受け取る。

「今日養鶏場から受け取った奴だから今日の朝か昨日の分だな。」
「んじゃ大丈夫でしょ・・・・『鑑定』・・・・うん、大丈夫!生でイケる。」
 そう言いながら塩の瓶も受け取り作業場に向かう。

「チハルさん私は何をしたらいいです~?」
「モリアンはその泡立て器を持って待機!」
「はーい。」
「私は?」
「サフィーはそのボウルを動かない様に押さえててね。」
 そう言いながら玉子の黄身だけを二つボウルに入れる、そしてワインビネガーと塩を少し入れる

「はい!モリアンそれを混ぜてー。」
「はーい、どれくらい混ぜるの?」
「・・・やめろと言うまで。」
「白身はどうするの?」
 サフィーナが残った白身はどうするのか気になるようだ。

「ん、いらないからルノアーさんにあとであげる。」
 そういう会話をしながらある程度混ざったら少しずつ油を入れる千春、延々と混ぜ続けるモリアン、ボウルを押さえているだけのサフィーナ、油を全部入れ終わる頃にはモリアンの泣きが入る。

「・・・サフィーナ・・・かわって・・・・おねがい・・・・」
「「がんばれ!」」
「ひーん・・・。」
(・・・・・ブレンダー使ったら秒で出来るのは黙っとこう)
 そして無事マヨネーズが出来上がった。

「・・・腕がぁぁ。」
「さて、これがマヨです、頑張ったモリアンには最初に試食をさせてあげましょう!」
 そう言って野菜庫にあったキュウリ?ズッキーニ?みたいな野菜、ピーマン、トマトと何個か切り分けていた小皿を前に出す。

「えー生で野菜食べるの?」
「モリアン君、マヨネーズには生野菜なのですよ。」
「何で君なんです?私生の野菜苦手なんですけどぉ・・・。」
「そうなの?聞いてないよ。」
「言ってないもの!」
「まぁ取りあえずコレ行ってみよう!」
 そう言って一口サイズのトマトにマヨネーズを掛けて「あーん」と口に持って行く。

「よりによってトマトー!」
 モリアンはトマトが嫌いらしい。

「ほら、騙されたと思って食べてみ?ほれ。」
「だーまーさーれーるー!」
 そして口に放り込まれる。

「!?」
「どう?」
 コクコクと縦に首を振るモリアン。

「へー、トマト嫌いなモリアンが美味しそうに食べるなんて、私ももらっていい?」
「どうぞー、私はこのキュウリっぽいの行ってみよ。」
 そういって2人も野菜にマヨネーズを付けて食べる。

「うんまぁ!やっぱマヨは最高!」
「美味しいわね、モリアンもこれなら・・・。」
 モリアンを見る2人、自分からトマトにマヨネーズを付けて食べていた。

「んーマヨおいふぃー!」
「口に食べ物入れて喋らないの、あなた子爵令嬢でしょう。」
 王宮で働く侍女は基本的に貴族令嬢だ、なので礼儀作法も小さな頃から躾けられている、だからこその侍女なのであった、サフィーナが叱るのもごもっともである。

「チハル、これって最初に食べさせてくれた『さんどいっち』に入ってた物よね。」
「おおー!よく覚えてたねー、その通りです。」
「それじゃまた作るの?」
「ぴんぽーん!」
「何よぴんぽーんって。」
「あたりーって事、んじゃ茹で卵作って本格玉子サンドにしよう、この前のはナンチャッテ玉子サンドだったから。」
「あれ美味しかったけど偽物だったの?」
「いや、玉子サンドだけどさ、本当は茹で卵使うのよ、あとパンとかも貰ってこよう。」
 そう言って鍋に水を張り玉子を入れる。

「ルノアーさーんパンの予備いくらか貰えますか?」
 スープを作っている3人を見ているルノアーさんに聞いてみる。

「あぁ大丈夫だ、所でそれは?」
「パンの中に挟む材料と調味料ですよ。」
「野菜に付けて食べてたようだが、パンにも付けるのか?」
「いや、コレは玉子とマヨを混ぜてパンに挟むんです、多めに作りますから食べてみますか?」
「もちろん頂くよ、王族の昼食には出さないのか?」
「出すつもりですよ。」
「それじゃ陛下のパンはまだ出来て無いから、出来てからでいいか?朝の分は5個くらいしか残ってないんだ。」
「うん、それでお願いします。」
 そう言ってルノアーは王族用のキッチンに取りに行った。

「コレだ、使えるか?」
 そう言いながら持ってきたパンは丸ではなかった。

「形変えたんだ。」
「あぁ、色々試してるんだ。」
「でもこっちの方が使いやすいかも。」
 そう言って出てきたパンは小さめの長いコッペパンのような形だった。

「茹で卵出来るまでマヨの試食してみて。」
「いいのか?あまり量が無いようだが。」
「無くなったらまた作ればいいんだよ。」
 そう言いながら千春はモリアンを見る。

「嫌ですよ!もう泡立て器は持たないですから!」
 サフィーナの後ろにモリアンが隠れる、サフィーナは苦笑いでそれを見ている。

「大丈夫だって、パン焼けるまでに作れば良いんだし人員ならソコに沢山。」
 千春は厨房に居る男共を見る。

「おう!あれくらいなら任しとけ!」
「俺にも食わせてくれよな!」
「俺も手伝うぜ!」
 どうもモリアンがひーひー言いながら混ぜていたのを見てたらしい、あれ位なら問題ないと言ってくれた。

「・・・・んじゃ手伝ってくれたらよかったのに。」
 モリアンは文句たらたらである。

「ハハハ、んじゃ玉子も足んなくなりそうだし茹で卵も増やすかー。」
 そして手の空いた厨房メンバーに手伝ってもらい、さらに倍以上のマヨネーズと茹で卵が出来上がった。

「はい、では茹で卵を細かく砕いてマヨネーズと混ぜ合わせます、好みでマスタードとか入れるといいかもね、あとは塩コショウをぱっぱっぱー。」
「チハルさん、塩と胡椒を置いていったままだが大丈夫なのか?高級品だぞ?」
「大丈夫ですよ、まだあるんでコレはココに置いといてもらえると料理しやすいんで、無くなったら補充するから使っても大丈夫ですよ?」
「いや、王宮で使う分はちゃんと有るから大丈夫だが・・・。」
 王宮の厨房だから胡椒は有るが、基本的にはこの食堂では無く王族用の方でしか使わない、そしてパンに出来上がった玉子マヨをパンに挟んで出来上がり。

「んじゃこのパンは少ないので私たち3人が責任もって食べます、残ったパンは味見用なのでルノアーさんが好きなようにして下さい。」
「チハル?」
「なに?」
「チハルは王族と昼食食べるのよね?」
「うん、そうだよ?」
「んじゃぁ今食べなくても食べれるわよね、今食べたらお昼食べれなくなるわよ?」
「・・・え?」
「王族も玉子サンド食べるのよね?」
「・・・・・うん。」
「はーい!チハルさんの分は私が食べまーす!」
 サフィーナが千春に問いかけ、モリアンが千春の分まで食べようと声を上げる。

「ちょっとまって!それは違う!それはそれ!これはこれ!モリアン私の分まで取らないで!」
「まぁまぁ、作り方は解ったから侍女の分も昼食で作ってやるよ。」
 助け舟をルノアーが出してくれた。

「ありがとう!ルノアーさん!」
「その代わりと言っては何だが、チハルさんイーストキンはもうちょっと都合付かないかな?多めに貰っているが噂を聞いた侍女やメイド、兵士達も食事に出ないのかって聞いてくるんだ。」
「あー、そういやあの量だと5~6回くらい作ったら無くなりそうだね、明日買って夕方になるけど持ってくるよ、今あるやつは明日の夕食分で使い切っていいよ。」
「助かる!それじゃ試作も兼ねて皆にも出すようにする。」
「了解、その代わりしばらくこっちでご飯食べさせてもらうからね、アレ結構いい値段するんだから。」
「それは大丈夫だ、沢山作ってるから一人分くらい増えても問題は無い、しかしチハルさんは王族と食べるんじゃないのか?」
「そんな毎日王族と夕食とか食べる訳ないじゃん、お昼は王妃様に言われてるから一緒に食べるけどね。」
 なんやかんやと試食も終わり、玉子サンドを食べた3人はルノアーに他を任せ部屋に戻った。

「はー、作り方教えて試食するだけのつもりが大事になったなぁ、疲れたよ。」
「でもチハルが作った玉子サンドは美味しかったわ。」
「私はマヨがいつでも食堂で食べれるように、ルノアーさんにお願いしておきます!」
 モリアンはマヨネーズが相当気に入ったようで、最初に作った分は野菜を付けてほぼ食べ切った。

「モリアンはマヨラーの気質があるね、でもアレ作り方見たでしょ?ほぼ油だからね、太るよ。」
「え!?」
「ふ・と・る・よ。」
 モリアンは『がーん!』と言う顔をして千春を見る。

「まぁ食べ過ぎなきゃ大丈夫だよ、侍女って凄く動いてるから大丈夫じゃない?」
「そうですね、モリアンは少々食べても太らないでしょう、でも食べ過ぎには気を付けなさいね?」
「はーい。」

 千春とサフィーナの忠告も、あまり効いてないようだなと2人は思いながら目が合い笑い合うのであった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幸子ばあさんの異世界ご飯

雨夜りょう
ファンタジー
「幸子さん、異世界に行ってはくれませんか」 伏見幸子、享年88歳。家族に見守られ天寿を全うしたはずだったのに、目の前の男は突然異世界に行けというではないか。 食文化を発展させてほしいと懇願され、幸子は異世界に行くことを決意する。

聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!

伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。 いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。 衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!! パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。  *表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*  ー(*)のマークはRシーンがあります。ー  少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。  ホットランキング 1位(2021.10.17)  ファンタジーランキング1位(2021.10.17)  小説ランキング 1位(2021.10.17)  ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。

転生王女は現代知識で無双する

紫苑
ファンタジー
普通に働き、生活していた28歳。 突然異世界に転生してしまった。 定番になった異世界転生のお話。 仲良し家族に愛されながら転生を隠しもせず前世で培ったアニメチート魔法や知識で色んな事に首を突っ込んでいく王女レイチェル。 見た目は子供、頭脳は大人。 現代日本ってあらゆる事が自由で、教育水準は高いし平和だったんだと実感しながら頑張って生きていくそんなお話です。 魔法、亜人、奴隷、農業、畜産業など色んな話が出てきます。 伏線回収は後の方になるので最初はわからない事が多いと思いますが、ぜひ最後まで読んでくださると嬉しいです。 読んでくれる皆さまに心から感謝です。

ぬいぐるみばかり作っていたら実家を追い出された件〜だけど作ったぬいぐるみが意志を持ったので何も不自由してません〜

望月かれん
ファンタジー
 中流貴族シーラ・カロンは、ある日勘当された。理由はぬいぐるみ作りしかしないから。 戸惑いながらも少量の荷物と作りかけのぬいぐるみ1つを持って家を出たシーラは1番近い町を目指すが、その日のうちに辿り着けず野宿をすることに。 暇だったので、ぬいぐるみを完成させようと意気込み、ついに夜更けに完成させる。  疲れから眠りこけていると聞き慣れない低い声。 なんと、ぬいぐるみが喋っていた。 しかもぬいぐるみには帰りたい場所があるようで……。     天真爛漫娘✕ワケアリぬいぐるみのドタバタ冒険ファンタジー。  ※この作品は小説家になろう・ノベルアップ+にも掲載しています。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

大聖女の姉と大聖者の兄の元に生まれた良くも悪くも普通の姫君、二人の絞りカスだと影で嘲笑されていたが実は一番神に祝福された存在だと発覚する。

下菊みこと
ファンタジー
絞りカスと言われて傷付き続けた姫君、それでも姉と兄が好きらしい。 ティモールとマルタは父王に詰め寄られる。結界と祝福が弱まっていると。しかしそれは当然だった。本当に神から愛されているのは、大聖女のマルタでも大聖者のティモールでもなく、平凡な妹リリィなのだから。 小説家になろう様でも投稿しています。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から「破壊神」と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

せっかく転生したのに得たスキルは「料理」と「空間厨房」。どちらも外れだそうですが、私は今も生きています。

リーゼロッタ
ファンタジー
享年、30歳。どこにでもいるしがないOLのミライは、学校の成績も平凡、社内成績も平凡。 そんな彼女は、予告なしに突っ込んできた車によって死亡。 そして予告なしに転生。 ついた先は、料理レベルが低すぎるルネイモンド大陸にある「光の森」。 そしてやって来た謎の獣人によってわけの分からん事を言われ、、、 赤い鳥を仲間にし、、、 冒険系ゲームの世界につきもののスキルは外れだった!? スキルが何でも料理に没頭します! 超・謎の世界観とイタリア語由来の名前・品名が特徴です。 合成語多いかも 話の単位は「食」 3月18日 投稿(一食目、二食目) 3月19日 え?なんかこっちのほうが24h.ポイントが多い、、、まあ嬉しいです!

処理中です...