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温泉!

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「もどりました。」
「おかえりなさい、さぁ行きましょうか。」
 お茶を飲みながら待っていた王妃はそう言い、侍女を連れて部屋を出る、千春もあとに続く。

「チハル?その荷物は着替えなのかしら?」
「はい、着替えとお風呂セットです。」
「お風呂セット?」
「はい、ボディーソープとかシャンプーとかですね。」
「しゃんぷー?」
「髪用の石鹸みたいな物です、こちらではどうやって髪を洗ってるんですか?」
「豆と薬草とオイルを混ぜた物で洗ってるわよ?」
 王妃はシャンプーを知らないようで、千春はどうやって髪を洗っているのか気になったが、石鹸ではなかったようだ。

「それの強化版?みたいな物です、もし良かったら使ってみませんか?王妃様の髪とても綺麗なのでもっと艶が出ると思いますし。」
「「「!?」」」
 一緒に居た侍女二人も王妃も「艶が出る」の言葉に物凄い反応を示した、侍女も良いとこのお嬢様なので興味があるようだった。

「それは楽しみだわ!」
 王妃は嬉しそうに微笑み返し浴室へ向かう、千春も王妃の髪の毛を見ながら今でも綺麗だけどなーと思いながら髪を見ていた。
 王妃の髪は腰まで有るストレートの赤い髪を中ほどで軽く括った髪型で、ヘアオイルが付いているのか品の良い艶がある。

 浴場に着くと侍女が3人待機しており王妃と千春の服を脱がし出した。
「わ・・私は自分で脱げますからっ!!!!」
 そう言う千春に侍女はニッコリと微笑み千春の言葉をスルーして脱がせた。

「あ、リュックのお風呂セットを・・・・。」
 千春はボディーソープやシャンプー、トリートメント、コンディショナーと取り出す、そして侍女がそれを受け取り浴室へ持って行く。

「さぁいらっしゃい?」
 裸になった王妃に連れられ浴室に入るが、王妃のプロポーションが凄く千春は言葉が出なかった。

「こちらへどうぞ。」
 侍女が先導した先には広い浴槽と一人用の浴槽が有り湯が溜められていた、どうも先に小さな浴槽で体を洗いその後大きな浴槽で浸かるようだ、浴室はとても暖かくそして嗅いだ事のある匂いがした。

「・・・温泉?」
「あら、温泉を知ってるの?」
「はい、私の国は温泉が良く出てるので。」
「このお湯は美容に良いって言われてるのよ?それにお湯に浸かるのは大好きなの。」
 そう言いながら小さな浴槽の方に浸かる、小さいと言っても自分の家の浴槽よりも大きく足を延ばしても向こうに届きそうにないくらい大きかった、よく見るとその隣にももう一つ同じ浴槽があり、千春はそっちに入るよう勧められた。

「はぁ・・・・。」
 王妃は気持ちよさそうに息を吐き侍女が王妃の手足をマッサージしながら洗い出した、髪の毛も櫛で梳いていた。

「チハル様、こちらはどうやってお使いするのですか?」
 侍女がボディソープを持ち千春に聞いてきた。

「それは体を洗う時にボディタオルに付けて体を擦るやつです、他の3つは髪用でキャップが黒いのがシャンプー、頭を洗うやつで、赤いのがトリートメントです、金色の入れ物はコンディショナーなので最後に使います。」
 そう言い使い方を説明する、髪の手入れで使うオイル等と使い方が似ているのか使い方をすぐに理解した侍女達は王妃と千春の髪も手入れを始めた。

「チハル様の髪もお綺麗ですね。」
 肩より少し長い髪をいつもポニーテールにしている、母譲りのストレートでポニーテールも母の真似をしてる、この髪型がとても気に入っていたから髪の手入れもしっかりしていた。
 初めて人に体と髪の毛を洗ってもらい恥ずかしく、恐縮しながらされるがままの千春を王妃は優しく見守っていた。

「チハル、こっちへいらっしゃい。」
 体も髪の毛も洗い終わった二人は大きな浴槽へ入る。

「はああぁぁぁぁぁ」
 千春は数年ぶりだろうか、大きな浴槽へ入り大きな声を出してしまった。

「ふふふっ気持ち良いでしょう、ココは私の自慢の浴室なのよ?」
 そう言い王妃は千春の横に並びお湯に浸かる。

「はい、とろけそうです」
 それを聞き王妃は微笑み千春の頭を撫でる。

「いつも一人だから一緒に入ってくれて嬉しいわ。」
「他の方は使わないんですか?」
「使わないわよ、陛下と子供たちは男用の浴室があるもの。」
「体洗った浴槽二つ在りましたけど?」
「予備くらいあるわ、あれはチハル専用の浴槽にするからまた予備を準備させておかないとね。」
 そう言いながら目を瞑り気持ちよさそうにしている。

「向こうでお風呂に入るので・・・そんなに使う事無いと思うんですけど。」
「お泊り出来る時に入ればいいじゃない、それこそすぐに向こうに帰れるんでしょう?毎日こっちで寝泊まりしても良いのよ?」
「いや、それは流石にどうかと・・・アハハ。」
「そう?私は毎日でも一緒に入りたいわぁ。」
 目を瞑ったまま会話している王妃はとても幸せそうな顔でそう言った。



「!?」
 不意に千春は王妃に抱き寄せられた。

「チハル・・・・・・あなたのお母様もきっと今でもあなたを見守っているわ。」
「・・・・・はい。」
「お母様の居なかった時間を、私に少しでも埋めさせてくれないかしら?」
 王妃は優しく千春を抱きしめる、千春も何故か・・・自然と王妃の体に頭を預ける。

「ありがとうございます王妃様。」
「メグで良いわよ、出来ればお母様と呼んでくれても良いんだけど?」
 王妃は悪戯っぽく千春に笑いかける。

「そ・・・それは・・・さすがに王様に怒られそうですけど、あと!あの!貴族の方とか色々まずくなったりとか!急に娘がとか大変なことになりませんか!?」
「あーら大丈夫よ、私の遠縁の娘を引き取って養女にしたとか、他の国から来たとか言えば良いじゃない?」
 ケラケラと笑いながら言うが、そんな簡単な物では無いのでは?と千春は苦笑をしていた。

「まだチハルが来て時間も経ってないから今なら色々と筋書きは作れるわ、それにチハルの国の知識はこの国にとっても凄く大事な情報になるわ、少々の無理も通せば道理になる物よ?それに私がチハルの事を気に入ったんだもの、ふざけた事を言う者が出たら私が責任をもって処・・んんっっ!対応しておくわ。」
 なんか物騒な言葉が出た気がしたが、千春もこの少ない時間なのに王妃の事がとても好きになっていた、心の中で『悪役令嬢とか思ってごめんなさい』と謝るくらいに、そしてしばらく他愛のない話をし、お湯を堪能した。

「さぁそろそろ上がりましょうか。」
「はい。」
 2人目を合わせニッコリと微笑みお湯から上がる、侍女が待ち構えており一瞬ビクッとしたが、されるがままに体を拭かれ、寝間着に着替えた、流石に寝間着は自分で着るので!と押し通し着替え、王妃と部屋に戻る。
 部屋に戻ると寝室の準備が終わっていた、王妃のベッドは流石王妃様!と言わんばかりの豪華なベッドで千春が4人くらいは寝れそうなサイズだった、その横にはさっきまで無かったと思われるベッドがあったが、それでも自分のベッドよりも大きく豪華だった。

「うわぁ!」
「ふふっベッドを準備させたけど私のベッドで一緒にねましょう?あぁ!娘と一緒に寝れるなんて夢みたい!さぁいらっしゃい!」
 ベッドを見て声を上げる千春と違う意味で興奮している王妃がベッドに入る。

「良いんですか?」
「良いに決まってるでしょう。」
 そう言って布団に入る、2人は横になり目を合わせ2人とも笑っていた。

「め・・メグ様、今日は有難う御座いました。」
「あら、お母様じゃないのかしら?フフッ。」
「そ・・・それはさすがに。」
 顔を真っ赤にしながら顔を布団で隠す、王妃は頭を撫でながら微笑んでいた。

「今日は私の我儘に付き合ってくれてありがとうチハル、とても楽しかったわ。」
「いえ、私もとても嬉しかったです。」
「明日は魔法の特訓だったわね。」
「え!?特訓ですか!?練習・・・だったと思うのですが。」
「あらそうだったかしら?」
 クスリと笑い千春を揶揄う。

「寝ると魔力は回復しやすいの、しっかり寝て明日はがんばりましょうね、おやすみなさいチハル。」
「はいおやすみなさいメグ様。」
 そう言い二人は目を瞑った、千春は使い慣れない魔法や色々な出来事も有り疲れていたのかすぐに寝息をたてた、王妃は心地よい寝息を聞きながら同じく眠りに就いた。

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 千春は夢を見ていた、お母さんが台所に立っている、それを後ろから見ていた。
『おかぁさん何つくってるのー?』
『今日はガーリックチキンと水菜のサラダよー冷蔵庫からプチトマト取ってくれる?』
『うん!ヘタ取って洗っといたらいい?』
『ありがと、洗ったらそのザルで水きっといてね』
『はーい、あ、おかぁさん今日ねープレーンオムレツ作ってねー王様たちに食べてもらったんだー。』
『へー上手に出来た?』
『うん!みんな美味しいって言ってくれたよ!おかぁさんにも食べてもらいたかったなー。』
『いつも食べてるわよ?、毎年作ってくれてるじゃない、もうお母さんより上手じゃないの。』
『そう言うのじゃないんだもん、ちゃんと食べてもらいたいの!あとねーあっちにもおかぁさんみたいな人が居るの、とっても優しくて全然おかぁさんと感じが違うのにすっごくおかぁさんと似てるの!』
『優しい?』
『うん!』
『えーお母さん妬けちゃうなー、フフッ』
『あ!その笑い方!あっちのお母様と一緒だ!』
『女の子ってね、結婚したらお母さんが増えるんだよ、千春はあっちで結婚しちゃうのかなー?』
『えーお母様は養女にするって言ってたもん、お嫁さんじゃないよー?』
『そうなの?でも千春はずーっと頑張って来たんだから一杯甘えておきなさい?お母さんもその方が嬉しいわ~。』
 千春の母はとても優しく千春に微笑み頭を撫でる。
『あー撫で方も一緒だー!』
 そして二人は笑い合い料理を作る、束の間の親子の会話、それが数年ぶりの会話だったとしても千春は当たり前のように、そして今までの時間を埋める様に楽しく母と料理を作るのだった。


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