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G.F. - 大逆転編 -
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今日は…4月の1日、月曜日。
詩織が初めてエキストラとして、ドラマ出演デビューしたのが3月26日の火曜日だったから…あれからもう6日。
また今日も…大事件が起きるんだけど…。
午前8時33分。
僕と詩織は冴嶋プロダクションビルの前へとやってき…えっ?
ビルのロビーで、ガラス壁越しに…陽凪さんが隠れるようにして、僕らを見て手招きしてる…?
僕らもやや慌てるように、入り口からロビー…陽凪さんのところへと掛け急ぐ。
『信吾くん!ヤバいよ!』
『な…何がですか?』
『雑誌の記者が、わんさか事務所に来てる!』
…?
なんで?
詩織も心配そうに、僕を見てる。
『こっち来て!』
陽凪さんは僕の腕を掴み、エレベーター…じゃなくて、階段へと向かい、駆け上がっていく。
…そして事務所のある2階…いやに騒がしい。
なんの騒ぎ?
陽凪さんは壁に身を隠しながら、そーっと廊下を覗き込む。
僕も詩織も陽凪さんに真似て、こそーっと廊下を覗き見る。
事務所の前には、確かにたくさんの記者らしき姿があった。
そして記者たちに冴嶋社長自らと、大槻専務取締役が対応していた。
「かの天才女装家の男性は、今日はこちらに来ないんですか?」
「その天才女装家の男性の、女装タレントとしてのデビューは、いつ頃を予定しているんですか?」
「天才女装家タレントについて、何か一言ください!」
…!!!
聞こえてくる、記者たちの声…。
えぇ…どういうこと…?
『陽凪さん、天才女装家って…』
詩織と陽凪さんは視線を交えた。
『うん。もちろん信吾くんのことよ!』
『なんで!?』
階段を駆け上がってくる足音が聞こえてきて、僕らは階段を振り返って見た。
『あっ、池田さん!』
『うん!陽凪さん!コンビニで買ってきたよ!』
池田さんから詩織の手へと渡されたのは…《月刊文秋》。
…?
『ここではあれこれと、長い会話はできないから、とりあえず4階へ行こう!』
僕らは池田さんを追うように、続いて階段を駆け上がっていく…。
…4階のトレーニングルームに飛び込み、陽凪さんが扉を閉めた。
まずは全員、乱れた息を正す…はぁ、はぁ……はぁ。
『ど、どういうことなんですか?陽凪さん、池田さん…』
『昨日発売した、その月刊情報誌に…信吾くんの女装をバラす記事が載ったらしいんだ』
詩織が慌てるように、その雑誌を開いてバラバラとページをめくっていく…。
『記事の名前は《バレンタインフェスの裏で起こっていたもう一つの戦い…そこに現れた天才女装家の姿!!》だって…』
『あ…あった!!』
詩織が指差したページを、僕ら4人は覗き込んだ。
…記事には、2月11日の日曜日に開催した《バレンタインフェス》のこと、そして控え室であった《どちらが可愛いか勝負》のことが、事細かく書き載せてあった…。
それより驚いたのは…そこには鮮明な金魚の写真が2枚も大きく貼られていたこと…!!
『なんで…写真が載ってるの?』
詩織が、少し混乱したようにそう言った。
『あの日、私たちが《絶対撮らないで!》って言って…みんなが約束してくれてたはずなのに!』
『あの時、室内も廊下も人人人で溢れていたんだ。だからそこにもし記者や密告アイドルが紛れていても、判らない状況だった…』
池田さんは『そんなことは今言っても仕方ない。記事の続きを読んでみよう』と言いながら、雑誌の隣のページを見た…。
【…その勝負に現れた《アイドルグループ、Peace prayers》の幻のメンバーと呼ばれた《謎の美少女アイドル》。彼女は誰なのか?その姿を追って、我々は取材を続けた…。】
なんで、こんなに詳しく知ってるんだ…。
どこから…。誰が…。
【…彼女は謎の美少女の左隣に立つ(※写真1参照)アイドル、岡本詩織と常に行動を共にしているらしい。彼女は岡本の専属メイク担当なんだということが取材から判った…。】
本当に、全部バレてる!
【…実は我々は以前(去年秋辺りから)、冴嶋プロダクションの次なる大物新人デビューの情報を頼りに、岡本とこの謎の美少女を取材しようと追っていたことがあった。その街は《美波県藤浦市》。我々はその藤浦市へと向かった…。】
行った?取材に藤浦に!?
あの、去年の秋に追われてた日々のことも…嫌々ながら思い出してしまう…。
【…そこで有力な情報を得る。藤浦市の情報通だという、早瀬ヶ池では有名女子のひとり《Aさん》が、謎の美少女の詳しい情報を暴露してくれるというのだ…。】
早瀬ヶ池で有名な女子…Aさん?
【…彼女の情報によると、謎の美少女は美少女ではない。女装をした男性だというのだ。本名は岩塚信吾。そして女装した姿は池川金魚。しかもその女装家である岩塚は《女装に関しては天才》だと云われ、メイクも自身で行い、更に彼を街で一番の有名女子とさせるために陰で奮闘した、ファッションに精通したプログループまでもがあったという。そのグループ名は《アンナファミリー》…。】
僕や金魚の名前から!アンナファミリーのことまで!
話した子がいるの!!?
何でもかんでも話しやがって!誰だよ!
【…謎の美少女タレントならぬ天才女装家である岩塚に、かなり壮大な背景があったことが浮上したが、彼は今は冴嶋プロダクションに所属してるという。それはそうだろう。先の岡本詩織も、同プロダクションに所属しているのだから。我々は引き続き彼を追い、情報をくれたAさんに感謝し、冴嶋プロダクションへの取材を続けてゆく予定だ…。】
そして最後に、こんな一文が添えてあった…。
【…もし、彼が天才女装家として芸能界デビューを果たしたら、彼はあっという間に世間からの注目を浴び、その美女装姿をもって芸能界に激震を起こすことだろう…。】
『信吾は…金魚は、これからどうなっちゃうの?』
心配そうにそう小さく言った詩織。
そしてその情報誌を、陽凪さんがそっと閉じ、一言言った…。
『うん。今、冴嶋社長と大槻さんが考えてくれてる。信吾くんをどうするか』
『でも、もう君の情報公開は避けられないだろうね…もう隠してはいられない…』
陽凪さんに続いてそう言った池田さんを、詩織も僕も見た。
『ねぇ…《Aさん》って誰なの?瀬ヶ池で有名な子だって…』
詩織も、僕と同じことを考えたらしい。
『ねぇ、詩織…』
僕は、ある考えが脳裏によぎった。
このAさんの《A》って、ただ適当にそう付けたんじゃなくて、本名の頭文字だったとしたら…。
『じゃあ…Aだから《あ》から始まる女の子だってこ…!!』
詩織も直感的に頭に浮かんだらしい。
僕も今、そうなんだ。
『瀬ヶ池で有名な、《あ》から始まる名前の子…』
僕と詩織は互いを見合い、指差しあった。
『彩乃!』
『彩乃ちゃん!』
…間違いない!
かつての僕らのライバル…丹波彩乃だ!!
想像するに、金魚への仕返しのつもりで、記者に金魚の全てを話してやったんだろう!
アンナファミリーのことまでも…!
彩乃は大学を卒業したこの春、芸能事務所《Kira♠︎m》に所属するため、上京するんだとか聞いてたけど…。
『許せない!!』
そう言って怒る詩織。
『《事務所移転》を迫られてるこの忙しいときに、追い討ちのように…こんな暴露までされるなんて…くそっ!』
池田さんも、そう言って怒ってる。
《~♪》
あれ?陽凪さんの電話着信の音…。
陽凪さんは、すぐに電話に出た。
『もしもし…はい…はい…』
何の電話だろう…。
僕も詩織も不安そうに、陽凪さんを見ていた…。
『信吾くん、詩織ちゃん。社長から…』
『はい!社長は、何って…』
『記者たちはもう帰ったから。社長室でお話ししましょう…って』
詩織も僕も『わかりました』って…陽凪さんに言って返した。
『社長。では信吾くんと詩織ちゃんを、社長室へ行かせます…』
詩織が初めてエキストラとして、ドラマ出演デビューしたのが3月26日の火曜日だったから…あれからもう6日。
また今日も…大事件が起きるんだけど…。
午前8時33分。
僕と詩織は冴嶋プロダクションビルの前へとやってき…えっ?
ビルのロビーで、ガラス壁越しに…陽凪さんが隠れるようにして、僕らを見て手招きしてる…?
僕らもやや慌てるように、入り口からロビー…陽凪さんのところへと掛け急ぐ。
『信吾くん!ヤバいよ!』
『な…何がですか?』
『雑誌の記者が、わんさか事務所に来てる!』
…?
なんで?
詩織も心配そうに、僕を見てる。
『こっち来て!』
陽凪さんは僕の腕を掴み、エレベーター…じゃなくて、階段へと向かい、駆け上がっていく。
…そして事務所のある2階…いやに騒がしい。
なんの騒ぎ?
陽凪さんは壁に身を隠しながら、そーっと廊下を覗き込む。
僕も詩織も陽凪さんに真似て、こそーっと廊下を覗き見る。
事務所の前には、確かにたくさんの記者らしき姿があった。
そして記者たちに冴嶋社長自らと、大槻専務取締役が対応していた。
「かの天才女装家の男性は、今日はこちらに来ないんですか?」
「その天才女装家の男性の、女装タレントとしてのデビューは、いつ頃を予定しているんですか?」
「天才女装家タレントについて、何か一言ください!」
…!!!
聞こえてくる、記者たちの声…。
えぇ…どういうこと…?
『陽凪さん、天才女装家って…』
詩織と陽凪さんは視線を交えた。
『うん。もちろん信吾くんのことよ!』
『なんで!?』
階段を駆け上がってくる足音が聞こえてきて、僕らは階段を振り返って見た。
『あっ、池田さん!』
『うん!陽凪さん!コンビニで買ってきたよ!』
池田さんから詩織の手へと渡されたのは…《月刊文秋》。
…?
『ここではあれこれと、長い会話はできないから、とりあえず4階へ行こう!』
僕らは池田さんを追うように、続いて階段を駆け上がっていく…。
…4階のトレーニングルームに飛び込み、陽凪さんが扉を閉めた。
まずは全員、乱れた息を正す…はぁ、はぁ……はぁ。
『ど、どういうことなんですか?陽凪さん、池田さん…』
『昨日発売した、その月刊情報誌に…信吾くんの女装をバラす記事が載ったらしいんだ』
詩織が慌てるように、その雑誌を開いてバラバラとページをめくっていく…。
『記事の名前は《バレンタインフェスの裏で起こっていたもう一つの戦い…そこに現れた天才女装家の姿!!》だって…』
『あ…あった!!』
詩織が指差したページを、僕ら4人は覗き込んだ。
…記事には、2月11日の日曜日に開催した《バレンタインフェス》のこと、そして控え室であった《どちらが可愛いか勝負》のことが、事細かく書き載せてあった…。
それより驚いたのは…そこには鮮明な金魚の写真が2枚も大きく貼られていたこと…!!
『なんで…写真が載ってるの?』
詩織が、少し混乱したようにそう言った。
『あの日、私たちが《絶対撮らないで!》って言って…みんなが約束してくれてたはずなのに!』
『あの時、室内も廊下も人人人で溢れていたんだ。だからそこにもし記者や密告アイドルが紛れていても、判らない状況だった…』
池田さんは『そんなことは今言っても仕方ない。記事の続きを読んでみよう』と言いながら、雑誌の隣のページを見た…。
【…その勝負に現れた《アイドルグループ、Peace prayers》の幻のメンバーと呼ばれた《謎の美少女アイドル》。彼女は誰なのか?その姿を追って、我々は取材を続けた…。】
なんで、こんなに詳しく知ってるんだ…。
どこから…。誰が…。
【…彼女は謎の美少女の左隣に立つ(※写真1参照)アイドル、岡本詩織と常に行動を共にしているらしい。彼女は岡本の専属メイク担当なんだということが取材から判った…。】
本当に、全部バレてる!
【…実は我々は以前(去年秋辺りから)、冴嶋プロダクションの次なる大物新人デビューの情報を頼りに、岡本とこの謎の美少女を取材しようと追っていたことがあった。その街は《美波県藤浦市》。我々はその藤浦市へと向かった…。】
行った?取材に藤浦に!?
あの、去年の秋に追われてた日々のことも…嫌々ながら思い出してしまう…。
【…そこで有力な情報を得る。藤浦市の情報通だという、早瀬ヶ池では有名女子のひとり《Aさん》が、謎の美少女の詳しい情報を暴露してくれるというのだ…。】
早瀬ヶ池で有名な女子…Aさん?
【…彼女の情報によると、謎の美少女は美少女ではない。女装をした男性だというのだ。本名は岩塚信吾。そして女装した姿は池川金魚。しかもその女装家である岩塚は《女装に関しては天才》だと云われ、メイクも自身で行い、更に彼を街で一番の有名女子とさせるために陰で奮闘した、ファッションに精通したプログループまでもがあったという。そのグループ名は《アンナファミリー》…。】
僕や金魚の名前から!アンナファミリーのことまで!
話した子がいるの!!?
何でもかんでも話しやがって!誰だよ!
【…謎の美少女タレントならぬ天才女装家である岩塚に、かなり壮大な背景があったことが浮上したが、彼は今は冴嶋プロダクションに所属してるという。それはそうだろう。先の岡本詩織も、同プロダクションに所属しているのだから。我々は引き続き彼を追い、情報をくれたAさんに感謝し、冴嶋プロダクションへの取材を続けてゆく予定だ…。】
そして最後に、こんな一文が添えてあった…。
【…もし、彼が天才女装家として芸能界デビューを果たしたら、彼はあっという間に世間からの注目を浴び、その美女装姿をもって芸能界に激震を起こすことだろう…。】
『信吾は…金魚は、これからどうなっちゃうの?』
心配そうにそう小さく言った詩織。
そしてその情報誌を、陽凪さんがそっと閉じ、一言言った…。
『うん。今、冴嶋社長と大槻さんが考えてくれてる。信吾くんをどうするか』
『でも、もう君の情報公開は避けられないだろうね…もう隠してはいられない…』
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『ねぇ…《Aさん》って誰なの?瀬ヶ池で有名な子だって…』
詩織も、僕と同じことを考えたらしい。
『ねぇ、詩織…』
僕は、ある考えが脳裏によぎった。
このAさんの《A》って、ただ適当にそう付けたんじゃなくて、本名の頭文字だったとしたら…。
『じゃあ…Aだから《あ》から始まる女の子だってこ…!!』
詩織も直感的に頭に浮かんだらしい。
僕も今、そうなんだ。
『瀬ヶ池で有名な、《あ》から始まる名前の子…』
僕と詩織は互いを見合い、指差しあった。
『彩乃!』
『彩乃ちゃん!』
…間違いない!
かつての僕らのライバル…丹波彩乃だ!!
想像するに、金魚への仕返しのつもりで、記者に金魚の全てを話してやったんだろう!
アンナファミリーのことまでも…!
彩乃は大学を卒業したこの春、芸能事務所《Kira♠︎m》に所属するため、上京するんだとか聞いてたけど…。
『許せない!!』
そう言って怒る詩織。
『《事務所移転》を迫られてるこの忙しいときに、追い討ちのように…こんな暴露までされるなんて…くそっ!』
池田さんも、そう言って怒ってる。
《~♪》
あれ?陽凪さんの電話着信の音…。
陽凪さんは、すぐに電話に出た。
『もしもし…はい…はい…』
何の電話だろう…。
僕も詩織も不安そうに、陽凪さんを見ていた…。
『信吾くん、詩織ちゃん。社長から…』
『はい!社長は、何って…』
『記者たちはもう帰ったから。社長室でお話ししましょう…って』
詩織も僕も『わかりました』って…陽凪さんに言って返した。
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