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G.F. - 大逆転編 -
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僕は視線を樋口へと戻す。
そして、その泣きぐずっている横顔に、優しく語りかけるように言った…。
『も、もう泣かないで…落ち着いて、絵里佳ちゃん…』
「ぐすっ…。い、岩つ…うぅん、姫さまが《東京から藤浦に…つか絵里佳のところへすぐに戻ってくるから。だからお願い》って…今すぐ言ってくれるなら…」
『…。』
「…泣き止んで…あげてもいいです。だから言って…早く」
『…。』
こういう無茶言う時の樋口って…僕、ほんっと嫌だ…あぁ。
てゆうか、都内から藤浦に今すぐ戻ってこい?
急にそんなこと、できるわけないじゃん!
『ね…ねぇ、絵里佳ちゃん?』
「…うん。言ってくれるんですか?今」
違う。言わない。
それじゃない。
『もし宮学を辞めたとして…そのあとは、どうするつもりなの?』
樋口は何も躊躇することなく、サラリと答えてくれた。
「私も東京に行きます。それでモデルのアルバイトか…他のアルバイトとか探して…」
えぇ…?
「その前に…姫さまの住むマンションの場所を調べて、何階のどの部屋に住んでるのか探して…私も出来るだけ近いとこのマンション…か、同じマンション内とか同じ階…あっ!姫さまがルームシェアいいよって言ってくれるなら、一緒に住…」
怖怖っ…怖ぁ!!
一つ間違えたらストーカー行為!!!
止めてよ!
「…とにかく、姫さまと毎晩と毎朝、一緒にご飯…」
『ちょっ…ちょっと暴走、待ってくれない…?』
「あー。お風呂は私…えっ?暴走?」
樋口が「…何ですか?」って言う前に…言ってしまった。
やっぱり、もう嘘でも約束してやるしか、止まりそうになかった…。
『すぐ…には難しいけど、いつか…金魚は藤浦へ帰ってくるから』
「本当ですかぁ!」
ようやく…樋口が笑顔を見せて暴走は止まってくれた…よね?
「いつですか?戻ってく…」
『だけど…いつ、とかは今は言えないけど…必ず約束は守るから…』
約束…。
その言葉に、樋口の瞳はキラッキラと輝いた。
『…だから、宮学は辞めないで卒業まで頑張ってほしい』
そう樋口に伝えたあと、『それと《BlossoM.》の専属モデルはどうするの?』『新しい《早瀬ヶ池の一番の女の子を目指す》っていう私との約束は?』そう畳み掛けるように樋口に訊くと…樋口は「ですよね…私、勝手に《大学を辞めて東京へ行く》だなんて、無責任なこと言っちゃってましたね…」そう答えて、やっぱりこれで樋口の暴走は止まってたようだった。
あ、そうそう。
メイクする時間は…!
ヤバい!!
今すぐ始めないと!!
それも少しペースアップで!!!
『ごめん!絵里佳ちゃん!もうあんまり時間無いから!』
『はい。メイク始めちゃってください』
僕はヘアクリップを3つ手に取り、樋口の額の真ん中の上、左上と右上の3箇所で前髪を留めて、化粧水とコットンで樋口の顔を優しく撫で始めた。
「姫さま…」
『ごめん。メイク中は喋らないでね』
「違うんです。最後に一つだけ聞いてください」
『?』
樋口が話した、緋子ちゃんが言ってた《ある子からのルール変更の提案》…。
そのある子というのは…。
「…私です」
『えっ?何で…ルール変更…?』
「だって、こういう機会がないと、今の話とかさせてもらえなかったじゃないですか」
あー…まぁ。
「姫さまが私を避けてる?そう思えることが、時々たまに多くあったから…」
《時々たまに》なのか《多く》なのか、よく解らないけど…バレてたんだ…。
若干避けてて、ごめん…なさい。
『うん…ごめんなさい』
「大丈夫です。でも話せて嬉しいです。メイクの続きを進めて、姫さま」
…うん。
とりあえず…制限時間までには間に合わせる!
メイクのクォリティも絶対に落とさないから!
樋口絵里佳を、誰よりも可愛く仕上げられるのは、僕だけだと信じてるから。まだ今は。
華丘緋子ちゃんが、メイクして仕上げた樋口よりも…ね。たぶん。
『緋子ちゃん、金魚ちゃん。制限時間だけど…いい?』
ナオさんが緋子ちゃんにそう訊く。
『はい。私はバッチリ。詩織ちゃんを仕上げました!』
自信満々に、そう宣言した緋子ちゃん。
メイク道具を簡単に整理し、メイクチェアーに座ったままの詩織の後ろに、背を向けるようにしてスタート時のようにまた立った。
『金魚ちゃんは?…お喋りが長かったみたいだけど…仕上がりは大丈夫?』
『はい…頑張りました』
僕もスタート時のように、座る樋口の後ろに背を向けるように立った。
僕は、メイクが済んだ詩織の顔が…緋子ちゃんは、樋口絵里佳の顔が…。
お互い、まだ相手方メイクモデルの顔は見えてない。
『じゃあ…絵里佳ちゃんと詩織ちゃん。立ってこっちへ来て』
樋口は僕の隣に。詩織は緋子ちゃんの隣に並んで立った。
そして初めて、メイクが完成した相手方メイクモデルの顔を見合う…!
あ…なるほど。
緋子ちゃんが詩織をメイクすると…そうなんだぁ。
緋子ちゃんから見た樋口…緋子ちゃんはどう感じてるだろう…?
『私ね…《綺麗なお姉さんメイク》は得意なんだけど《可愛い子メイク》とか苦手だから…』
そう言って、緋子ちゃんは少し照れたように苦笑いを見せた。
今日のメイク勝負の審判を務めるナオさんが、樋口と詩織の顔を何度かチラリと交互に見合う。
僕から見た《緋子ちゃんメイクの詩織》は…。
確かに。
僕がメイクした時よりも、ずっと大人っぽく綺麗に見えた。
全然違う…僕のメイクした詩織と。
『やっぱり《可愛い子メイク》のほうがいいのかな?絵里佳ちゃん。だって凄く可愛い。似合ってる』
緋子ちゃんはそう言って、樋口を喜ばせていた。
『だって、姫さまの《可愛い子メイク》は世界一ですから。あはは』
『私もそういうメイク、勉強し直そうかな…』
緋子ちゃんも、樋口と見合って笑い合っていた。
僕だってそうだ…。
《可愛い》のメイクだけじゃない。
《綺麗》のメイクもできるようにならないと。
詩織が女優になって、そういう《お姉さんメイク》が必要となる役柄の日が、必ず?ある…かもしれない。
勉強しよう…《お姉さん》メイク…。
濃いめの色やメリハリ、目元くっきり…唇の輪郭も赤く、はっきりと…か。
意外と難しそう…。
『うーん。これは…二人のメイクのタイプは全く別ね…どーうしようかしら…勝敗は』
悩んだ末…ナオさんは《両方優勝》という、ちょっと曖昧な結論を出して…この勝負は終わった…。
『これから、どうしよう…?』
詩織が、樋口や僕にそう訊くと…ナオさんが。
『せっかく綺麗にメイクしたんだし…外はちょっと小雪がちらついてて少し寒いけど…行ってこれば?』
…ってことで、僕と樋口と詩織の3人は、揃って瀬ヶ池へ出掛けることになった。
『わぁ…本当だ。小雪が舞ってる』
『ってか見て…瀬ヶ池の女の子たちがこんなに…きゃははは♪』
化粧品店《BlossoM.》の店の前には、どこから聞きつけたのか…僕や詩織を出待ちしていた、たくさんの瀬ヶ池の女の子達が…!
『詩織ちゃん金魚ちゃーん、待ってたー!』
『今日も素敵ー』
『私たちと一緒に瀬ヶ池行こー!』
『可愛い!本当にマジで大好き!!』
『…あれ?詩織ちゃんってメイク変えたの??』
店から街道へと一歩出て、詩織がいきなり…。
『みんなー。寒くなかったのー?こんなところで待っててー?』
そう訊くと、女の子たちは『寒かったー』『でも待ってたかったー』『一緒に瀬ヶ池に行きたかったから』…との返事が飛び交った。
『きゃははは…いいかな?金魚、絵里佳ちゃん?』
『私はどっちでも…』
『いいよー。詩織ちゃん。みーんな連れて瀬ヶ池行こっ!あははは』
約30人ほどの瀬ヶ池の女の子たちを連れて、僕ら3人が先頭に…瀬ヶ池の街へと向かった。
30人くらいの女の子たちは、入れ替わり立ち替わりしながら…また少しずつ増えながら…。
『…ねぇ詩織、次どこへ行く?』
『うーん…あ!秋良くんのお店また行こうよ!』
樋口は何も話せず目をキョロキョロ。
『昨日お手伝いアルバイトしたばっかなのに?』
『うん。今日はお客さんとして♪きゃははははー』
…約40人くらいの女の子を携えて、秋良さんのお店に行ったら…。
秋良さんから『客寄せ看板娘は嬉しいけどなぁ!…この人数!店に入りきらんだろ!お前ら《ハーメルンの笛吹き娘s》か!』
…って、ちょっと笑いながら怒られちゃってた…僕ら。
そして、その泣きぐずっている横顔に、優しく語りかけるように言った…。
『も、もう泣かないで…落ち着いて、絵里佳ちゃん…』
「ぐすっ…。い、岩つ…うぅん、姫さまが《東京から藤浦に…つか絵里佳のところへすぐに戻ってくるから。だからお願い》って…今すぐ言ってくれるなら…」
『…。』
「…泣き止んで…あげてもいいです。だから言って…早く」
『…。』
こういう無茶言う時の樋口って…僕、ほんっと嫌だ…あぁ。
てゆうか、都内から藤浦に今すぐ戻ってこい?
急にそんなこと、できるわけないじゃん!
『ね…ねぇ、絵里佳ちゃん?』
「…うん。言ってくれるんですか?今」
違う。言わない。
それじゃない。
『もし宮学を辞めたとして…そのあとは、どうするつもりなの?』
樋口は何も躊躇することなく、サラリと答えてくれた。
「私も東京に行きます。それでモデルのアルバイトか…他のアルバイトとか探して…」
えぇ…?
「その前に…姫さまの住むマンションの場所を調べて、何階のどの部屋に住んでるのか探して…私も出来るだけ近いとこのマンション…か、同じマンション内とか同じ階…あっ!姫さまがルームシェアいいよって言ってくれるなら、一緒に住…」
怖怖っ…怖ぁ!!
一つ間違えたらストーカー行為!!!
止めてよ!
「…とにかく、姫さまと毎晩と毎朝、一緒にご飯…」
『ちょっ…ちょっと暴走、待ってくれない…?』
「あー。お風呂は私…えっ?暴走?」
樋口が「…何ですか?」って言う前に…言ってしまった。
やっぱり、もう嘘でも約束してやるしか、止まりそうになかった…。
『すぐ…には難しいけど、いつか…金魚は藤浦へ帰ってくるから』
「本当ですかぁ!」
ようやく…樋口が笑顔を見せて暴走は止まってくれた…よね?
「いつですか?戻ってく…」
『だけど…いつ、とかは今は言えないけど…必ず約束は守るから…』
約束…。
その言葉に、樋口の瞳はキラッキラと輝いた。
『…だから、宮学は辞めないで卒業まで頑張ってほしい』
そう樋口に伝えたあと、『それと《BlossoM.》の専属モデルはどうするの?』『新しい《早瀬ヶ池の一番の女の子を目指す》っていう私との約束は?』そう畳み掛けるように樋口に訊くと…樋口は「ですよね…私、勝手に《大学を辞めて東京へ行く》だなんて、無責任なこと言っちゃってましたね…」そう答えて、やっぱりこれで樋口の暴走は止まってたようだった。
あ、そうそう。
メイクする時間は…!
ヤバい!!
今すぐ始めないと!!
それも少しペースアップで!!!
『ごめん!絵里佳ちゃん!もうあんまり時間無いから!』
『はい。メイク始めちゃってください』
僕はヘアクリップを3つ手に取り、樋口の額の真ん中の上、左上と右上の3箇所で前髪を留めて、化粧水とコットンで樋口の顔を優しく撫で始めた。
「姫さま…」
『ごめん。メイク中は喋らないでね』
「違うんです。最後に一つだけ聞いてください」
『?』
樋口が話した、緋子ちゃんが言ってた《ある子からのルール変更の提案》…。
そのある子というのは…。
「…私です」
『えっ?何で…ルール変更…?』
「だって、こういう機会がないと、今の話とかさせてもらえなかったじゃないですか」
あー…まぁ。
「姫さまが私を避けてる?そう思えることが、時々たまに多くあったから…」
《時々たまに》なのか《多く》なのか、よく解らないけど…バレてたんだ…。
若干避けてて、ごめん…なさい。
『うん…ごめんなさい』
「大丈夫です。でも話せて嬉しいです。メイクの続きを進めて、姫さま」
…うん。
とりあえず…制限時間までには間に合わせる!
メイクのクォリティも絶対に落とさないから!
樋口絵里佳を、誰よりも可愛く仕上げられるのは、僕だけだと信じてるから。まだ今は。
華丘緋子ちゃんが、メイクして仕上げた樋口よりも…ね。たぶん。
『緋子ちゃん、金魚ちゃん。制限時間だけど…いい?』
ナオさんが緋子ちゃんにそう訊く。
『はい。私はバッチリ。詩織ちゃんを仕上げました!』
自信満々に、そう宣言した緋子ちゃん。
メイク道具を簡単に整理し、メイクチェアーに座ったままの詩織の後ろに、背を向けるようにしてスタート時のようにまた立った。
『金魚ちゃんは?…お喋りが長かったみたいだけど…仕上がりは大丈夫?』
『はい…頑張りました』
僕もスタート時のように、座る樋口の後ろに背を向けるように立った。
僕は、メイクが済んだ詩織の顔が…緋子ちゃんは、樋口絵里佳の顔が…。
お互い、まだ相手方メイクモデルの顔は見えてない。
『じゃあ…絵里佳ちゃんと詩織ちゃん。立ってこっちへ来て』
樋口は僕の隣に。詩織は緋子ちゃんの隣に並んで立った。
そして初めて、メイクが完成した相手方メイクモデルの顔を見合う…!
あ…なるほど。
緋子ちゃんが詩織をメイクすると…そうなんだぁ。
緋子ちゃんから見た樋口…緋子ちゃんはどう感じてるだろう…?
『私ね…《綺麗なお姉さんメイク》は得意なんだけど《可愛い子メイク》とか苦手だから…』
そう言って、緋子ちゃんは少し照れたように苦笑いを見せた。
今日のメイク勝負の審判を務めるナオさんが、樋口と詩織の顔を何度かチラリと交互に見合う。
僕から見た《緋子ちゃんメイクの詩織》は…。
確かに。
僕がメイクした時よりも、ずっと大人っぽく綺麗に見えた。
全然違う…僕のメイクした詩織と。
『やっぱり《可愛い子メイク》のほうがいいのかな?絵里佳ちゃん。だって凄く可愛い。似合ってる』
緋子ちゃんはそう言って、樋口を喜ばせていた。
『だって、姫さまの《可愛い子メイク》は世界一ですから。あはは』
『私もそういうメイク、勉強し直そうかな…』
緋子ちゃんも、樋口と見合って笑い合っていた。
僕だってそうだ…。
《可愛い》のメイクだけじゃない。
《綺麗》のメイクもできるようにならないと。
詩織が女優になって、そういう《お姉さんメイク》が必要となる役柄の日が、必ず?ある…かもしれない。
勉強しよう…《お姉さん》メイク…。
濃いめの色やメリハリ、目元くっきり…唇の輪郭も赤く、はっきりと…か。
意外と難しそう…。
『うーん。これは…二人のメイクのタイプは全く別ね…どーうしようかしら…勝敗は』
悩んだ末…ナオさんは《両方優勝》という、ちょっと曖昧な結論を出して…この勝負は終わった…。
『これから、どうしよう…?』
詩織が、樋口や僕にそう訊くと…ナオさんが。
『せっかく綺麗にメイクしたんだし…外はちょっと小雪がちらついてて少し寒いけど…行ってこれば?』
…ってことで、僕と樋口と詩織の3人は、揃って瀬ヶ池へ出掛けることになった。
『わぁ…本当だ。小雪が舞ってる』
『ってか見て…瀬ヶ池の女の子たちがこんなに…きゃははは♪』
化粧品店《BlossoM.》の店の前には、どこから聞きつけたのか…僕や詩織を出待ちしていた、たくさんの瀬ヶ池の女の子達が…!
『詩織ちゃん金魚ちゃーん、待ってたー!』
『今日も素敵ー』
『私たちと一緒に瀬ヶ池行こー!』
『可愛い!本当にマジで大好き!!』
『…あれ?詩織ちゃんってメイク変えたの??』
店から街道へと一歩出て、詩織がいきなり…。
『みんなー。寒くなかったのー?こんなところで待っててー?』
そう訊くと、女の子たちは『寒かったー』『でも待ってたかったー』『一緒に瀬ヶ池に行きたかったから』…との返事が飛び交った。
『きゃははは…いいかな?金魚、絵里佳ちゃん?』
『私はどっちでも…』
『いいよー。詩織ちゃん。みーんな連れて瀬ヶ池行こっ!あははは』
約30人ほどの瀬ヶ池の女の子たちを連れて、僕ら3人が先頭に…瀬ヶ池の街へと向かった。
30人くらいの女の子たちは、入れ替わり立ち替わりしながら…また少しずつ増えながら…。
『…ねぇ詩織、次どこへ行く?』
『うーん…あ!秋良くんのお店また行こうよ!』
樋口は何も話せず目をキョロキョロ。
『昨日お手伝いアルバイトしたばっかなのに?』
『うん。今日はお客さんとして♪きゃははははー』
…約40人くらいの女の子を携えて、秋良さんのお店に行ったら…。
秋良さんから『客寄せ看板娘は嬉しいけどなぁ!…この人数!店に入りきらんだろ!お前ら《ハーメルンの笛吹き娘s》か!』
…って、ちょっと笑いながら怒られちゃってた…僕ら。
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