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G.F. - 大逆転編 -
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《T.S.S.D》のリーダーを務めているという、石田美希さんという子を待つ荒井さん。
まるでその子が来るのが待ち遠しいかのように、頭や肩を小さく左右に揺すったり…廊下を覗き込んだり、それで直ぐにまたこの控え室に戻ってきたり…そんなこんなで、ちょっと落ち着きがない様子。
「ひかりちゃん…ここ?この控え室?」
「はい!ここです。美希リーダー」
「はーい」
荒井さんが、ぱあっと明るく元気に笑ってみせた。
『やっと来たみたいだね!美希!』
ひかりという子は、廊下の野次馬衆の壁を掻き分けて、この控え室へと入ってきた。
『荒井さん!美希リーダーをお連れしました!』
『なぁに?美里ちゃん。私に何のご用?』
控え室にササッと入ってきた石田美希さんという子。
見た目は《凄く可愛い!》ではなくて《普通の女の子らと比べると、ちょっと可愛いぐらいの子》って感じ。
荒井さんは一度、ドレスを着た人形のように直立した石田美希さんと派手にハグをして、そして振り返って雫ちゃんと詩織を睨むように見た。
『美希ってさ、はや…何とかって街のこと、よく知ってるよね!』
『えぇ?はや…街?それって《瀬ヶ池》のこと?早瀬ヶ池』
『そう!それ!その早瀬ヶ池ってやつ!』
石田美希さんは軽く頷いた。
『うん。《よく…》ではないかも?だけど、私が今一番注目してる、私の好きな《お洒落で凄く可愛い子がたくさん集まる、憧れの素敵な街》だからねー。少しは』
石田さんのその一言を、言い終えるか終えないかのあいだに、荒井さんは石田さんと顔を見合わせながら、ゆっくりと雫ちゃんを指差していた。
『あの子、五十峯雫って子なんだけど…その早瀬ヶ池って街では有名らしいんだぁ。美希は聞いたことある?』
『えっ?』
石田さんは、荒井さんが差した指に釣られるかのように、ふと雫ちゃんを見た。
『五十…雫さん?有名?うーん。私は聞いたことないかも?』
「ほぉらね…ふふっ♪」
小さな声でそう言って笑って、したり顔で雫ちゃんや詩織…そして僕らを見眺める荒井さん…。
『早瀬ヶ池…っていうか、藤浦市で有名なのは、やっぱりなんといっても《伊藤鈴》ちゃん先輩だよねー。凄く可愛いし、とても優しいし、笑顔も素敵だし』
この子…僕らや鈴ちゃんとは全く違う事務所に所属してるのに、鈴ちゃんのことを《先輩》と呼ぶことに…僕はちょっとだけ違和感を感じた。
『ふぅん…他は?』
『…ほか?』
石田さんが、荒井さんの顔を不思議そうに見る。
『だから他にも、その街の有名人とかいないの?って』
『あー』
石田さんは両手をパチンと叩いて、キラキラと瞳を輝かせた。
『もちろんいるよ!金魚ちゃんと、彼女のパートナーの詩織ちゃんだよ!』
『えっ、美希!?今何て言…』
…ヤバっ!
僕は無意識に、彼女らに背を向けてしまった…!
この石田さん…そこまで知ってるって、本当に藤浦や瀬ヶ池のことをよく知ってる…凄い…って、僕は率直に思った。
『てかちょっと待って!!』
『…はぁ?』
詩織が急に、何気ない二人の会話に横槍を入れた。
そんな詩織を、荒井さんが睨むように見る。
『そこまでよく知ってるんだったら、あなた!何で雫ちゃんのことを知らないのよ!』
『えっ、あ…!!?』
僕は、はっきりと見てた。
詩織を見た石田さん…急に大きく目を開いて、口もぽかっと開いて…驚いた表情で詩織を見てる。
『あの…なに?あなた石田さんだっけ?去年の《G.F.アワード》の結果くらい調べてないの!?瀬ヶ池好きって言うくせに、アワードには興味ないっていうの!?』
『あー。それも本当は嘘なんじゃないの?だって美希が言ったでしょ。雫ちゃんなんて知らなーいって』
石田さんが答える前に勝手に、代わりにそう詩織に言い返した荒井さん。
けれど、それには詩織は何も言い返さなかった。
ただただ、詩織はじっと石田さんを見てる…彼女が、彼女の口でちゃんと答えるのを待ってるかのように。
『うそ…うそぉ!?えっ?どゆこと?私の目の前に!?…あ、あの…しお…ほん、本物ですかぁ!?ご本人!?というか…』
『えっ?あの…なに言ってんのか解んない…』
石田さんの急な態度の変化に、詩織はもっと怪しむように…更に石田さんをじーっと見てる。
そして石田さんも、突然の金縛りに遭ったかのように、ぴくりとも動かず…瞬きもせず、視線は詩織にずっと釘付け状態…。
『なに?急にどうしたんだよ?おい、美希…?』
『…。』
荒井さんも、石田さんを少し心配するような表情で見た。
『じゃあ言うけどね。雫ちゃんは本物よ!だから私の質問にちゃんと答えて!』
詩織のその大きな声に、やっと金縛りが解けたように、石田さんはハッ!とした表情で目をぱちくりさせた。
『あっ…えぇと…ですね。私の質問なんかより、私の感動よりも…そっちのほうが優先ですよね…ちゃんと答えなきゃ…』
石田さんは、両手で自身の胸を軽く何度か撫で回し…詩織に向かって、小さくペコリと頭を下げた。
『私…《T.S.S.D》というアイドルグループのリーダーをやってまして…12月に入ってから、グループメンバーのお正月特番の出演予定確認とか管理とか、今日のこの《バレンタインフェス》の準備とかで…』
丁寧な敬語で、詩織に説明してる石田さん。
…さっきの詩織の大きな声に、ちょっとビビった…?
『あの…普段は毎週欠かさず、1回は確認てるんです。ほ、本当です!えぇと…あれ?名前何だったかな…急にド忘れしちゃった…あの、あれ…《瀬ヶ池女子が集まる、スレッド式の藤浦市情報書き込みサイト》なんですけど…』
『…Colorful-Girls?』
『そう!それです!ありがとうございます!』
そして石田さんは『…だから年末年始は本当にリーダーとして忙しくて、今年の《G.F.アワード》のチェックができてませんでした。誠にごめんなさい!』と、詩織に…やっぱり礼儀正しい態度と言葉で謝った。
『ちょっと美希!なにを敵に向かって、ご丁寧に敬語で返事してんだよ!なぁ!』
『あ…あの、これは仕方ないというか…緊急的な特異な特別対応で…』
『はーぁ!?緊急ぅ!?特別対応ぉ!?』
詩織への石田さんの敬意ある態度に、怒り散らかす荒井さん…。
対して石田さんは『あはは…ごめんね…許して♪』と、両手を合わせて荒井さんに緩く謝ってた。
『ひかりちゃん!居る?ちょっと来て!』
『はい!私、廊下で待機してました!何でしょう!?』
廊下から、跳んでくるように石田さんの元へと来た、ひかりちゃんという女の子。
『ちょっと手伝って!』
『はい!何を!』
『去年の《G.F.アワード》の受賞結果を早急に検索して!』
『はい!どう調べましょう!?』
…。
僕も詩織たちも、《Kira♠︎m》所属の女の子たちも…全員が黙って、石田さんとひかりちゃんのやり取りを眺めてた…。
『藤浦情報書き込みサイト《カラフル》だよ!過去のスレッドを遡って、それを調べて!』
『はい!今調べます!』
サッと両手で何かを出した、ひかりちゃん!?
その両手で持ってるのは…iPhone!!
『ちょっ…ダメっ!!』
『心配しないでください…安心してください。大丈夫ですよ』
急に叫んだ詩織に、石田さんは両掌を見せて言った。
『《撮影禁止!》のことは知ってます。撮影はしません。ひかりちゃんに検索させるため…それだけです』
ドヤ顔でそう言った石田さん。
まるでその子が来るのが待ち遠しいかのように、頭や肩を小さく左右に揺すったり…廊下を覗き込んだり、それで直ぐにまたこの控え室に戻ってきたり…そんなこんなで、ちょっと落ち着きがない様子。
「ひかりちゃん…ここ?この控え室?」
「はい!ここです。美希リーダー」
「はーい」
荒井さんが、ぱあっと明るく元気に笑ってみせた。
『やっと来たみたいだね!美希!』
ひかりという子は、廊下の野次馬衆の壁を掻き分けて、この控え室へと入ってきた。
『荒井さん!美希リーダーをお連れしました!』
『なぁに?美里ちゃん。私に何のご用?』
控え室にササッと入ってきた石田美希さんという子。
見た目は《凄く可愛い!》ではなくて《普通の女の子らと比べると、ちょっと可愛いぐらいの子》って感じ。
荒井さんは一度、ドレスを着た人形のように直立した石田美希さんと派手にハグをして、そして振り返って雫ちゃんと詩織を睨むように見た。
『美希ってさ、はや…何とかって街のこと、よく知ってるよね!』
『えぇ?はや…街?それって《瀬ヶ池》のこと?早瀬ヶ池』
『そう!それ!その早瀬ヶ池ってやつ!』
石田美希さんは軽く頷いた。
『うん。《よく…》ではないかも?だけど、私が今一番注目してる、私の好きな《お洒落で凄く可愛い子がたくさん集まる、憧れの素敵な街》だからねー。少しは』
石田さんのその一言を、言い終えるか終えないかのあいだに、荒井さんは石田さんと顔を見合わせながら、ゆっくりと雫ちゃんを指差していた。
『あの子、五十峯雫って子なんだけど…その早瀬ヶ池って街では有名らしいんだぁ。美希は聞いたことある?』
『えっ?』
石田さんは、荒井さんが差した指に釣られるかのように、ふと雫ちゃんを見た。
『五十…雫さん?有名?うーん。私は聞いたことないかも?』
「ほぉらね…ふふっ♪」
小さな声でそう言って笑って、したり顔で雫ちゃんや詩織…そして僕らを見眺める荒井さん…。
『早瀬ヶ池…っていうか、藤浦市で有名なのは、やっぱりなんといっても《伊藤鈴》ちゃん先輩だよねー。凄く可愛いし、とても優しいし、笑顔も素敵だし』
この子…僕らや鈴ちゃんとは全く違う事務所に所属してるのに、鈴ちゃんのことを《先輩》と呼ぶことに…僕はちょっとだけ違和感を感じた。
『ふぅん…他は?』
『…ほか?』
石田さんが、荒井さんの顔を不思議そうに見る。
『だから他にも、その街の有名人とかいないの?って』
『あー』
石田さんは両手をパチンと叩いて、キラキラと瞳を輝かせた。
『もちろんいるよ!金魚ちゃんと、彼女のパートナーの詩織ちゃんだよ!』
『えっ、美希!?今何て言…』
…ヤバっ!
僕は無意識に、彼女らに背を向けてしまった…!
この石田さん…そこまで知ってるって、本当に藤浦や瀬ヶ池のことをよく知ってる…凄い…って、僕は率直に思った。
『てかちょっと待って!!』
『…はぁ?』
詩織が急に、何気ない二人の会話に横槍を入れた。
そんな詩織を、荒井さんが睨むように見る。
『そこまでよく知ってるんだったら、あなた!何で雫ちゃんのことを知らないのよ!』
『えっ、あ…!!?』
僕は、はっきりと見てた。
詩織を見た石田さん…急に大きく目を開いて、口もぽかっと開いて…驚いた表情で詩織を見てる。
『あの…なに?あなた石田さんだっけ?去年の《G.F.アワード》の結果くらい調べてないの!?瀬ヶ池好きって言うくせに、アワードには興味ないっていうの!?』
『あー。それも本当は嘘なんじゃないの?だって美希が言ったでしょ。雫ちゃんなんて知らなーいって』
石田さんが答える前に勝手に、代わりにそう詩織に言い返した荒井さん。
けれど、それには詩織は何も言い返さなかった。
ただただ、詩織はじっと石田さんを見てる…彼女が、彼女の口でちゃんと答えるのを待ってるかのように。
『うそ…うそぉ!?えっ?どゆこと?私の目の前に!?…あ、あの…しお…ほん、本物ですかぁ!?ご本人!?というか…』
『えっ?あの…なに言ってんのか解んない…』
石田さんの急な態度の変化に、詩織はもっと怪しむように…更に石田さんをじーっと見てる。
そして石田さんも、突然の金縛りに遭ったかのように、ぴくりとも動かず…瞬きもせず、視線は詩織にずっと釘付け状態…。
『なに?急にどうしたんだよ?おい、美希…?』
『…。』
荒井さんも、石田さんを少し心配するような表情で見た。
『じゃあ言うけどね。雫ちゃんは本物よ!だから私の質問にちゃんと答えて!』
詩織のその大きな声に、やっと金縛りが解けたように、石田さんはハッ!とした表情で目をぱちくりさせた。
『あっ…えぇと…ですね。私の質問なんかより、私の感動よりも…そっちのほうが優先ですよね…ちゃんと答えなきゃ…』
石田さんは、両手で自身の胸を軽く何度か撫で回し…詩織に向かって、小さくペコリと頭を下げた。
『私…《T.S.S.D》というアイドルグループのリーダーをやってまして…12月に入ってから、グループメンバーのお正月特番の出演予定確認とか管理とか、今日のこの《バレンタインフェス》の準備とかで…』
丁寧な敬語で、詩織に説明してる石田さん。
…さっきの詩織の大きな声に、ちょっとビビった…?
『あの…普段は毎週欠かさず、1回は確認てるんです。ほ、本当です!えぇと…あれ?名前何だったかな…急にド忘れしちゃった…あの、あれ…《瀬ヶ池女子が集まる、スレッド式の藤浦市情報書き込みサイト》なんですけど…』
『…Colorful-Girls?』
『そう!それです!ありがとうございます!』
そして石田さんは『…だから年末年始は本当にリーダーとして忙しくて、今年の《G.F.アワード》のチェックができてませんでした。誠にごめんなさい!』と、詩織に…やっぱり礼儀正しい態度と言葉で謝った。
『ちょっと美希!なにを敵に向かって、ご丁寧に敬語で返事してんだよ!なぁ!』
『あ…あの、これは仕方ないというか…緊急的な特異な特別対応で…』
『はーぁ!?緊急ぅ!?特別対応ぉ!?』
詩織への石田さんの敬意ある態度に、怒り散らかす荒井さん…。
対して石田さんは『あはは…ごめんね…許して♪』と、両手を合わせて荒井さんに緩く謝ってた。
『ひかりちゃん!居る?ちょっと来て!』
『はい!私、廊下で待機してました!何でしょう!?』
廊下から、跳んでくるように石田さんの元へと来た、ひかりちゃんという女の子。
『ちょっと手伝って!』
『はい!何を!』
『去年の《G.F.アワード》の受賞結果を早急に検索して!』
『はい!どう調べましょう!?』
…。
僕も詩織たちも、《Kira♠︎m》所属の女の子たちも…全員が黙って、石田さんとひかりちゃんのやり取りを眺めてた…。
『藤浦情報書き込みサイト《カラフル》だよ!過去のスレッドを遡って、それを調べて!』
『はい!今調べます!』
サッと両手で何かを出した、ひかりちゃん!?
その両手で持ってるのは…iPhone!!
『ちょっ…ダメっ!!』
『心配しないでください…安心してください。大丈夫ですよ』
急に叫んだ詩織に、石田さんは両掌を見せて言った。
『《撮影禁止!》のことは知ってます。撮影はしません。ひかりちゃんに検索させるため…それだけです』
ドヤ顔でそう言った石田さん。
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