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G.F. - 大逆転編 -

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まるで雫ちゃんを怪しみ疑うように、目を細めて雫ちゃんを睨みつけている藤川さん。

対して雫ちゃんは、そうやって睨みつけている藤川さんを、彼女よりは非力ながらも見詰め返していた。


『2番目の…何がいけないんですか…?』

『はぁ?…冗談でしょ?なに言ってんの?あなた頭大丈夫?』

『…。』


自身が雫ちゃんよりも優位にあるかのように、小さくニヤリと笑って見せる藤川さん。

雫ちゃんは下唇を軽く噛み、遂に黙り込んでしまった…。


『どうせ、あなたがどれだけ考えてても、永遠に分からないんだろうし…ってかその時間が無駄で勿体無いし。だから私が話して教えてあげるけど…こんな私の優しさに心から感謝しなさい!』

『…。』


藤川さんの雫ちゃんへの、そんな心無い言い方が…それを聞いてる僕でさえも…苛立ちや不快感を覚えてしまう…。

本当に僕の…僕らの嫌いなタイプの子だ…。


『あなたの目の前にいるのは誰?どういうアイドルグループなの?私たち《Kira♠︎m》所属のアイドルグループは、日本屈指のトップアイドルグループでしょ!』

『…。』


…《Kira♠︎m》所属の性悪なアイドルグループらが、日本のトップだとか…。

詩織たち《Peace prayer》のほうが、よっぽど《素敵なアイドル》してるって。


『…そんな頂点を極めた、うちらアイドルグループに…たかが《何でもない街で2番目》ってだけの子が?ほんとマジで!うちらをナメてんじゃないっての!うちらと勝負したいってんなら、それの1番の子を連れてきなさいよ!』




…ん?
一瞬…廊下からフラッシュが見えた…!?

僕が廊下をふと見ると、他のグループのアイドルらしい子が、この控え室を覗き込んでスマホで撮影してたらしい…!


「撮影はやめてください!データを消して!」

「あっ…あ…」

「データ消去ぽちっ!ご協力ありがとうございます!」

「あぁ…」



「撮影は駄目だよ!みんな撮影禁止のルールを守ってくれ!」



雫ちゃんが《Kira♠︎m》のアイドルの子たちと頑張って対決してくれてるあいだ…夕紀さんと池田さんは、野次馬のアイドルや関係者らを監視し制御してくれていた…。

夕紀さん、池田さん…ありがとうございます。



そしてその流れで、僕がふと詩織を見たとき…。

…!
視線が合った詩織の目が、僕に訴えていた。


《もう私黙ってられない!》
《私、雫ちゃんを助けに出るから!》


僕は黙って、詩織に頷いて見せた。

そして詩織は、僕に小さく微笑んで見せた。
それはたぶん《金魚はそのまま。待ってて》って意味だったんだと思う。

うん…任せたよ。詩織。






『ねぇ、待って!』


詩織が二歩出て、雫ちゃんの左隣に立った。


「頑張ったね。雫ちゃん。ありがとう…今からは二人でね。頑張ろう」

『お姉さま…!』


詩織が雫ちゃんに、囁くように小さくそう言ったのが聞こえた。


『はぁ?な…何で急にあなたが出てくるの!』


急な展開に、目を円くして驚いている様子の藤川さん。


『何言ってんの?当然でしょう!藤浦の早瀬ヶ池の街を《たかが何でもない街》なんて言われて、私が黙っていられるわけないじゃない!!』


吠えるような詩織の大きな声が、この控え室に響き渡った。

同時に、廊下でこの対決を野次馬しているアイドルや関係者たちも、大きくざわざわとざわめいていた。


『は…はぁ?し…詩織ちゃんが、な…なに言ってんの…ナメてん…』

『どっちがナメてるのよ!ナメてるのはあなたでしょ!早瀬ヶ池の街のことを、なんにも知らないくせに!!』

『詩織ちゃんだって!その街のこと何も…』

『はーぁ!?藤浦市や瀬ヶ池のことなら何でも知ってるわよ!!私だって雫ちゃんと同じ藤浦市出身で《瀬ヶ池女子》の一人なんだから!!』

『えぇ…』


一挙に形勢は覆され、今は詩織がこの控え室を統べているのは、誰が見たって判る状況だった。


『綺麗で!お洒落で!凄く可愛い!そんな何千人もの女の子たちが憧れて訪れる瀬ヶ池と…それと藤川市内で、2番目の女の子だってのがどれだけ凄いことなのか解らないの!?雫ちゃんは本当に!こんなに凄くて良い子なのに!』

『知んないよ!そんなこと!』


詩織のもの凄い剣幕とその勢いに、完全に腰が引けている藤川さん。


『だったら!知らないんなら黙っててよ!!』

『ねぇ…詩織ちゃん?もう少し落ち着こうよ…』


詩織をなだめるように、恐る恐るそう言った片山さん。

そんな片山さんを、詩織は冷静な視線でチラリと見た。


『(片山)桃香ちゃん…あなたはいつも冷静なのね。雫ちゃんへの訊き方も、話し方も。だけど…だからこそ私は、桃香ちゃんをちょっと怪しんで見てた…』

『えぇ…なんで…』

『…何を考え、雫ちゃんの何をさぐっていたのか…。だって所詮、あなたはの味方でしょ?向こうが仲間なんだし』

『そ、そんな…』


詩織の言葉に、少し落胆してるように見える片山さん…。


『じゃあ雫ちゃんに代わって教えてあげる。なんで雫ちゃんが去年のアワードの2番目なのか。なんで雫ちゃんがそれを説明できなかったのか…』


すっかり大人しくなってしまった藤川さん。

荒井さんも、キツい視線で詩織を睨んでいるけれど…手の出しようが判らず黙ってるしかない…って感じ。


『雫ちゃんはね、本当は去年のアワードに選ばれてたの!』

『ちょっ、何よそれ…?』

『けど…だけど!雫ちゃんは自分が凄く憧れてた子がいて、その子がエントリーされてないことを自ら指摘してアワードのやり直しを提案して…その子に譲るようにして、去年のアワードの2番で落ち着いたの!自分から、自分が今年の1番の子になることを辞退したの!!』


藤川さんは、詩織が今話したことに驚いてたけど…それよりも…。


「ねぇ…ちょっと桃香。はや…何とかって街のこと、知ってんでしょ?どういう街なの?そんなにマジで凄い街なの…?」

「そんなこと私に訊かれても。私だって美希からちょっと話を聞いてただけだもん…」

「あー。あのかぁ」


ボソボソと話合ってた藤川さんと片山さん…。




『どうせ、あなた達のことだから《自分から2番目に成り下がったとか。バカじゃないの!》って、雫ちゃんに言ってたでしょう?バカにして笑ってたでしょ!だから雫ちゃんは、黙っちゃって言えなかったの!そんな本当のことさえも!』


藤川さんと片山さんが、少し落ち着かなくそわそわした様子で、詩織の話を聞いていたなか…。


『ひかり…ねぇ、ひかり!居る!?』

「はい!私ここにいます!」


荒井さんが廊下に顔を出して、ひかり?って子を呼んでいる…?


『ちょっとリーダーの美希、呼んできて!』

「あ、はい!」

『急いでよ!』

「はい!」




『…ちょっ、何してるの?(荒井)美里ちゃん』


詩織も荒井さんの怪しい行動を、話しながら見ていたらしい。

ようやく荒井さんが振り返って、詩織を見て…ニヤッと笑った。


『ふふっ…待ってなよ。あなた達の言う【早瀬ヶ池何とかって街のオタク】してるグループリーダー、石田美希が来るから。あははっ』


急に、心地良さそうに笑って見せた荒井さん…。

石田美希さんって言ったら…確か《T.S.S.D》のリーダーの人…だったはず。


『あなた達の話が本当なのか、大嘘の作り話だったのか…すぐ分かっちゃうからね!あはははー』


荒井さんの右手の人差し指が詩織を…左手の指が雫ちゃんを指差した。


『ねぇ2人とも。「ごめんなさい…」するなら今のうち。今なら許してあげてもいいよ。だけどその瞬間に、この勝負の私たちの勝利が確定するけど。あははー』


詩織もニコッと笑って見せた。


『私たちが謝る?なんで?バカは休み休み言って!』


お互いに睨み合いを利かせる、詩織と荒井さん。

ところで雫ちゃんはというと…瞳をキラキラさせ、「ぉ…お姉さま…ステキ♪」って憧れるような目で、左隣に立つ詩織をじーっと見てた…。


『ふーん。謝らないんだぁ。私たちがその街のことを何も知らないと思って、そうやって盛大なホラを吹くから、こんな事になるんだよ!それまでせいぜい余裕ぶってな。そして、もし全部嘘だったって判明したら、ここで土下座して謝ってもらうから!あー!早く来てー。あの街オタクリーダーの美希ー。あははー。早くー』



















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