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G.F. - 大逆転編 -
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『…どう思う?』
お兄さんの1人が別のお兄さん達に、そう訊いた…?
『俺は…高1くらいに見えた』
『俺もそれぐらい…か、中3ぐらい』
彼らのその返答に、雫ちゃんは胸元で腕を組み、頬を膨らませ《ムッ!》としていた。
『あの!失礼じゃないですか!だから18歳って言ってるじゃないですか!いいんですよ!もう少し歳上のお姉さんに見えてても!』
『はぁ…』
『どう見たらお姉さんて…』
『…。』
ごめん…雫ちゃん。
もしかして…アンナさんやナオさん、YOSHIKAさんみたいな《クールで綺麗なお姉さん系》に憧れてる?
それは無理があるかも…。
雫ちゃんはどこからどう見たって、優羽ちゃんや千景ちゃんみたいなタイプ《清純無垢な可愛い妹系》なんだから。
ただそれが《他の誰よりもめちゃくちゃ可愛い!》ってだけで。
『あの…南野さん?』
『私だって!素敵なお姉さ…えっ?はい…?』
また1人のお兄さんが、雫ちゃんに声を掛けた。
『…なっ、なんですか?』
『このリストに《新人マネージャー》って書いてあるけど…』
『…新人マネージャー…?』
雫ちゃんは、そのお兄さんの瞳をじっと見た…。
『君さ…アイドルをマネージメントするよりも、君がマネージメントされたほうがいいよ』
『マネー…えっ?それはどういう…?』
じーっと見てる雫ちゃんに対し、お兄さんは少し眩しそうな表情で目を逸らしながら、雫ちゃんに一言言った。
『君…凄く可愛いから、君がアイドルやればいいと思うよ』
『そうそう!俺も思ってた。この子、凄ぇー可愛いのにマネージャー?…って』
『俺も。やっぱそうだよなー!勿体無いよな!』
お兄さん3人に囲まれ、『可愛い』『可愛い!』って、褒められまくっている雫ちゃん。
対して雫ちゃんは《当然ですよ!私なんですから。誰よりも美少女なのは》って…ちょっと誇らし気な反応?
…そして、なぜ金魚は《こっちの子も可愛い!》《メイク担当?アイドルしたほうがいいよ!》って、お兄さん達に囲まれ、絡まれなかったかというと…。
僕はこの《関係者専用入口》に入る直前に、度の入っていない《伊達眼鏡》を掛けて…大きな黒い不織布マスクをしていたから…。
つまり《顔を隠していた》から。
僕らがここで、お兄さん達の検問を受けていると…僕らの後に続くように、別のアイドルグループが入口へとやって来た。
『もう行っていいんじゃないですか?ほら、別のアイドルさん達が来たみたいですよ!』
雫ちゃんが、また急に不機嫌そうにそう言うと…。
『あぁ…!じゃ、控え室の番号は《14》です!どうぞ行ってください!』
お兄さん達は、次のアイドルグループへの対応に急いで向かっていった…ほっ。
『潜入、成功…だねッ♪』
『ですね。お姉さま』
『よし。じゃあ行こう!』
詩織と雫ちゃんと海音さんが、互いを見合って笑顔で大きく頷いた。
…やっと安心。
あとは《勝つ!》だけ。
『…で、お姉さま?南野夕紀さん…って誰なんですか?マネージャー?』
『うん。それはまた今度機会があったら。夕紀ちゃんのこと紹介するね』
…午前11時21分。
アイドルグループ《Peace prayer》のために用意された、番号《14》の控え室に入った。
ドアは《開き戸》タイプじゃなくて《引き戸》スライドタイプ。そして今は…どの部屋もドアは開きっ放しになっていた。
室内に設置されたロッカーに荷物を入れ、それぞれが椅子やソファーに腰を下ろし…座って一呼吸…。
…結構広い控え室。
部屋の真ん中にあるテーブルの上には、人数分のお弁当とペットボトルのお茶、それとお盆に上品な和菓子が用意されていた。
そして室内の奥の右壁面には、メイク用の鏡台が3基。
『ふぅ…。そういえば、私たちのリハ順、何時からだったっけ?』
リーダーの海音さんがそう訊くと…。
『私たちのリハーサルの順番は、11時40分からです』
『それと…グループ全員揃っての主催者挨拶は、午後1時10分からです』
…そう明日佳ちゃんと心夏ちゃんが教えてくれた。
『うん、ありがとう。入るの結局ギリギリだったかな』
『私、ちょっとお手洗い行ってくるね』
詩織がそう言って、ソファーから立ち上がった。
『じゃあ私も一緒に行きます』
『あ、だったら私も…』
『私たちも行きたいです』
『お手洗いにお供します』
『えっ、みんな行くの…?じゃあ…』
…結局、僕と池田さんと槙野さん、海音さんを残して他の全員がトイレへ…。
トイレから全員揃って戻ってきて、それぞれが改めて座って一息…。
…と思いきや…。
『《Peace prayer》のメンバーの皆さん、ステージリハーサルお願いしまーす』
イベント開催スタッフの女性が、メンバーを呼びに控え室へと入ってきた…。
『よし、みんな行こう』
『はーい』
『行きます』
『宜しくお願いします』
『お弁当早く食べたいな』
『リハ終わってからだよね』
メンバーのみんなが、明るく元気に…そして、ちょっと騒がしく控え室を出て行った…。
…えっ?
5分?6分?
それぐらいでもう帰ってきた《ピプレ》のメンバー。
『だってステージの広さとか、舞台に立ったときの観客席の見た目とか、音響とか、雰囲気とか…それと演奏スタッフさん達との挨拶とか。そういうの済ませてきただけだから』
…だから早く帰ってこれたんだとか。
『じゃあ、まずお弁当食べよう!それから衣装の着替え!』
『はーい。いただきまーす』
『いただきます』
『ご馳走になります』
『おっ!大っきなエビフライ!』
『お肉も入ってるよ!いい匂い…美味しそう…』
メンバーがお弁当を食べてるあいだも、廊下はスタッフさんやら他のアイドルグループたちが行き交って、バタバタと騒がしい…。
だから、ランチの時間ぐらいは落ち着いて…と、控え室の引き戸を池田さんが、そっと閉めてくれた…。
午後0時22分。
メンバーがお着替え開始。
池田さんと槙野さんは『僕らはちょっと、スタバでも行ってゆっくりしてくるよ…』と、控え室を出ていった。
雫ちゃんと…というより《僕は》というと…。
『あ、(控え室を)わざわざ出て行かなくていいよ。金魚ちゃん』
…えっ?海音さん??
『後ろ向いててください。できるだけ?こっち見ないでくださいね』
…そんなんでいいの!?優羽ちゃん!?
『信吾さんだったら…少しぐらいなら見られちゃってもいいかも。女装した姿がとても、凄く可愛いし』
いや駄目でしょ!千景ちゃん!
それとこれとは別だよ!
『だったらこの時間使って、雫ちゃんにメイクしてあげたら?金魚。どうせ私のメイクは、着替えが終わったあとなんだし』
詩織が僕に背を向けて、真白いセーターを脱ぎ…白い背肌を晒しながら…そう言った…。
いやいや…絶っ対、振り向くな…振り向くな!僕…。
『えっ?いいんですか!?金魚さま…メイク…』
そう言って、僕を見る雫ちゃん。
『うん。じゃあそうしようか。じゃあクレンジングからだね』
『やったぁ♪…金魚さまのあの可愛いメイク…久しぶりだし、嬉しい…』
…ちゃんとメイクに集中できるかな…僕。
女の子たち6人が服を脱ぎ、着替えてるその横で…ドキドキドキドキ。
鏡は…雫ちゃんだけを見ることにしよう…。
映ったメンバーらの後ろ姿は…肌は…絶対見ない!そう自身に誓って…。
メイクに集中…集中………。
…ドキドキ。
お兄さんの1人が別のお兄さん達に、そう訊いた…?
『俺は…高1くらいに見えた』
『俺もそれぐらい…か、中3ぐらい』
彼らのその返答に、雫ちゃんは胸元で腕を組み、頬を膨らませ《ムッ!》としていた。
『あの!失礼じゃないですか!だから18歳って言ってるじゃないですか!いいんですよ!もう少し歳上のお姉さんに見えてても!』
『はぁ…』
『どう見たらお姉さんて…』
『…。』
ごめん…雫ちゃん。
もしかして…アンナさんやナオさん、YOSHIKAさんみたいな《クールで綺麗なお姉さん系》に憧れてる?
それは無理があるかも…。
雫ちゃんはどこからどう見たって、優羽ちゃんや千景ちゃんみたいなタイプ《清純無垢な可愛い妹系》なんだから。
ただそれが《他の誰よりもめちゃくちゃ可愛い!》ってだけで。
『あの…南野さん?』
『私だって!素敵なお姉さ…えっ?はい…?』
また1人のお兄さんが、雫ちゃんに声を掛けた。
『…なっ、なんですか?』
『このリストに《新人マネージャー》って書いてあるけど…』
『…新人マネージャー…?』
雫ちゃんは、そのお兄さんの瞳をじっと見た…。
『君さ…アイドルをマネージメントするよりも、君がマネージメントされたほうがいいよ』
『マネー…えっ?それはどういう…?』
じーっと見てる雫ちゃんに対し、お兄さんは少し眩しそうな表情で目を逸らしながら、雫ちゃんに一言言った。
『君…凄く可愛いから、君がアイドルやればいいと思うよ』
『そうそう!俺も思ってた。この子、凄ぇー可愛いのにマネージャー?…って』
『俺も。やっぱそうだよなー!勿体無いよな!』
お兄さん3人に囲まれ、『可愛い』『可愛い!』って、褒められまくっている雫ちゃん。
対して雫ちゃんは《当然ですよ!私なんですから。誰よりも美少女なのは》って…ちょっと誇らし気な反応?
…そして、なぜ金魚は《こっちの子も可愛い!》《メイク担当?アイドルしたほうがいいよ!》って、お兄さん達に囲まれ、絡まれなかったかというと…。
僕はこの《関係者専用入口》に入る直前に、度の入っていない《伊達眼鏡》を掛けて…大きな黒い不織布マスクをしていたから…。
つまり《顔を隠していた》から。
僕らがここで、お兄さん達の検問を受けていると…僕らの後に続くように、別のアイドルグループが入口へとやって来た。
『もう行っていいんじゃないですか?ほら、別のアイドルさん達が来たみたいですよ!』
雫ちゃんが、また急に不機嫌そうにそう言うと…。
『あぁ…!じゃ、控え室の番号は《14》です!どうぞ行ってください!』
お兄さん達は、次のアイドルグループへの対応に急いで向かっていった…ほっ。
『潜入、成功…だねッ♪』
『ですね。お姉さま』
『よし。じゃあ行こう!』
詩織と雫ちゃんと海音さんが、互いを見合って笑顔で大きく頷いた。
…やっと安心。
あとは《勝つ!》だけ。
『…で、お姉さま?南野夕紀さん…って誰なんですか?マネージャー?』
『うん。それはまた今度機会があったら。夕紀ちゃんのこと紹介するね』
…午前11時21分。
アイドルグループ《Peace prayer》のために用意された、番号《14》の控え室に入った。
ドアは《開き戸》タイプじゃなくて《引き戸》スライドタイプ。そして今は…どの部屋もドアは開きっ放しになっていた。
室内に設置されたロッカーに荷物を入れ、それぞれが椅子やソファーに腰を下ろし…座って一呼吸…。
…結構広い控え室。
部屋の真ん中にあるテーブルの上には、人数分のお弁当とペットボトルのお茶、それとお盆に上品な和菓子が用意されていた。
そして室内の奥の右壁面には、メイク用の鏡台が3基。
『ふぅ…。そういえば、私たちのリハ順、何時からだったっけ?』
リーダーの海音さんがそう訊くと…。
『私たちのリハーサルの順番は、11時40分からです』
『それと…グループ全員揃っての主催者挨拶は、午後1時10分からです』
…そう明日佳ちゃんと心夏ちゃんが教えてくれた。
『うん、ありがとう。入るの結局ギリギリだったかな』
『私、ちょっとお手洗い行ってくるね』
詩織がそう言って、ソファーから立ち上がった。
『じゃあ私も一緒に行きます』
『あ、だったら私も…』
『私たちも行きたいです』
『お手洗いにお供します』
『えっ、みんな行くの…?じゃあ…』
…結局、僕と池田さんと槙野さん、海音さんを残して他の全員がトイレへ…。
トイレから全員揃って戻ってきて、それぞれが改めて座って一息…。
…と思いきや…。
『《Peace prayer》のメンバーの皆さん、ステージリハーサルお願いしまーす』
イベント開催スタッフの女性が、メンバーを呼びに控え室へと入ってきた…。
『よし、みんな行こう』
『はーい』
『行きます』
『宜しくお願いします』
『お弁当早く食べたいな』
『リハ終わってからだよね』
メンバーのみんなが、明るく元気に…そして、ちょっと騒がしく控え室を出て行った…。
…えっ?
5分?6分?
それぐらいでもう帰ってきた《ピプレ》のメンバー。
『だってステージの広さとか、舞台に立ったときの観客席の見た目とか、音響とか、雰囲気とか…それと演奏スタッフさん達との挨拶とか。そういうの済ませてきただけだから』
…だから早く帰ってこれたんだとか。
『じゃあ、まずお弁当食べよう!それから衣装の着替え!』
『はーい。いただきまーす』
『いただきます』
『ご馳走になります』
『おっ!大っきなエビフライ!』
『お肉も入ってるよ!いい匂い…美味しそう…』
メンバーがお弁当を食べてるあいだも、廊下はスタッフさんやら他のアイドルグループたちが行き交って、バタバタと騒がしい…。
だから、ランチの時間ぐらいは落ち着いて…と、控え室の引き戸を池田さんが、そっと閉めてくれた…。
午後0時22分。
メンバーがお着替え開始。
池田さんと槙野さんは『僕らはちょっと、スタバでも行ってゆっくりしてくるよ…』と、控え室を出ていった。
雫ちゃんと…というより《僕は》というと…。
『あ、(控え室を)わざわざ出て行かなくていいよ。金魚ちゃん』
…えっ?海音さん??
『後ろ向いててください。できるだけ?こっち見ないでくださいね』
…そんなんでいいの!?優羽ちゃん!?
『信吾さんだったら…少しぐらいなら見られちゃってもいいかも。女装した姿がとても、凄く可愛いし』
いや駄目でしょ!千景ちゃん!
それとこれとは別だよ!
『だったらこの時間使って、雫ちゃんにメイクしてあげたら?金魚。どうせ私のメイクは、着替えが終わったあとなんだし』
詩織が僕に背を向けて、真白いセーターを脱ぎ…白い背肌を晒しながら…そう言った…。
いやいや…絶っ対、振り向くな…振り向くな!僕…。
『えっ?いいんですか!?金魚さま…メイク…』
そう言って、僕を見る雫ちゃん。
『うん。じゃあそうしようか。じゃあクレンジングからだね』
『やったぁ♪…金魚さまのあの可愛いメイク…久しぶりだし、嬉しい…』
…ちゃんとメイクに集中できるかな…僕。
女の子たち6人が服を脱ぎ、着替えてるその横で…ドキドキドキドキ。
鏡は…雫ちゃんだけを見ることにしよう…。
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