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G.F. - 大逆転編 -

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…そして今、僕らは4階のトレーニングルームを出て、エレベーターの扉の前に立っている。


『本当に…さっきの話、僕から聞いたなんて言わないでくれよ』


池田さんが、エレベーターの《停止階表示》を見上げながら、振り返らずそう言った。


『言いませんよ。そんなこと…』


詩織も《停止階表示》を見上げたまま、そう返した。


『あぁ。頼むよ。詩織ちゃん』

『まさか…池田さんが《事務所が、女の子がいっぱいいる東京以外の大都市に引っ越しして、そこで可愛い子と出逢って結婚して…♪》なんて、えっちでふしだらな《純粋な少年の夢?》を語ってたなんて、私だって恥ずかしくてそんなの誰にも言…』

『詩織ちゃん?…本当に僕の夢聞いてた?全然違うから。それこそ絶対に誰にも話さな…』

『えっ?』
『…えっ?』


そしてようやく、池田さんと詩織はお互いを見合った。


《♪ポーン》

エレベーターが4階に到着。


『じゃあ…僕は2階で降りるから。君たちは…』

『1階で降りて、雫ちゃんをへご案内します』

『なるほど。了解』






《2階です。ドアが開きます》

2階で池田さんは一人降りた。


『じゃあまた。これで』

『ありがとうございました。池田さん』


エレベーターの扉が、ゆっくりと閉じ始めたとき…詩織が急に、エレベーターの《開放ボタン》を押した。


『池田さん!』

『えっ、あ…どした?』

『いつも…毎日、仕事が終わったあとに…女優に成りたいっていう私のために…ありがとう!!』


池田さんは、少し照れたように笑った。


『へへっ。そんなこと気にしなくてもいいんだよ。じゃ…お互い頑張ろう』


池田さんはまだ照れたまま、閉じていくエレベーターの扉に向かって、大きく手を振ってくれた…。
そして詩織も、そんな池田さんに小さく手を振り返した。

僕からも言いたい。
いつも詩織のために…ありがとうございます。池田さん…。






…1階のロビーにて…僕らと鈴ちゃんは一旦お別れ。


『私、詩織ちゃんも金魚ちゃんも大好きよ。けど今日は…そんな大好きな子がまた一人増えた』


その言葉に耐えられず…雫ちゃんがまた鈴ちゃんの胸へと飛び込んだ。


『鈴ちゃん好きー!私も大好き!』

『私もよ、雫ちゃん。これからも宜しくね。ありがとう…嬉しかった』


詩織も、凄く嬉しそうにウンウンと頷いてた。
そして、そんな詩織の横顔を見てた僕を振り向いて見て…詩織のその笑顔はとても温かくて優しかった。

…池田さんの夢に…あんな辛辣に触れてたときの…あの冷酷な笑顔とは打って変わって。


それにしても、少し心配だよね。
冴嶋芸能事務所の…引っ越し先かぁ…。






『…詩織さん。次はどこに行くんですか?』

『待ってて。今LINE電話するから…』


…僕は知ってる。
次はどこに行くのか。

それにまだ《…?》な表情の雫ちゃんの横顔…なんだか凄く可愛いな。


『…あ。もしもし?海音ちゃん…うん…そう、鈴ちゃんといたよ。今まで…うん…こっちはもう終わったの…今から向か…えっ?…うぅん…うん…うん…はーい…今から…うん。行きまーす♪…はーい…またあとでー…はーい…はーい。はーい♪…』


通話を済ませ、iPhoneをバッグにしまって詩織はニコリと笑った。


『じゃあ次は《堀内芸能事務所》へ行きましょう!』

『ほり…事務所?』

『だからまずは、雫ちゃんの《入場許可証》を智果さんに返さなきゃ…』






『裕香さーん』


…午後4時9分。
詩織は堀内芸能事務所のロビーの受付嬢さんである、裕香さんに手を振った。


『詩織ちゃん、どうしたの?今日の練習リハトレは遅番?』

『うぅん。午前はちょっと用があってー』


そう返事をしながら、詩織は小走りに駆けて受付のカウンターへと急いだ。


『そうなんだ…』

『でね、今日は見学の子を連れてきたの。だから…』

『あー。入場許可証ね。はーい、ちょっと待っててねー』


冴嶋プロダクションビルと同じく、やっぱり堀内芸能事務所ビルでも《部外入場者記入表》が差し出された…。


冴嶋プロダクションビルの受付の智果さんと、堀内芸能事務所ビルの受付の裕香さん…。
どっちが美人で可愛いか…っていうと…どっちも甲乙付け難い。

どっちも…ドキドキするぐらい美人なお姉さん。






『よぉし…っと。記入終ーわり。はーい、裕香さーん♪』

『ねぇ、可愛い子ね。《ピプレ》の新しいメンバーさんかな?』


詩織はえへへと笑った。


『裕香さん、じゃあちょっと行ってきまーす』

『うん。詩織ちゃんと可愛い子たち、またね』






冴嶋…ビルも堀内…ビルも各階はよく似てる。
それは、冴嶋プロダクションビルが、堀内芸能事務所ビルを参考に、真似て各階を決めたそうだから。

…ということで、このビルのトレーニングルームもまた、4階にある…。


『海音ちゃん、それにメンバーのみんなー。お待たせー』

『待ってたよー。詩織ちゃん。それと勝負に協力してくれる可愛い子ー』

『えっと、初めましてー。私は中原優羽でーす』

『私は氷上明日佳です…』
『そして私は氷上心夏です…』

『私は一番年下の…小林千景と言います』


ピプレのメンバーが雫ちゃんに挨拶して、お辞儀をしてくれた。


『あっ、あの…私は五十峯雫です。はっ初めまして!』


うん。偉い偉い。
雫ちゃんもメンバーのみんなにお辞儀して返した。


『こちらは…双子さんですか?』


その一言に素早く反応した明日佳ちゃんと心夏ちゃんが、お互いを見合った。

『いえ…私たち、見た目こそ似てるかもしれません。ですが…』
『…同い歳の従姉妹どうしなのです…よく双子と間違えられますが…』


…うん。本当によく間違えられる。
今のところほぼ100%の確率で。


『雫ちゃんは、ヘアアレンジが得意なの?』


優羽ちゃんが雫ちゃんが雫ちゃんにそう訊いた。


『何でそれを知ってるの?』

『うん。詩織から聞いたの。得意なんだよーって』

『そ…そうですか…』




『詩織、雫ちゃんは何歳なんですか?』

『うん。雫ちゃんはねー、今年高校を卒業する18さ…えっ?』


急に…雫ちゃん?
少し不機嫌そうに、雫ちゃんが…そう訊いた千景ちゃんと詩織の間に、それを遮るように仁王立ちで割って入った…?


『あなた…今、何って言いました?』

『…えっ?何って…?何歳なんですか?…ってとこ?』

『違います!そこじゃないです!それと…あなたもです!』


千景ちゃんをじっと見ていた雫ちゃんは…振り返って今度は優羽ちゃんも見た。


『えっ、私…何かあなたの気にさわること…言ったの?』


さすがに詩織も、雫ちゃんのこの急な態度の変化に不安な表情を見せた。


『雫ちゃん待って!ねぇ…急にどうしたの!?』


詩織のその言葉に、ようやく雫ちゃんは振り返って詩織を見た。




















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