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G.F. - 夢追娘編 -

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『おはようございます』

『あ、おはようございます。えぇと私、冴嶋プロダクションの池田と申しまして…本日は4階のレッスンルームの…』


池田さんはロビーの受付の綺麗なお姉さんと挨拶を交わし、入場許可証の申し入れを今している。


『…よし。入場許可申請が完了したから。行こうか』

『はい』
『行きまーす』


僕らはエレベーターへと向かう。


『裕香さーん、おはようございまーす』

『あ、えっ?詩織ちゃんのお連れ様だったの?』

『えへへっ。そうでーす♪』


詩織はというと…手を振ってピースして、当然のような顔パス感。
ほぼ毎日ここに来てるから。



『さぁ…下りてきたぞ。乗ろう』


僕らがエレベーターの昇降室に乗り込むと、詩織が…。


『あ!そうそう!』


…そう言って、パチンと手を叩いた。


『あのね金魚。昨夜ね、お風呂入ってたときに春華さんとLINEしてたんだけど…』

『あ…うん』


…えっ!?
春華さんに…赤ちゃん!?


『…うん。それでね、私…「《バレンタインフェス》が終わったら会いに行くね」って…「信吾と藤浦に帰るから」って、春華さんに言ってあるの』


詩織はLINEで、春華さんから《今私のお腹に、秋良くんの赤ちゃんがいます》との報告を聞いたらしい。
それで…僕も?まぁ、そのときは…うん。詩織と一緒に行くよ。

《バレンタインフェス》のあと…かぁ。
そのあとの詩織の仕事の予定を確認しておかないと。

それと、いつどうやって行くか…。


『出産の予定日はいつだい?…て訊いても、んまぁ…僕の知らない人の話だけど…』


そう言った池田さんを詩織はチラッと見て…そしてまた僕を見た。


『それで予定日は、お医者さんが「まだ分からない」って…らしいんだけど、9月の終わり頃になるのかなぁ…って』

『へぇ。そうなんだ』


詩織はふと、ちょっと見上げて…急に何かを思い出したかのように、ハッ!とした表情でまた僕を見た。


『ねぇ!信吾の免許の本試験って、いつだったっけ?』


《ドアが開きます…》

僕らはエレベーターを降りて、廊下へと出た。
今度は目指すレッスンルームへと歩き出す。


『一応…1月30日の予…』

『じゃあ、信吾のクルマで藤浦に帰れるよね!一緒に』


…それまでに、僕が市街運転に慣れられたらね…。


『そっかぁ。良かっ…ていうか待って!じゃあ早く買うクルマ決めなきゃ!』


…確かにそうかも?だけど…気が早すぎ。慌てすぎ。


『ねぇ待ってって詩織。まず仕事日と休日の予定確認もしてみないと…』

『あ…だよね。きゃはははーごめん。それじゃあ確認お願いね』

『うん』


クルマについては…そうだね。何とか間に合うようにやってみるよ。







…そして、僕らはレッスンルームの前に到着。
インストラクターの和田さんの声だけが、今はレッスンルームから漏れて聞こえる…。


『じゃあ…金魚はここで待ってて。私が先に入るから』

『うん』
『good luck!詩織ちゃん』


詩織がレッスンルームのドアをノックし、『失礼しまーす』と入っていく…。


「じゃあ…を連れてきたから…」

「「えーっ!」」


…メンバー全員の揃った驚きの声が聞こえた。


「早速、入ってもらうねー」

「「きゃーっ♪」」


メンバーの声が響くなか…詩織がドアから、僕らが待つ廊下へと顔を覗かせた。


『金魚、いいよ。入って。池田さんはもう少し、ここで待っててもらえますか?』

『うん。分かった』


…なんか久しぶりに、急にこの姿に緊張し始めたけど…大丈夫。行こう。
失礼します…。


レッスンルームに、僕が一歩入った瞬間から、室内にどよめくような『きゃーっ♪』『可愛いー♪』の声と、拍手の音。

僕は照れ臭そうに、そそそと歩いて…詩織の隣に立った。
メンバーは互いに寄り添い座って、詩織と僕と対面していた。

インストラクターの和田さんは?というと…少し離れたところに立っていて、僕を見て驚きつつ「すごーい」って言って…笑ってたし。


「えっ?本当に?マジで言ってる?信吾くん?だってめちゃくちゃ可愛いって!こんなに!!」
「私たちはまだ信じられてません…」
「はっきり言って、私たちよりずっと可愛いです…」
「ねぇヤバくないですか!?だって信吾さんですよ!存在が神様のイタズラ!?それにしても可愛い!!」
「本物の女の子の私たちより可愛…怖い怖い怖い怖ーい…!!」


あのぉ…メンバーの皆さん?全員で寄り添って小声で激しく感想言い合うの、止めてくれませんか…。


海音さん…マジで本当に僕なんですけど…。

明日佳ちゃんと心夏ちゃん…本当なんだから信じてって。
それに二人とは可愛さでは比較できないから。金魚は《幻》《女装》《つまり偽物》なんだから…。

優羽ちゃん…凄く褒めてくれるのは嬉しいんだけど…神様のイタズラだったのかな?僕の存在って…。

千景ちゃん…まず落ち着いて。そして怖がらないで…。


『えへへっ♪ね、可愛いでしょ?池川金魚。ふふっ♪』


詩織が上機嫌そうにそう言うと…不意に海音さんが立ち上がって…うわっ!!
近づいてきて、僕の目の前に立った…ってか、近い近い近い!!


『こんなに近くで見てるのに…まだ可愛い…信じられない。それにメイクが凄く丁寧で綺麗…』

『男の人なのに、こんなに可愛く女装できるなんて…』
『神秘的ですね…私たちもこんな可愛い顔になりたいです…』


ちょっ…明日佳ちゃんと心夏ちゃんまで!だから離れてって!息が触れそうなほど顔が近い!!


『私も近くで見てみたいな…ぇ?』
『待って優羽ちゃん!海音ちゃんも明日佳ちゃんも心夏ちゃんも!ちょっと金魚から離れて!』


優羽ちゃんまで立ち上がり、僕に近づいて来たところで…割り込んできた詩織の《待って!》が入ってきた。


『私も近くで見てみたかったなぁ…』
『私なんか怖くて立ってもない…』


た…助かったよ。ありがとう詩織。



メンバーのみんなは…《うん。異次元の可愛さ》《本物女子と比べるモノじゃない》《そもそも比べてはいけない危険な代物》と結論付けて?納得して…終わった?






『じゃあ…海音ちゃん達もやっと落ち着いてくれたみたいだから、計画ミニ会議を始めていい?』

『はーい』
『始めましょーう』
『打倒きらむアイドルメンバー』


こうして詩織が司会進行のようにこの場を仕切ってくれて、ようやくミニ会議が始まった…。

でも金魚は本当の《ピプレの幻の7人目のメンバー》には絶対ならない…なれないけど。





「…てか私、まだ感情が落ち着いてませーん」
「私もです…」
「私も…」
「私も、まだ心臓がドキドキしてまーす…♪」
「怖い怖い…」

















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