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G.F. - 夢追娘編 -
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YOSHIKAさんの目をじっと見る詩織。
そしてYOSHIKAさんは小さく驚いたかのように、少し動揺した面持ちで詩織を見て返した。
『詩織ちゃんは…こういう話を、事務所の誰かから聞いたことは…』
『一度もありません。私から訊いても、池田さんも…事務所の人の誰もたぶん…私たちには聞かせてもらえないお話だと思います』
『そうなんだ…』
YOSHIKAさんは一瞬、黙ってしまった…。
けれど詩織は、そんなYOSHIKAさんをじっと見たまま…強く、もう一度YOSHIKAさんに訊いた。
『やっぱり…《Kira♠︎m》なんですよね?ね?…ね?YOSHIKAさん』
それから黙って…しばらく視線を交わしていた二人…。
そして今度はYOSHIKAさんが、まるで何かを覚悟したかのように…詩織をじっと強く見て、小さく溜め息をついた。
『はぁ…隠してても仕方ないかぁ。そうよ。詩織ちゃんの言うとおり。その事務所っていうのは…《Starlight-Office Kira♠︎m》』
『きゃははは。やっぱりー』
YOSHIKAさんは詩織から視線を外し、上体ごと斜めを向いて店内の遠くを眺めた。
『ねぇ…お願い。これだけは約束して。事務所の人には絶対に【YOSHIKAから聞いた】ってことだけは言わないで』
詩織はようやくYOSHIKAさんから視線を外して…ゆっくりと目を閉じた。
『はーい。もちろんでーす。誰にも言いませーん』
そしてYOSHIKAさんは、また詩織を見た。
詩織もまた、にこりと笑って閉じていた目を開いて、YOSHIKAさんを見た。
『それと…なんで公貴くんが私に《女優なんて目指すな!》《女優はアイドルなんかより難しいんだ!》《演技なんか上手くなるな!》って、嫌なこと言うんだろう…って思ってたんですけど…あれは公貴くんの優しさだったのかなぁ?なんて私、今…』
『そうね。本当は凄く演技がしたいのに、それができない悔しさ…詩織ちゃんに同じような思いをさせたくないって優しさ…でも、それを上手く伝えられない言葉や態度の不器用さ。それが公貴…』
…と言い終わらないすぐに、YOSHIKAさんは…。
『あっ!公貴に今の話のことも、姉の私から聞いたとか言わないで!公貴って自分が《気違い屋》だとか《優しい奴》って知られちゃうの、もの凄く嫌う子だから!』
『きゃははは。はーい♪』
公貴くん…そうなんだ。
僕は別にいいと思うんだけどなぁ…。
それと…冴嶋社長や大槻専務執行役が、冴嶋プロダクションが…詩織が《本当はアイドルより女優に憧れている》ことを知りながら、すんなりと女優への道を歩ませてあげなかったのも…この《僕らには話せない秘密の理由》《芸能界の裏の話》があったからなのかも知れない。
このことが、前から僕は凄く気になってたんだ…。
でもようやく解決したのかな…?
YOSHIKAさんはまた、お鍋の具を幾つかを口に運んで食べて…ゴクリとビールを一口飲んだ…そのあと。
『詩織ちゃん、信吾くん。事務所が教えてくれない芸能界のことは、私が知ってる範囲内でだけど…私が教えてあげるからねー』
『えっ!いいのぉ!?』
『いいんですか!?』
今度はYOSHIKAさんが、僕らににっこりと笑って見せた。
『うん。だって誰も教えてくれないんでしょ?私はあなた達の味方だから。でも事務所には絶対に内緒だよ』
そして僕も詩織も、それに対してお礼を言ったか言ってないかのうちに…YOSHIKAさんは、また叫んだ。
『あーっ、そうそう!あと…うちの家族にも関わりのある《"日本芸能業団連盟協議会"と"全国芸能事務所公正取引監視会"との対立》の話とかもしたかったんだけど…』
『??』
『…?』
日本芸能…ナントカ?と全国芸能…ナントカ?の対立?
…えっ?何って?
YOSHIKAさんが、なんか…難しそうなことを今、言おうとしてた…?
YOSHIKAさんは、僕と詩織の顔を交互に見た。
『…今夜はもっと大事な、っていうか…二人に忠告しておきたい大事な話があったの!』
『って…いうのは?』
『何ですか…?』
僕は詩織と互いを見合った。
そしてYOSHIKさんの次の言葉を待つ…。
『信吾くん、マジでヤバいよ…!』
…えっ?
マジでヤバいって…?
『君のあの可愛い女装の子…《Kira♠︎m》が知っちゃってるよ!』
『えっ!!?』
ついつい僕も叫んでしまった。
それと同時ぐらいに、詩織も叫んだ。
『どういうことですか!?《きらむ》が知っちゃってるって!?』
YOSHIKAさんは言ったすぐに、今の言葉を言い直した。
『あ…ごめんなさい。《信吾くんが可愛く女装できることを知ってる》んじゃなくて、正しくは《詩織ちゃんにはもう1人、いつも一緒に可愛い女の子がいたんだけど…一緒にデビューしてない?どこ行った?なぜ隠してる?》って話』
あー。そういうことかぁ。
じゃあ僕の女装のことはバレてないんだ…。
…なんて、安心してられない!
そして詩織がまた1つ、YOSHIKAさんに質問を投げ掛けた。
『でも、なんで…YOSHIKAさんがそんな別事務所の《Kira♠︎m》の話を知ってるんですか…?』
YOSHIKAさんも、これには素直にウンと頷いて答えてくれた。
『えぇとね…たくさんの芸能事務所から敵対視されてる《Kira♠︎m》だけど…それでも幾つかの芸能事務所は《Kira♠︎m》に事業協力してたり、面と向かって対立したくないからって、嫌々付き合ってやり過ごしたりしてるの…』
…そんな芸能事務所の一つが、YOSHIKAさんの所属する《飯田プロダクション》なんだとか。
そして、《Kira♠︎m》所属のタレントには、何度かYOSHIKAさんと一緒にモデルの仕事をしたことのある、仲の良い女の子が1人いて…そのモデルの女の子のマネージャーさんから、取るに足らない話題のように聞いた話らしい。
『詩織ちゃん達…去年末に1度、《月刊文秋》の記者の《下村徹》って芸能記者に追われたこと、あったんじゃない?』
『…えっ、なんでそれを!!?』
なんだろう…急に僕の心臓の鼓動が、鼓膜に直接響くぐらいドキドキしだした…。
詩織と視線を合わせる…。
詩織も不安そうな表情…。
そしてYOSHIKAさんは小さく驚いたかのように、少し動揺した面持ちで詩織を見て返した。
『詩織ちゃんは…こういう話を、事務所の誰かから聞いたことは…』
『一度もありません。私から訊いても、池田さんも…事務所の人の誰もたぶん…私たちには聞かせてもらえないお話だと思います』
『そうなんだ…』
YOSHIKAさんは一瞬、黙ってしまった…。
けれど詩織は、そんなYOSHIKAさんをじっと見たまま…強く、もう一度YOSHIKAさんに訊いた。
『やっぱり…《Kira♠︎m》なんですよね?ね?…ね?YOSHIKAさん』
それから黙って…しばらく視線を交わしていた二人…。
そして今度はYOSHIKAさんが、まるで何かを覚悟したかのように…詩織をじっと強く見て、小さく溜め息をついた。
『はぁ…隠してても仕方ないかぁ。そうよ。詩織ちゃんの言うとおり。その事務所っていうのは…《Starlight-Office Kira♠︎m》』
『きゃははは。やっぱりー』
YOSHIKAさんは詩織から視線を外し、上体ごと斜めを向いて店内の遠くを眺めた。
『ねぇ…お願い。これだけは約束して。事務所の人には絶対に【YOSHIKAから聞いた】ってことだけは言わないで』
詩織はようやくYOSHIKAさんから視線を外して…ゆっくりと目を閉じた。
『はーい。もちろんでーす。誰にも言いませーん』
そしてYOSHIKAさんは、また詩織を見た。
詩織もまた、にこりと笑って閉じていた目を開いて、YOSHIKAさんを見た。
『それと…なんで公貴くんが私に《女優なんて目指すな!》《女優はアイドルなんかより難しいんだ!》《演技なんか上手くなるな!》って、嫌なこと言うんだろう…って思ってたんですけど…あれは公貴くんの優しさだったのかなぁ?なんて私、今…』
『そうね。本当は凄く演技がしたいのに、それができない悔しさ…詩織ちゃんに同じような思いをさせたくないって優しさ…でも、それを上手く伝えられない言葉や態度の不器用さ。それが公貴…』
…と言い終わらないすぐに、YOSHIKAさんは…。
『あっ!公貴に今の話のことも、姉の私から聞いたとか言わないで!公貴って自分が《気違い屋》だとか《優しい奴》って知られちゃうの、もの凄く嫌う子だから!』
『きゃははは。はーい♪』
公貴くん…そうなんだ。
僕は別にいいと思うんだけどなぁ…。
それと…冴嶋社長や大槻専務執行役が、冴嶋プロダクションが…詩織が《本当はアイドルより女優に憧れている》ことを知りながら、すんなりと女優への道を歩ませてあげなかったのも…この《僕らには話せない秘密の理由》《芸能界の裏の話》があったからなのかも知れない。
このことが、前から僕は凄く気になってたんだ…。
でもようやく解決したのかな…?
YOSHIKAさんはまた、お鍋の具を幾つかを口に運んで食べて…ゴクリとビールを一口飲んだ…そのあと。
『詩織ちゃん、信吾くん。事務所が教えてくれない芸能界のことは、私が知ってる範囲内でだけど…私が教えてあげるからねー』
『えっ!いいのぉ!?』
『いいんですか!?』
今度はYOSHIKAさんが、僕らににっこりと笑って見せた。
『うん。だって誰も教えてくれないんでしょ?私はあなた達の味方だから。でも事務所には絶対に内緒だよ』
そして僕も詩織も、それに対してお礼を言ったか言ってないかのうちに…YOSHIKAさんは、また叫んだ。
『あーっ、そうそう!あと…うちの家族にも関わりのある《"日本芸能業団連盟協議会"と"全国芸能事務所公正取引監視会"との対立》の話とかもしたかったんだけど…』
『??』
『…?』
日本芸能…ナントカ?と全国芸能…ナントカ?の対立?
…えっ?何って?
YOSHIKAさんが、なんか…難しそうなことを今、言おうとしてた…?
YOSHIKAさんは、僕と詩織の顔を交互に見た。
『…今夜はもっと大事な、っていうか…二人に忠告しておきたい大事な話があったの!』
『って…いうのは?』
『何ですか…?』
僕は詩織と互いを見合った。
そしてYOSHIKさんの次の言葉を待つ…。
『信吾くん、マジでヤバいよ…!』
…えっ?
マジでヤバいって…?
『君のあの可愛い女装の子…《Kira♠︎m》が知っちゃってるよ!』
『えっ!!?』
ついつい僕も叫んでしまった。
それと同時ぐらいに、詩織も叫んだ。
『どういうことですか!?《きらむ》が知っちゃってるって!?』
YOSHIKAさんは言ったすぐに、今の言葉を言い直した。
『あ…ごめんなさい。《信吾くんが可愛く女装できることを知ってる》んじゃなくて、正しくは《詩織ちゃんにはもう1人、いつも一緒に可愛い女の子がいたんだけど…一緒にデビューしてない?どこ行った?なぜ隠してる?》って話』
あー。そういうことかぁ。
じゃあ僕の女装のことはバレてないんだ…。
…なんて、安心してられない!
そして詩織がまた1つ、YOSHIKAさんに質問を投げ掛けた。
『でも、なんで…YOSHIKAさんがそんな別事務所の《Kira♠︎m》の話を知ってるんですか…?』
YOSHIKAさんも、これには素直にウンと頷いて答えてくれた。
『えぇとね…たくさんの芸能事務所から敵対視されてる《Kira♠︎m》だけど…それでも幾つかの芸能事務所は《Kira♠︎m》に事業協力してたり、面と向かって対立したくないからって、嫌々付き合ってやり過ごしたりしてるの…』
…そんな芸能事務所の一つが、YOSHIKAさんの所属する《飯田プロダクション》なんだとか。
そして、《Kira♠︎m》所属のタレントには、何度かYOSHIKAさんと一緒にモデルの仕事をしたことのある、仲の良い女の子が1人いて…そのモデルの女の子のマネージャーさんから、取るに足らない話題のように聞いた話らしい。
『詩織ちゃん達…去年末に1度、《月刊文秋》の記者の《下村徹》って芸能記者に追われたこと、あったんじゃない?』
『…えっ、なんでそれを!!?』
なんだろう…急に僕の心臓の鼓動が、鼓膜に直接響くぐらいドキドキしだした…。
詩織と視線を合わせる…。
詩織も不安そうな表情…。
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