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G.F. - 夢追娘編 -
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あの日のあの夜の、あの居酒屋での会話…。
4人席へと案内された僕ら。
YOSHIKAさんと夕紀さんは、ビールとお酒。
詩織は…お酒ダメ!って僕が詩織の飲酒を止めて、詩織はノンアルコールのピンクのフルーツカクテル。
僕はウーロン茶。
『公貴から聞いてるよ。演技がとても上手なんだって?』
『えっ!本当ですか!?』
急にキラキラとした瞳で、座ったまま背をピンと伸ばし、少し嬉しそうにYOSHIKAさんを見た。
「あ…マズかったかな。もしかしたら、公貴から"本人には絶対言うな!"って聞かされてたかも…」
『えっ?な、なんですか?急に何か言っ…』
YOSHIKAさんは少し慌てたように、詩織に答えた。
『いやいやいや…言ってない。えぇとね、公貴は演技の下手な子とは口喧嘩っていうか、言い合わないから』
『口喧嘩?言い合わない…?』
『あー!あー…えっとぉ。つまり…公貴が詩織ちゃんと仲良くしてるってことは、公貴が《認めてる》ってことよ』
「べっ別に…私と公貴くんは、仲良くなんて…」
『公貴は見てて分かり易いっていうか…自分が認めない、演技が下手な子とは口をきかない性格だから。女子男子に関わらず』
あー。YOSHIKAさん。
公貴くんから本当に色々と聞いてるみたい。
それと…。
いつも公貴くんと詩織が言い合ってるとき、陽凪さんが何の心配もなく二人の言い合いを笑顔で見てたのは…そういう事だったのかもしれない。
YOSHIKAさんはテーブルの上のアツアツお鍋から鶏つくねを菜箸で取り上げ…一旦取り皿に置いて、今度は自分の箸でパクッと口へと運んで食べた…モグモグ。
序でにシイタケも一つ摘み上げ、また口へと運んで…ビールも一口ゴクリ。
『詩織ちゃんはどう思う?公貴の性格』
『えっ?公貴くんですか?』
『うん。生意気でしょ。口が悪いっていうか』
『そんな…えっと、その…』
『あははは』
YOSHIKAさんは詩織に『あー。どうぞ遠慮なく食べながら話を聞いてー』って、詩織にも僕らにもお鍋を勧めてくれた…優しい。
詩織は『きゃはは。ありがとうございまーす♪』って、取り皿にお鍋の具を一つずつ取り出して、ふーふーと息を吹いて冷ましてから口へと運んだ…ニッコリ笑顔。
『でもね…公貴は気心は優しい奴なのよ。口はあれでも。精神年齢も高いっていうか、考え方なんかもうオトナだし。だから大目に見てやって』
詩織はモグモグ…コクリと飲み込み、少し不思議そうにYOSHIKAさんを見た。
『詩織ちゃん…公貴から《女優なんてやめとけ!》とかって言われたこと…ない?』
『あっ!あー…あります。あれはなんで…?』
YOSHIKAさんはまた『あはははは。やっぱりー?』と笑って、何かを納得したようにゆっくりと大きく頷いて見せた。
『詩織ちゃんは…女優って、どういう子がやれるって思う?』
『あー…のぉ…そうですね…』
YOSHIKAさんは、詩織が今言うだろう言葉を先に予想したかのように、更にそれを否定した言い方をした。
『決して全部が全部《演技が上手い子が女優をやれる》んじゃないからね!』
『えっ?どういうこと…ですか?』
急に、少し不安そうな表情に変わった詩織。
『それを話すためには…ウチの家族の話もしといたほうがいいかな…』
YOSHIKAさんの家族…。
永野家の話…?
《永野公貴くん》のお姉さんは《永野佳華》さん。
公貴くんは19歳。佳華さんは23歳。
この姉弟には更に兄がいて、その人の名前は永野誠人。29歳。
父は永野恭一。56歳。全国でも業界内でも名の知れたベテラン中のベテラン俳優さん。
母は永野貴美恵。49歳。今もまだ現役で時々女優業をしているらしい。
公貴くん家、家族丸ごと《芸能ファミリー》なんだ…凄いな。
『…あ、そうそう。冴嶋プロダクションに《浅見丈彦》さんっているでしょ?』
『あっ、はい!』
浅見さんと永野恭一さんは、卒業した大学が一緒の同級生で親友なんだとか。
へぇ…そうなんだ。
『…でも、お父様って《笠原恭一》ってお名前で俳優さんをしてますよね?』
『うん。よく知ってるね!詩織ちゃん』
『そんなぁ。お父様って超有名な俳優さんじゃないですかぁ』
永野公貴くんの父、笠原恭一さんは《劇雄エンターテイメント》という芸能事務所に所属。
『あの…その《劇雄エンターテイメント》という事務所は、どういう芸能事務所なんですか?』
『えっ、あー。そうだね…』
YOSHIKAさんの説明の途中だったんだけど、僕はそう訊いた。
『通称は《劇雄》って言われてるんだけど、所属するタレントの多くは俳優さん。だけど女優さんだっているよ』
多くの俳優や女優を抱える大手芸能事務所。
昔から《ドラマや映画の制作っていったらこの事務所》って言われていた。
だから大手の芸能事務所のなかで、ずっと一番だったんだって。
『一昔前なら"時代劇映画"とか…あと日本の"ヤクザ映画"とか"戦争映画"って言われる作品の多くに出演してた。《劇雄》所属の俳優さんたち…うちのお父さんもね』
ふむふむ…なるほどです。
『でも…あれから10年になるのかな…《劇雄》が大手芸能事務所のナンバーワンから転落したの』
えっ…転落…。
『なんでですか…?』
詩織が堪らなくなって、YOSHIKAさんに訊いた。
『うん…"とある団体"が芸能界に殴り込むように入ってきて、新しい芸能事務所を立ち上げて…あっという間にナンバーワンに登り詰めてしまったの…』
僕も詩織も…俯いて、もうすっかり黙り込んでしまった…。
『今や俳優業界も、アイドル業界も…すっかりその事務所に覇権を奪われてしまってる…』
『…。』
『…。』
YOSHIKAさんまで、少し気落ちしたように小さな声になってしまっ…。
『《きらむ》…ですよね?』
…えっ?
テーブルの上に視線を落としていた詩織は、また顔を上げ…何らかの判然たる確信を掴んだかのような力強い視線で…YOSHIKAさんを見た。
『YOSHIKAさん。その芸能事務所って…《Kira♠︎m》のことですよね…!!』
『詩織ちゃん…!』
4人席へと案内された僕ら。
YOSHIKAさんと夕紀さんは、ビールとお酒。
詩織は…お酒ダメ!って僕が詩織の飲酒を止めて、詩織はノンアルコールのピンクのフルーツカクテル。
僕はウーロン茶。
『公貴から聞いてるよ。演技がとても上手なんだって?』
『えっ!本当ですか!?』
急にキラキラとした瞳で、座ったまま背をピンと伸ばし、少し嬉しそうにYOSHIKAさんを見た。
「あ…マズかったかな。もしかしたら、公貴から"本人には絶対言うな!"って聞かされてたかも…」
『えっ?な、なんですか?急に何か言っ…』
YOSHIKAさんは少し慌てたように、詩織に答えた。
『いやいやいや…言ってない。えぇとね、公貴は演技の下手な子とは口喧嘩っていうか、言い合わないから』
『口喧嘩?言い合わない…?』
『あー!あー…えっとぉ。つまり…公貴が詩織ちゃんと仲良くしてるってことは、公貴が《認めてる》ってことよ』
「べっ別に…私と公貴くんは、仲良くなんて…」
『公貴は見てて分かり易いっていうか…自分が認めない、演技が下手な子とは口をきかない性格だから。女子男子に関わらず』
あー。YOSHIKAさん。
公貴くんから本当に色々と聞いてるみたい。
それと…。
いつも公貴くんと詩織が言い合ってるとき、陽凪さんが何の心配もなく二人の言い合いを笑顔で見てたのは…そういう事だったのかもしれない。
YOSHIKAさんはテーブルの上のアツアツお鍋から鶏つくねを菜箸で取り上げ…一旦取り皿に置いて、今度は自分の箸でパクッと口へと運んで食べた…モグモグ。
序でにシイタケも一つ摘み上げ、また口へと運んで…ビールも一口ゴクリ。
『詩織ちゃんはどう思う?公貴の性格』
『えっ?公貴くんですか?』
『うん。生意気でしょ。口が悪いっていうか』
『そんな…えっと、その…』
『あははは』
YOSHIKAさんは詩織に『あー。どうぞ遠慮なく食べながら話を聞いてー』って、詩織にも僕らにもお鍋を勧めてくれた…優しい。
詩織は『きゃはは。ありがとうございまーす♪』って、取り皿にお鍋の具を一つずつ取り出して、ふーふーと息を吹いて冷ましてから口へと運んだ…ニッコリ笑顔。
『でもね…公貴は気心は優しい奴なのよ。口はあれでも。精神年齢も高いっていうか、考え方なんかもうオトナだし。だから大目に見てやって』
詩織はモグモグ…コクリと飲み込み、少し不思議そうにYOSHIKAさんを見た。
『詩織ちゃん…公貴から《女優なんてやめとけ!》とかって言われたこと…ない?』
『あっ!あー…あります。あれはなんで…?』
YOSHIKAさんはまた『あはははは。やっぱりー?』と笑って、何かを納得したようにゆっくりと大きく頷いて見せた。
『詩織ちゃんは…女優って、どういう子がやれるって思う?』
『あー…のぉ…そうですね…』
YOSHIKAさんは、詩織が今言うだろう言葉を先に予想したかのように、更にそれを否定した言い方をした。
『決して全部が全部《演技が上手い子が女優をやれる》んじゃないからね!』
『えっ?どういうこと…ですか?』
急に、少し不安そうな表情に変わった詩織。
『それを話すためには…ウチの家族の話もしといたほうがいいかな…』
YOSHIKAさんの家族…。
永野家の話…?
《永野公貴くん》のお姉さんは《永野佳華》さん。
公貴くんは19歳。佳華さんは23歳。
この姉弟には更に兄がいて、その人の名前は永野誠人。29歳。
父は永野恭一。56歳。全国でも業界内でも名の知れたベテラン中のベテラン俳優さん。
母は永野貴美恵。49歳。今もまだ現役で時々女優業をしているらしい。
公貴くん家、家族丸ごと《芸能ファミリー》なんだ…凄いな。
『…あ、そうそう。冴嶋プロダクションに《浅見丈彦》さんっているでしょ?』
『あっ、はい!』
浅見さんと永野恭一さんは、卒業した大学が一緒の同級生で親友なんだとか。
へぇ…そうなんだ。
『…でも、お父様って《笠原恭一》ってお名前で俳優さんをしてますよね?』
『うん。よく知ってるね!詩織ちゃん』
『そんなぁ。お父様って超有名な俳優さんじゃないですかぁ』
永野公貴くんの父、笠原恭一さんは《劇雄エンターテイメント》という芸能事務所に所属。
『あの…その《劇雄エンターテイメント》という事務所は、どういう芸能事務所なんですか?』
『えっ、あー。そうだね…』
YOSHIKAさんの説明の途中だったんだけど、僕はそう訊いた。
『通称は《劇雄》って言われてるんだけど、所属するタレントの多くは俳優さん。だけど女優さんだっているよ』
多くの俳優や女優を抱える大手芸能事務所。
昔から《ドラマや映画の制作っていったらこの事務所》って言われていた。
だから大手の芸能事務所のなかで、ずっと一番だったんだって。
『一昔前なら"時代劇映画"とか…あと日本の"ヤクザ映画"とか"戦争映画"って言われる作品の多くに出演してた。《劇雄》所属の俳優さんたち…うちのお父さんもね』
ふむふむ…なるほどです。
『でも…あれから10年になるのかな…《劇雄》が大手芸能事務所のナンバーワンから転落したの』
えっ…転落…。
『なんでですか…?』
詩織が堪らなくなって、YOSHIKAさんに訊いた。
『うん…"とある団体"が芸能界に殴り込むように入ってきて、新しい芸能事務所を立ち上げて…あっという間にナンバーワンに登り詰めてしまったの…』
僕も詩織も…俯いて、もうすっかり黙り込んでしまった…。
『今や俳優業界も、アイドル業界も…すっかりその事務所に覇権を奪われてしまってる…』
『…。』
『…。』
YOSHIKAさんまで、少し気落ちしたように小さな声になってしまっ…。
『《きらむ》…ですよね?』
…えっ?
テーブルの上に視線を落としていた詩織は、また顔を上げ…何らかの判然たる確信を掴んだかのような力強い視線で…YOSHIKAさんを見た。
『YOSHIKAさん。その芸能事務所って…《Kira♠︎m》のことですよね…!!』
『詩織ちゃん…!』
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