83 / 162
G.F. - 夢追娘編 -
page.562
しおりを挟む
『…おい、栗原先輩!解ってんのか!?そいつの正体…悪魔だぞ!!』
公貴くんが陽凪さんに向かって叫んだ。
陽凪さんは雅季さんに寄り添っていた。
『うん、解ってる。だけど私…やっぱり…彼のことを、もう…』
『お前の負けだよ。山岸裕也。僕の魔法に掛かった彼女は、もう僕の虜さ…ハハハハ』
雅季さんが陽凪さんの肩を抱き、公貴を指差して嘲笑いだした。
『なぁ…頼むよ!覚ましてくれよ!栗原先輩!俺、俺…先輩のことが!前から好きだったんだよ!!』
『…えっ?ちょっ…急に何を…山岸くん!?』
公貴くんが陽凪さんに向かって腕を伸ばす。
『だから!そいつから離れて、戻って来てくれ!!先輩!早く!』
『えっ、そんな…私、ど…どうすれば…』
『まさか…?魔法が解けだしただと…!?』
…次の《演技勝負》の最中。
ジャンルは【バラエティ寄りのファンタジー系学園恋愛ドラマ】らしい…って言われても、僕はよく解らないけど。
でも、詩織とみかなちゃんは、その演技風景に釘付けだった。
『ぐあぁぁーっ!!お…お前…その聖なる弓矢を…どこで手に…』
…んー。
やっぱり僕はよく解らない。
けど、3人の演技の迫力と臨場感は、何となく凄く感じられた。
僕にはあんな迫真の演技とか、『じゃあお前がやってみろ』と言われても…できないけど。
『…やっぱり俺ももう31だから、学生役とかもうキツいな…』
『うん。私も。私たちはどちらかというと、生徒役よりも教員役寄りだもんね。年齢的に』
『ってか、バラエティ系とかパロディ系のドラマとか俺らには、たぶん合わないんだよ』
『まぁ…だな。公貴。確かに』
雅季さんと陽凪さんは、お互いを見合って苦笑いしてた。
公貴くんは、少し疲れた表情を見せていた。
『でも凄かったです!やっぱりプロの演技!って感じで感動しました!パチパチパチー♪』
スッと立ち上がった詩織は拍手とともに、称賛する言葉を3人に送っていた。
『よーし。じゃあここで…』
浅見さんが立ち上がって、僕らを順に見て…最後に詩織を見た。
『…詩織ちゃん。君もどれくらい演技ができるのか、僕らに見せてくれないかい?』
『えっ!?わっ…私…ですか?』
浅見さんは優しく微笑みながら、詩織に頷いて見せた。
そして詩織は突然のことに、少し落ち着きを失って戸惑いの様子であたふたしてた。
『君は去年の12月、皐月理事長が校長を務める《タレント養成スクール》に5日間行ってきたそうじゃないか』
『はい…でもあの時は私、アイドルのレッスン体験として…』
『けど役者のレッスンも受けてきたんだろう…?』
浅見さんのその一言に、詩織は何か諦めがついたように…ふと落ち着きを取り戻した。
『浅見さん…演技のレッスン体験を受けたって言っても…2日だけですよ』
浅見さんは、戸惑う詩織にまたニコリと笑顔を見せながら、ウンと一度大きく頷いた。
『僕はね…高須賀人事部長から、ちらっと聞いたんだよ。皐月理事長が冴嶋社長に《詩織ちゃんは絶対に、アイドルじゃなく女優の道を進ませるべき》って、言ったんだって話をね』
『あっ、あ…でも!』
『うん。解ってるよ。大槻専務取締役だろう?』
詩織は『…はい』と答える代わりに、悩み苦しむような表情で、小さく頷いた。
…大槻専務取締役は、子役経験も演劇部の所属もなかった詩織に『君が女優になるのは難しい』って、ハッキリと言った。
『まずはアイドルから…』なんて言い方をしてたけど…たぶんそれを許してはくれないんだろう。
大槻専務取締役に詩織が『女優への道を進ませてください!』って願い出ても…。
冴嶋社長も、大槻専務取締役のその考えというか判断に、渋々ながらも賛同したふうだったし。
『…僕はね、今まで会社の方針に何一つ逆らわず、所属するタレントたちを指導し育ててきた。そりゃあ何十人もね』
けど、確か前に…浅見さんは『役者を指導するのは僕はできるけど、アイドルはちょっと…なぁ』って言ってた。
『けどね、会社には申し訳ないが…今回ばかりは一言物申したい気分なんだ』
詩織の肩を、浅見さんがポンと叩いた。
『子役経験が無いからって何だい?演劇部じゃなかったからって…だからどうした?』
浅見さんが派手にワハハと笑った。
『あの皐月理事長が見抜いたんだ。詩織ちゃんの演技力とその可能性を。絶対女優にさせるべき!ってね』
『…で、でも…』
『自信を持って。君の成りたい本心は何処にあるんだい?アイドルかい?違うだろう?』
なかなか『はい!』と言わない詩織。
それを見兼ねてか…公貴くんが詩織を睨むように見た。
『おい詩織。いいから難しいことなんか何も考えずやってみろよ…演技』
『…えっ』
『見せてみろよ。皐月理事長とやらが見抜いたとかいう、お前の演技力ってのを。俺らに』
詩織が怯えるような目で、公貴くんをじっと見返す…。
『やってみたら?詩織ちゃん。間違えたって失敗したって、私たちは詩織ちゃんを絶対に笑ったりしないから』
陽凪さんも優しく、詩織に笑顔でそう言った。
『軽い気持ちでいいよ。遊びと思えばいい。ゆっくり落ち着いてやってみよう』
雅季さんも詩織を応援の言葉を詩織に送ったあと…詩織は。
『…信吾ぉ、どぉしよぉ…』
僕は、詩織に『頑張ろう』の代わりの笑顔を送ることしかできなかった。
けど、僕も信じてる。詩織ならできる。
きっと詩織の演技を見て、浅見さんも陽凪さんも…公貴くんも絶対に驚くはずだよ!
詩織の凄い演技力で、ビックリさせてやろうよ!
このプロの俳優のみんなを!
だから詩織!頑張ろう!
『やろうよ!詩織ちゃん!私だって応援してるよ!』
最後に…木橋みかなちゃんも瞳をキラキラと輝かせながら、大きな声で詩織にそう言ってくれた。
みかなちゃんの満面の笑顔に釣られたのか、緊張した詩織の表情も少し緩んで…ほんの一瞬だけ笑って見せた。
『えっと…じゃあ…私…』
公貴くんが陽凪さんに向かって叫んだ。
陽凪さんは雅季さんに寄り添っていた。
『うん、解ってる。だけど私…やっぱり…彼のことを、もう…』
『お前の負けだよ。山岸裕也。僕の魔法に掛かった彼女は、もう僕の虜さ…ハハハハ』
雅季さんが陽凪さんの肩を抱き、公貴を指差して嘲笑いだした。
『なぁ…頼むよ!覚ましてくれよ!栗原先輩!俺、俺…先輩のことが!前から好きだったんだよ!!』
『…えっ?ちょっ…急に何を…山岸くん!?』
公貴くんが陽凪さんに向かって腕を伸ばす。
『だから!そいつから離れて、戻って来てくれ!!先輩!早く!』
『えっ、そんな…私、ど…どうすれば…』
『まさか…?魔法が解けだしただと…!?』
…次の《演技勝負》の最中。
ジャンルは【バラエティ寄りのファンタジー系学園恋愛ドラマ】らしい…って言われても、僕はよく解らないけど。
でも、詩織とみかなちゃんは、その演技風景に釘付けだった。
『ぐあぁぁーっ!!お…お前…その聖なる弓矢を…どこで手に…』
…んー。
やっぱり僕はよく解らない。
けど、3人の演技の迫力と臨場感は、何となく凄く感じられた。
僕にはあんな迫真の演技とか、『じゃあお前がやってみろ』と言われても…できないけど。
『…やっぱり俺ももう31だから、学生役とかもうキツいな…』
『うん。私も。私たちはどちらかというと、生徒役よりも教員役寄りだもんね。年齢的に』
『ってか、バラエティ系とかパロディ系のドラマとか俺らには、たぶん合わないんだよ』
『まぁ…だな。公貴。確かに』
雅季さんと陽凪さんは、お互いを見合って苦笑いしてた。
公貴くんは、少し疲れた表情を見せていた。
『でも凄かったです!やっぱりプロの演技!って感じで感動しました!パチパチパチー♪』
スッと立ち上がった詩織は拍手とともに、称賛する言葉を3人に送っていた。
『よーし。じゃあここで…』
浅見さんが立ち上がって、僕らを順に見て…最後に詩織を見た。
『…詩織ちゃん。君もどれくらい演技ができるのか、僕らに見せてくれないかい?』
『えっ!?わっ…私…ですか?』
浅見さんは優しく微笑みながら、詩織に頷いて見せた。
そして詩織は突然のことに、少し落ち着きを失って戸惑いの様子であたふたしてた。
『君は去年の12月、皐月理事長が校長を務める《タレント養成スクール》に5日間行ってきたそうじゃないか』
『はい…でもあの時は私、アイドルのレッスン体験として…』
『けど役者のレッスンも受けてきたんだろう…?』
浅見さんのその一言に、詩織は何か諦めがついたように…ふと落ち着きを取り戻した。
『浅見さん…演技のレッスン体験を受けたって言っても…2日だけですよ』
浅見さんは、戸惑う詩織にまたニコリと笑顔を見せながら、ウンと一度大きく頷いた。
『僕はね…高須賀人事部長から、ちらっと聞いたんだよ。皐月理事長が冴嶋社長に《詩織ちゃんは絶対に、アイドルじゃなく女優の道を進ませるべき》って、言ったんだって話をね』
『あっ、あ…でも!』
『うん。解ってるよ。大槻専務取締役だろう?』
詩織は『…はい』と答える代わりに、悩み苦しむような表情で、小さく頷いた。
…大槻専務取締役は、子役経験も演劇部の所属もなかった詩織に『君が女優になるのは難しい』って、ハッキリと言った。
『まずはアイドルから…』なんて言い方をしてたけど…たぶんそれを許してはくれないんだろう。
大槻専務取締役に詩織が『女優への道を進ませてください!』って願い出ても…。
冴嶋社長も、大槻専務取締役のその考えというか判断に、渋々ながらも賛同したふうだったし。
『…僕はね、今まで会社の方針に何一つ逆らわず、所属するタレントたちを指導し育ててきた。そりゃあ何十人もね』
けど、確か前に…浅見さんは『役者を指導するのは僕はできるけど、アイドルはちょっと…なぁ』って言ってた。
『けどね、会社には申し訳ないが…今回ばかりは一言物申したい気分なんだ』
詩織の肩を、浅見さんがポンと叩いた。
『子役経験が無いからって何だい?演劇部じゃなかったからって…だからどうした?』
浅見さんが派手にワハハと笑った。
『あの皐月理事長が見抜いたんだ。詩織ちゃんの演技力とその可能性を。絶対女優にさせるべき!ってね』
『…で、でも…』
『自信を持って。君の成りたい本心は何処にあるんだい?アイドルかい?違うだろう?』
なかなか『はい!』と言わない詩織。
それを見兼ねてか…公貴くんが詩織を睨むように見た。
『おい詩織。いいから難しいことなんか何も考えずやってみろよ…演技』
『…えっ』
『見せてみろよ。皐月理事長とやらが見抜いたとかいう、お前の演技力ってのを。俺らに』
詩織が怯えるような目で、公貴くんをじっと見返す…。
『やってみたら?詩織ちゃん。間違えたって失敗したって、私たちは詩織ちゃんを絶対に笑ったりしないから』
陽凪さんも優しく、詩織に笑顔でそう言った。
『軽い気持ちでいいよ。遊びと思えばいい。ゆっくり落ち着いてやってみよう』
雅季さんも詩織を応援の言葉を詩織に送ったあと…詩織は。
『…信吾ぉ、どぉしよぉ…』
僕は、詩織に『頑張ろう』の代わりの笑顔を送ることしかできなかった。
けど、僕も信じてる。詩織ならできる。
きっと詩織の演技を見て、浅見さんも陽凪さんも…公貴くんも絶対に驚くはずだよ!
詩織の凄い演技力で、ビックリさせてやろうよ!
このプロの俳優のみんなを!
だから詩織!頑張ろう!
『やろうよ!詩織ちゃん!私だって応援してるよ!』
最後に…木橋みかなちゃんも瞳をキラキラと輝かせながら、大きな声で詩織にそう言ってくれた。
みかなちゃんの満面の笑顔に釣られたのか、緊張した詩織の表情も少し緩んで…ほんの一瞬だけ笑って見せた。
『えっと…じゃあ…私…』
2
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
失恋少女と狐の見廻り
紺乃未色(こんのみいろ)
キャラ文芸
失恋中の高校生、彩羽(いろは)の前にあらわれたのは、神の遣いである「千影之狐(ちかげのきつね)」だった。「協力すれば恋の願いを神へ届ける」という約束のもと、彩羽はとある旅館にスタッフとして潜り込み、「魂を盗る、人ならざる者」の調査を手伝うことに。
人生初のアルバイトにあたふたしながらも、奮闘する彩羽。そんな彼女に対して「面白い」と興味を抱く千影之狐。
一人と一匹は無事に奇妙な事件を解決できるのか?
不可思議でどこか妖しい「失恋からはじまる和風ファンタジー」
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
化想操術師の日常
茶野森かのこ
キャラ文芸
たった一つの線で、世界が変わる。
化想操術師という仕事がある。
一般的には知られていないが、化想は誰にでも起きる可能性のある現象で、悲しみや苦しみが心に抱えきれなくなった時、人は無意識の内に化想と呼ばれるものを体の外に生み出してしまう。それは、空間や物や生き物と、その人の心を占めるものである為、様々だ。
化想操術師とは、頭の中に思い描いたものを、その指先を通して、現実に生み出す事が出来る力を持つ人達の事。本来なら無意識でしか出せない化想を、意識的に操る事が出来た。
クズミ化想社は、そんな化想に苦しむ人々に寄り添い、救う仕事をしている。
社長である九頭見志乃歩は、自身も化想を扱いながら、化想患者限定でカウンセラーをしている。
社員は自身を含めて四名。
九頭見野雪という少年は、化想を生み出す能力に長けていた。志乃歩の養子に入っている。
常に無表情であるが、それは感情を失わせるような過去があったからだ。それでも、志乃歩との出会いによって、その心はいつも誰かに寄り添おうとしている、優しい少年だ。
他に、志乃歩の秘書でもある黒兎、口は悪いが料理の腕前はピカイチの姫子、野雪が生み出した巨大な犬の化想のシロ。彼らは、山の中にある洋館で、賑やかに共同生活を送っていた。
その洋館に、新たな住人が加わった。
記憶を失った少女、たま子。化想が扱える彼女は、記憶が戻るまでの間、野雪達と共に過ごす事となった。
だが、記憶を失くしたたま子には、ある目的があった。
たま子はクズミ化想社の一人として、志乃歩や野雪と共に、化想を出してしまった人々の様々な思いに触れていく。
壊れた友情で海に閉じこもる少年、自分への後悔に復讐に走る女性、絵を描く度に化想を出してしまう少年。
化想操術の古い歴史を持つ、阿木之亥という家の人々、重ねた野雪の過去、初めて出来た好きなもの、焦がれた自由、犠牲にしても守らなきゃいけないもの。
野雪とたま子、化想を取り巻く彼らのお話です。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる