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G.F. - 夢追娘編 -
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【岡本詩織】
私は…去年末の12月30日の土曜日に、藤浦市の嘉久見大通り沿いにある《パステル・スクェア81》で開催された《G.F.アワード/2023》で起こった、"ノミネートもされてなかったから金魚不在なのに、でも金魚がアワードを受賞したあの驚きの事件"について、説明する鈴ちゃんとそれを小さく頷きながら聞いてる信吾の、二人の横顔をゆっくりと交互に見ていました。
鈴ちゃんは毎年《G.F.アワード》には特別審査委員長として呼ばれて参加しています。
…うーん。何回目だったかな…?
えぇと…確か…あっ。
たぶん3回目か4回目くらいだったと思います。
この驚き事件については、私は春華さんから聞きました。そのあとに鮎美ちゃんと鈴ちゃんからも聞きました。
私、お風呂の湯船であったかポカポカ気持ちいぃ…してる時は、だいたい誰かとiPhoneで LINEしてるんです。
さっき言った春華さんとか鈴ちゃんとか、ピプレのメンバーとか、高校ん時の友達とか、他にも…。
あと、時々アンナさんとか…たまーにお母さんとか菊江さんとか。
そんなこんなでお風呂してたその時に、それを信吾より先に聞いて知りました。
ねぇ、聞いて聞いて。
あの日の観客の女の子たち、全然ネット投票してくれなかったらしいの。
何で?って?
それを私が今から私が説明しようとしてたんです!
けどそんな少ない投票だったけど、それでもアワードに選ばれた…えぇと、ナントカ雫ちゃんって子が、司会やってた男の人から『一言…』ってマイクを渡された時、雫ちゃんが何て言ったと思う?
『私…納得いきません』って。『何で金魚ちゃんはノミネートされてないんですか?』って言ったんだって。
『じゃないと私、素直に受賞を受け入れられません』って。
そしたら審査員の皆さんがステージの下に集まって、ヒソヒソと何か話し合いを始めたんだって。
会場の女の子たちからも『金魚ちゃんを入れてもう一回投票し直しして!』『今年のアワード受賞は金魚ちゃんでしょ絶対!じゃないとおかしい!』『まさか知らないの!?金魚ちゃんのこと!そんなんでアワードやるって変だよ!』って。ブーイングの声。
そしたら、頭ピカピカツルリンリン♪の小太りのオジさんがステージに上がってきて…。
『…えー。ただ今、我々審査員により協議しましたところ…』
ステージ上で、そのオジさんが言った『池川金魚さんは、今藤浦市は元より美波県からも転出し、東京都にいるらしいのでノミネートから削除したとのことで』の言葉に、女の子たちはもっとキレて怒りだしたって。
『そのルールは《専属モデルのルール》だってば!そんなことも知らないの!?』『ルールも解ってないのにG.F.アワードの審査員なんかするなー!』って。
そしたらそのオジさん、ステージ上で怖がってビクビクしながら、また余計な一言を…ふふっ。
『け、けど…池川金魚さんは実は女装した男だったとかで…』
『今年デビューした子の中で一番可愛い子を選ぶのがG.F.アワードだろー!最低だぞーこのハゲー!!』
『最っ低ー!!この街で一番可愛い金魚ちゃんなんだから!金魚ちゃんを女装とか言うなー!!』
『金魚ちゃんは本物の女子の私なんかより何百倍も可愛いのに!ノミネートしないって馬鹿すぎ!このじじー最低ー!!』
きゃはははははー!!
私も一緒に叫びたかったなー。『見ろーやっぱり金魚が一番!絶対優勝でしょー!このツルリンリンのおじじ様ー♪』って。
そんな、女の子たちの制御不能な混乱した状況を見兼ねて…鈴ちゃんがステージの真ん中で、一言こう言いました。
『はーい。止めてー。女の子たちー。はーい。はーい…みんな一旦落ち着こう?…ね。じゃあ私から提案。こうしましょ…』
鈴ちゃんの《金魚ちゃんを含めた26人で、もう一回ネット投票のやり直し》の解決提案で、やっと女の子たちが落ち着いてくれたって。
『結果はどうなっても…アワード受賞が金魚ちゃんでも雫ちゃんでも、あと他の女の子が選ばれても…もう反論なしだからね。みんな。いい?審査員の方々も』
結果は…やっぱり金魚が一位だったって。
そして雫ちゃんって子は、80票くらいの差で二位。
でも実は女の子たちの中には《確かに金魚ちゃんは可愛いけど、ここに居ないのに居ない子が受賞とかって…変じゃない?》《だったらやっぱりアワードは雫ちゃんでしょ?》って思ってた子も、けっこういたんだって。
そんな女の子たちが、雫ちゃんって子に投票したのかなぁ。
『じゃあ…トロフィーと記念品の授与式は…どうしますか?…し、審査員長…』
司会の男の人がステージの隅っこで、そう言ってキョロキョロ見回してた時…タイミング良く春華さんと鮎美ちゃんが入場して来たもんだから、会場は大盛り上がり…きゃははは。
『金魚ちゃんのお姉ちゃん来たー!』
『金魚ちゃんのお姉ちゃーん!』
『タイミングすごーっ!!』
まぁ…タイミング良くってより…実は鈴ちゃんが、ネット投票のやり直しが始まったときに、LINEで《お願い。二人会場に来て。もしかしたら金魚ちゃんが…》って。送ってたんだって。
さぁっすがね。鈴ちゃん♪
金魚の代わりにトロフィーを授与されることになった、春華さんと鮎美ちゃん。
二人がステージに上がるのと合わせて、ノミネートされてた女の子たちがステージを下りはじめたんだけど…その時、雫ちゃんって子だけが駆け出して抱き付くように、鮎美ちゃんの胸元へと飛び込んだんだって。
そして、鮎美ちゃんと雫ちゃんって子は、小さな声でこう話したんだって…。
私は…去年末の12月30日の土曜日に、藤浦市の嘉久見大通り沿いにある《パステル・スクェア81》で開催された《G.F.アワード/2023》で起こった、"ノミネートもされてなかったから金魚不在なのに、でも金魚がアワードを受賞したあの驚きの事件"について、説明する鈴ちゃんとそれを小さく頷きながら聞いてる信吾の、二人の横顔をゆっくりと交互に見ていました。
鈴ちゃんは毎年《G.F.アワード》には特別審査委員長として呼ばれて参加しています。
…うーん。何回目だったかな…?
えぇと…確か…あっ。
たぶん3回目か4回目くらいだったと思います。
この驚き事件については、私は春華さんから聞きました。そのあとに鮎美ちゃんと鈴ちゃんからも聞きました。
私、お風呂の湯船であったかポカポカ気持ちいぃ…してる時は、だいたい誰かとiPhoneで LINEしてるんです。
さっき言った春華さんとか鈴ちゃんとか、ピプレのメンバーとか、高校ん時の友達とか、他にも…。
あと、時々アンナさんとか…たまーにお母さんとか菊江さんとか。
そんなこんなでお風呂してたその時に、それを信吾より先に聞いて知りました。
ねぇ、聞いて聞いて。
あの日の観客の女の子たち、全然ネット投票してくれなかったらしいの。
何で?って?
それを私が今から私が説明しようとしてたんです!
けどそんな少ない投票だったけど、それでもアワードに選ばれた…えぇと、ナントカ雫ちゃんって子が、司会やってた男の人から『一言…』ってマイクを渡された時、雫ちゃんが何て言ったと思う?
『私…納得いきません』って。『何で金魚ちゃんはノミネートされてないんですか?』って言ったんだって。
『じゃないと私、素直に受賞を受け入れられません』って。
そしたら審査員の皆さんがステージの下に集まって、ヒソヒソと何か話し合いを始めたんだって。
会場の女の子たちからも『金魚ちゃんを入れてもう一回投票し直しして!』『今年のアワード受賞は金魚ちゃんでしょ絶対!じゃないとおかしい!』『まさか知らないの!?金魚ちゃんのこと!そんなんでアワードやるって変だよ!』って。ブーイングの声。
そしたら、頭ピカピカツルリンリン♪の小太りのオジさんがステージに上がってきて…。
『…えー。ただ今、我々審査員により協議しましたところ…』
ステージ上で、そのオジさんが言った『池川金魚さんは、今藤浦市は元より美波県からも転出し、東京都にいるらしいのでノミネートから削除したとのことで』の言葉に、女の子たちはもっとキレて怒りだしたって。
『そのルールは《専属モデルのルール》だってば!そんなことも知らないの!?』『ルールも解ってないのにG.F.アワードの審査員なんかするなー!』って。
そしたらそのオジさん、ステージ上で怖がってビクビクしながら、また余計な一言を…ふふっ。
『け、けど…池川金魚さんは実は女装した男だったとかで…』
『今年デビューした子の中で一番可愛い子を選ぶのがG.F.アワードだろー!最低だぞーこのハゲー!!』
『最っ低ー!!この街で一番可愛い金魚ちゃんなんだから!金魚ちゃんを女装とか言うなー!!』
『金魚ちゃんは本物の女子の私なんかより何百倍も可愛いのに!ノミネートしないって馬鹿すぎ!このじじー最低ー!!』
きゃはははははー!!
私も一緒に叫びたかったなー。『見ろーやっぱり金魚が一番!絶対優勝でしょー!このツルリンリンのおじじ様ー♪』って。
そんな、女の子たちの制御不能な混乱した状況を見兼ねて…鈴ちゃんがステージの真ん中で、一言こう言いました。
『はーい。止めてー。女の子たちー。はーい。はーい…みんな一旦落ち着こう?…ね。じゃあ私から提案。こうしましょ…』
鈴ちゃんの《金魚ちゃんを含めた26人で、もう一回ネット投票のやり直し》の解決提案で、やっと女の子たちが落ち着いてくれたって。
『結果はどうなっても…アワード受賞が金魚ちゃんでも雫ちゃんでも、あと他の女の子が選ばれても…もう反論なしだからね。みんな。いい?審査員の方々も』
結果は…やっぱり金魚が一位だったって。
そして雫ちゃんって子は、80票くらいの差で二位。
でも実は女の子たちの中には《確かに金魚ちゃんは可愛いけど、ここに居ないのに居ない子が受賞とかって…変じゃない?》《だったらやっぱりアワードは雫ちゃんでしょ?》って思ってた子も、けっこういたんだって。
そんな女の子たちが、雫ちゃんって子に投票したのかなぁ。
『じゃあ…トロフィーと記念品の授与式は…どうしますか?…し、審査員長…』
司会の男の人がステージの隅っこで、そう言ってキョロキョロ見回してた時…タイミング良く春華さんと鮎美ちゃんが入場して来たもんだから、会場は大盛り上がり…きゃははは。
『金魚ちゃんのお姉ちゃん来たー!』
『金魚ちゃんのお姉ちゃーん!』
『タイミングすごーっ!!』
まぁ…タイミング良くってより…実は鈴ちゃんが、ネット投票のやり直しが始まったときに、LINEで《お願い。二人会場に来て。もしかしたら金魚ちゃんが…》って。送ってたんだって。
さぁっすがね。鈴ちゃん♪
金魚の代わりにトロフィーを授与されることになった、春華さんと鮎美ちゃん。
二人がステージに上がるのと合わせて、ノミネートされてた女の子たちがステージを下りはじめたんだけど…その時、雫ちゃんって子だけが駆け出して抱き付くように、鮎美ちゃんの胸元へと飛び込んだんだって。
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