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G.F. - 夢追娘編 -

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公貴くんは『…?』みたいな表情で、僕を見た。


『あー。姉貴から聞いたんだよ。俺の』


姉貴…公貴くんの?


『なんだよ岩塚信吾。だから俺の姉だって。永野佳華』

『あ、ほらぁ。去年の12月に、メイク担当として撮影に参加しただろ?岩塚くん』


池田さんが、僕にそう教えてくれ…ん?待てよ。

12月に撮影?…メイク…あっ?あー?
あー…えっ?


『ながのよしか…ええっ!?あの有名モデルのYOSHIKAさん!?』

『そうだよ。YOSHIKA…ってか、まさかお前、YOSHIKAが俺の姉だって解らんかったんか?』


そうだったのかぁ…YOSHIKAさん。あぁ…なるほど…。
公貴くんのお姉さんだったかぁ。へぇ…。

それで、YOSHIKAさんから僕のことを聞いたんだ…と。
聞いたのは、たぶん…まだ最近のはず。大晦日とか元旦とかかな?


『そういや岩塚信吾、メイクがくっそ上手いんだってな』

『うん…けど、それほどでもないよ』

『…そうか?』


公貴くんが、怪しむような視線で僕を見た。


『姉貴から《信吾くんの女装、普通じゃないくらい凄く可愛いから!》とかって聞いてたんだけどな』


…!


『今度機会があったら見せてくれよ。お前の自慢の女装とやらを』

『いや、それは…ちょっと』


…《池川金魚》になった僕は、あんまり彼には見せたくない…。
見せたら『あーっ!あのとき見たオンナ!!』とか『あれ、お前だったのかよ!』とか『だったら先に正直に言っとけよ!』とか言われるというか…責められそうだから。


『まぁいいや。てゆうことだから。んじゃあな…』


公貴くんは、くるっとゆっくり振り向いて僕らに背を向け、エレベーターへと向かって歩き出した。


『もう一度訊くけど…観にくる?演技の練習』


陽凪さんに改めてそう訊かれたけど、詩織は首を横に振った。


『公貴くんは《観に来るな》なんて言ってたけど、そんなの全然気にしなくていいんだから…』


僕は、詩織と陽凪さんとのそのやり取りも見てたけど、公貴くんがエレベーターのボタンに触れるのも、その先に見えた。


『うぅん。今日は新年のご挨拶に来ただけですし、このあと堀内芸能事務所へ行って、ピプレのメンバーと打ち合わせとか簡単なレッスンとかがあるから…』


…だから、見学は今度にします…って、詩織は丁寧に断った。


『そう…じゃあまた今度ね』

『はい』


エレベーターのドアが開いた。
公貴くんが乗り込み、陽凪さんも追うようにエレベーターに乗り込んだ…と思ったら?

一度閉まったエレベーターの扉がまた開き、ひょこっと公貴くんが顔を覗かせた。


『詩織。またな!』


公貴くんが"あばよ"のハンドサインを詩織に送って、無垢な笑顔で小さく手を振って、またエレベーターの扉は閉まった。
詩織はもう閉まったエレベーターの扉に向かって、不機嫌そうに舌を出して可愛く挑発してた。



『はぁ…よし。じゃ僕も事務所に戻るよ』


池田さんは、僕らににこっと笑って見せて、事務所へと戻ろうとした。


『あっ、あの!池田さん…』

『ん?』


呼ばれた池田さんは、足を止めて詩織を見た。


『今、冴嶋社長はこのビル内にいますか?それと…大槻専務さんと、高須賀あずささんも』

『あぁ。社長は出掛けてる。けど大槻専務取締役と高須賀人事部長はいるよ。事務所に』

『あー。良かったぁ』


詩織と僕は見合って…ほっとした。


僕と詩織は大槻専務取締役と高須賀人事部長、それと渡部取締役副社長に新年の挨拶をし終えて、そのまますぐにピプレのメンバーの待つ堀内芸能事務所へと向かった。






『…ってことで。今から今日出る昼番の簡単なリハ。そのあとはそれぞれ、各テレビ局へ向かって昼と夜の生放送に出演…以上』


詩織の所属するアイドルグループ《Peace prayer》のプロデューサーの西村さんから、詩織たちメンバーの各スケジュールが告げられた。
今日は忙しいため、歌やダンスのレッスンは無し。

簡単なリハーサルと言っても、生放送のお正月特別番組と出演との流れを、一度説明されただけのリハーサル。
詩織と優羽ちゃんと千景ちゃん、海音さんと明日佳ちゃんと心夏ちゃんとの2グループに別れ、詩織たちは赤坂某所のテレビ局へ。海音さんたちは港区某所のテレビ局へと向かうことに。

どちらのグループも、放送局内に入ったらすぐに振り袖に着替えなきゃならなかったから、時間があまり無いというか、けっこう忙しい。







『…うん。みんな、ちょっと待ってて』


本当に簡単なリハーサルが終わり、西村プロデューサーがレッスンルームを出ていった。
残されたメンバー6人。ほんのしばらくの放置時間。

6人がルーム内の壁にもたれ、床にぺたんと一列に座った。


『…ねぇ、詩織ちゃん』

『うん?』


詩織が呼ばれて、優羽ちゃんを挟んで呼んだ海音さんと見合った。


『今年の初詣に行ったときの写真、ありがとう。見たよ。凄く羨ましかった』

『羨ましい…かな。えへへ。嬉しいな♪』

『…でさ、詩織ちゃんの隣にいた子…って誰?』

『えっ?…誰のこと?』


海音さんは立ち上がって、自分のカバンの中を覗きに行って、自分のiPhoneを取り出して、また戻ってきた。


『この写真の…この可愛い子』


…詩織の隣にいた、可愛い子…?
ま、まさか…。

なんか…嫌な予感がするんだけど…。























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