72 / 159
G.F. - 夢追娘編 -
page.551
しおりを挟む
新しい年を迎えた…2024年1月3日。水曜日。時刻は午前8時39分。
僕と詩織は東京都江東区某所にある、冴嶋プロダクションビルの前に立っていた。
『今年もいい初詣だったね』
『うん。そうだね』
5階建てのビルを見上げていた詩織は、ふとそんな詩織の横顔を見ていた僕に視線を向けて微笑んだ。
『ファミリーのみんなと、あんな楽しい時間を過ごすと…やっぱり藤浦市に戻りたいなぁ、なんて思っちゃうね』
…それはできないけどね。
詩織は本当に、アンナファミリーのみんなが大好きだから。
僕もだけど。
『よし。じゃあ入ろう』
『うん。行こっ』
ビルに入り、ロビーの受付けのお姉さんと新年の挨拶。
それから、タイミング良く降りてきたエレベーターに乗る。向かうは2階…事務所へ。
《2階です。ドアが開きます》
エレベーターを降りて2階の廊下へと出たときに…僕らは気付いた。
『ねぇ、事務所の前にいるの…陽凪さんじゃない!?』
確かに。
この冴嶋プロダクションに所属する、29歳の若手女優の寺本陽凪さんが立っているのが見えた。
陽凪さんを見るのは本当に久しぶり…あの《金魚の復讐》をした宮学の記念館に来てくれたとき振りだ。
それと、池田さんと…何だか見覚えのある、若い男性っぽい後ろ姿も…?
『陽凪さーん、池田さん、明けましておめでとうございます!』
詩織が陽凪さんたちの元へと、明るく元気に駆けてゆく。
『あ、詩織ちゃん!お久しぶりー。明けましておめでとう』
『おぉー、君たち。あけおめー』
陽凪さんも池田さんも、優しい良い笑顔で挨拶に応えてくれた。
それに反応したかのように、見覚えのある後ろ姿の男子が振り向いた…!
『ん?』
……!
やっぱり見たことある。いつだっただろう…あっ!
僕と詩織が初めてこの冴嶋プロダクションビルに来て、初見面談をしたあの日。
池田さんの勧めで、僕が2階の事務所隣の控え室で一旦《池川金魚》に変身して、エレベーターで3階の会議室へと戻ろうとしたとき…乗ろうとしたエレベーターの扉の前に彼が居て、少し話をしたんだった。
彼が『…この二人、誰?』って雰囲気の視線で僕らをじーっと見ていると…。
『あ…そ、そうね。丁度いいから紹介するね』
陽凪さんが、少し堅苦しそうに微笑んでそう言った。
『こちらはアイドルデビューしたばかりの、岡本詩織ちゃん。それと、詩織ちゃんの専属メイク兼サブマネージャーの岩塚信吾くん』
陽凪さんは、まず先に僕と詩織を彼に紹介した。
『あー。最近アイドルデビューした期待のオンナってお前だったのか?…へぇ』
いきなり、初めて会ったばかりの詩織に向かって《お前》《オンナ》呼ばわりって…。
彼は表情一つ変えず、真顔で冷静にそう言った。
『えっと…岡本詩織です。宜しくお願いします』
さっきはほんの一瞬『えっ?』っていうか、『は?』みたいな…。
そんな表情を見せた詩織。
でも、今はもう明るい表情に戻って丁寧に会釈して、にこりと可愛らしく笑った。
『それと…お前』
彼は、今度は僕を指差した。
『…岩塚信吾だっけ?俺、お前のこと知ってるぞ』
『えっ?』
僕のことを知ってる?…って、なんで!?
僕と彼が初めて会ったのは、僕が《金魚》だったとき。
だから、彼は僕のことを見るのは今日が初めて…彼は僕のことなんか知らないはずなんだけど。
僕は無意識に、池田さんを見てた…らしい。
『いやいや、待て。僕じゃないよ。僕は君のことを公貴くんに話してなんかないから』
池田さんは慌てて、僕にそう言って返した。
『…キミタカくん…?』
詩織が不思議そうに…または何かを思い出そうとしているように、小さな声でそう言った。
『あ、そうそう。彼のことも紹介するね』
陽凪さんが、その場を取り持つように詩織にそう言った。
『彼は永野公貴くん』
『永野…えっ!何年か前に《平成最後の天才子役》って言われた…!?』
僕は『えっ?知ってるの?』ってふうに詩織を見た。僕は彼のことは全然知らないんだけど。
『何だよ。お前俺のこと知ってたのかよ。ってか俺は別に消えてなんかねぇけどな 』
急に詩織の表情から、笑顔も驚きもスッと消えた。
…なんかヤバそうな雰囲気。それに気付いたのは僕だけ…?
『…あの』
まっ待って!詩織!!
『さっきから聞いてて私、凄く気になってたんだけど…!』
僕と詩織は東京都江東区某所にある、冴嶋プロダクションビルの前に立っていた。
『今年もいい初詣だったね』
『うん。そうだね』
5階建てのビルを見上げていた詩織は、ふとそんな詩織の横顔を見ていた僕に視線を向けて微笑んだ。
『ファミリーのみんなと、あんな楽しい時間を過ごすと…やっぱり藤浦市に戻りたいなぁ、なんて思っちゃうね』
…それはできないけどね。
詩織は本当に、アンナファミリーのみんなが大好きだから。
僕もだけど。
『よし。じゃあ入ろう』
『うん。行こっ』
ビルに入り、ロビーの受付けのお姉さんと新年の挨拶。
それから、タイミング良く降りてきたエレベーターに乗る。向かうは2階…事務所へ。
《2階です。ドアが開きます》
エレベーターを降りて2階の廊下へと出たときに…僕らは気付いた。
『ねぇ、事務所の前にいるの…陽凪さんじゃない!?』
確かに。
この冴嶋プロダクションに所属する、29歳の若手女優の寺本陽凪さんが立っているのが見えた。
陽凪さんを見るのは本当に久しぶり…あの《金魚の復讐》をした宮学の記念館に来てくれたとき振りだ。
それと、池田さんと…何だか見覚えのある、若い男性っぽい後ろ姿も…?
『陽凪さーん、池田さん、明けましておめでとうございます!』
詩織が陽凪さんたちの元へと、明るく元気に駆けてゆく。
『あ、詩織ちゃん!お久しぶりー。明けましておめでとう』
『おぉー、君たち。あけおめー』
陽凪さんも池田さんも、優しい良い笑顔で挨拶に応えてくれた。
それに反応したかのように、見覚えのある後ろ姿の男子が振り向いた…!
『ん?』
……!
やっぱり見たことある。いつだっただろう…あっ!
僕と詩織が初めてこの冴嶋プロダクションビルに来て、初見面談をしたあの日。
池田さんの勧めで、僕が2階の事務所隣の控え室で一旦《池川金魚》に変身して、エレベーターで3階の会議室へと戻ろうとしたとき…乗ろうとしたエレベーターの扉の前に彼が居て、少し話をしたんだった。
彼が『…この二人、誰?』って雰囲気の視線で僕らをじーっと見ていると…。
『あ…そ、そうね。丁度いいから紹介するね』
陽凪さんが、少し堅苦しそうに微笑んでそう言った。
『こちらはアイドルデビューしたばかりの、岡本詩織ちゃん。それと、詩織ちゃんの専属メイク兼サブマネージャーの岩塚信吾くん』
陽凪さんは、まず先に僕と詩織を彼に紹介した。
『あー。最近アイドルデビューした期待のオンナってお前だったのか?…へぇ』
いきなり、初めて会ったばかりの詩織に向かって《お前》《オンナ》呼ばわりって…。
彼は表情一つ変えず、真顔で冷静にそう言った。
『えっと…岡本詩織です。宜しくお願いします』
さっきはほんの一瞬『えっ?』っていうか、『は?』みたいな…。
そんな表情を見せた詩織。
でも、今はもう明るい表情に戻って丁寧に会釈して、にこりと可愛らしく笑った。
『それと…お前』
彼は、今度は僕を指差した。
『…岩塚信吾だっけ?俺、お前のこと知ってるぞ』
『えっ?』
僕のことを知ってる?…って、なんで!?
僕と彼が初めて会ったのは、僕が《金魚》だったとき。
だから、彼は僕のことを見るのは今日が初めて…彼は僕のことなんか知らないはずなんだけど。
僕は無意識に、池田さんを見てた…らしい。
『いやいや、待て。僕じゃないよ。僕は君のことを公貴くんに話してなんかないから』
池田さんは慌てて、僕にそう言って返した。
『…キミタカくん…?』
詩織が不思議そうに…または何かを思い出そうとしているように、小さな声でそう言った。
『あ、そうそう。彼のことも紹介するね』
陽凪さんが、その場を取り持つように詩織にそう言った。
『彼は永野公貴くん』
『永野…えっ!何年か前に《平成最後の天才子役》って言われた…!?』
僕は『えっ?知ってるの?』ってふうに詩織を見た。僕は彼のことは全然知らないんだけど。
『何だよ。お前俺のこと知ってたのかよ。ってか俺は別に消えてなんかねぇけどな 』
急に詩織の表情から、笑顔も驚きもスッと消えた。
…なんかヤバそうな雰囲気。それに気付いたのは僕だけ…?
『…あの』
まっ待って!詩織!!
『さっきから聞いてて私、凄く気になってたんだけど…!』
1
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
選ばれたのは美人の親友
杉本凪咲
恋愛
侯爵令息ルドガーの妻となったエルは、良き妻になろうと奮闘していた。しかし突然にルドガーはエルに離婚を宣言し、あろうことかエルの親友であるレベッカと関係を持った。悔しさと怒りで泣き叫ぶエルだが、最後には離婚を決意して縁を切る。程なくして、そんな彼女に新しい縁談が舞い込んできたが、縁を切ったはずのレベッカが現れる。
夫を愛することはやめました。
杉本凪咲
恋愛
私はただ夫に好かれたかった。毎日多くの時間をかけて丹念に化粧を施し、豊富な教養も身につけた。しかし夫は私を愛することはなく、別の女性へと愛を向けた。夫と彼女の不倫現場を目撃した時、私は強いショックを受けて、自分が隣国の王女であった時の記憶が蘇る。それを知った夫は手のひらを返したように愛を囁くが、もう既に彼への愛は尽きていた。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる