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G.F. - 再始動編 -

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しばらくして…歩美さんは頬を赤くしたまま、少し恥ずかしそうに顔を左手で半分隠しながら、部屋の隅っこから戻ってきた。


『よぉし。詩織の願い事も聞き終わったし…遂に、アンナさんの願いかぁ…!!』


秋良さんが待ち兼ねたようにアンナさんを見る。
アンナさんは、少し固い笑顔を僕らに見せた。


『じゃあ、私の祈願書に書いた願い事を発表するわね』


アンナさんは小さく咳を払って、スーッと深呼吸をした。


『私の願いは《Hair-dresser. ANNA》の開業成功よ………あら?』


ちょっとドヤ顔で、そう発表したアンナさん。
対して秋良さんの笑顔の消えたその視線が、アンナさんをじっと見た。


『何か期待と違ったかしら…秋良くん?』

『あのさぁ…アンナさん。《Hair-dresser. ANNA》って何だ?…って話はあとで聞くよ。ってか、違うだろ…』
『俺たちが期待してたのは《私、今年"中澤杏菜"に成ります》って言葉…』


中澤…ってのは、アンナさんと恋仲である中澤雄二さんのこと。つまり…そういうこと。
秋良さんと啓介さんのそれに、アンナさんは少し焦ったような表情で反論した。


『けど、それについては雄二もまだ、忙しそうだし…』

『あの雄二さんなんだから、100年待っても忙しいだろうよ。そんなこと言ってたらいつまで待っても…だぜ?』






って…そんな話は、とりあえず今は置いといて…。


…アンナさんの美容院《cloche doréeクローシュ・ドレ》に勤める2人のお姉さん従業員。
その一人である《山口尚美さん》が、何年か前からアンナさんに話していた《自分の美容院を持ちたい》という夢を叶えることになった…ということらしい。


『…たぶん、秋良くんが《自分のアパレルショップを出す》と決意した頃と近いと思うけど』

『あの尚美さんがねぇ…で、その店の名前に《ANNA》って付いてるのはなんで?』


アンナさんも、その質問にはちょっと複雑な表情で答えた。


『自分の美容院は持ってみたい…だけど、経営していくには不安もある…だから軌道に乗るまでの期間を決めて《クローシュ・ドレの2号店》ってことにしてほしい…って相談があったの』


…それで、とりあえず5年を期間とする《2号店》ということになったらしい。その5年のあいだはアンナさんが助成出資や運営顧問をするんだとか。


『で…店の場所は?藤浦市内?』


そう訊いたのは大基さん。
アンナさんは首を横に振った。


『大田区よ。東京の』

『東京ぉ!?』


東京…それを聞いて、僕も詩織と見合った。


『…で、いつから?開店は』

『実はね、去年末からもう店舗の場所は決まってて、店内の改装ももう始まってるの。あとは今進めている従業員2人募集の完了次第。早ければ来月…2月には美容院を始められるわ』


…そこには、元々《高級メンズサロン》があったんだけど、その店舗が去年の7月に、本店のある神奈川県某所へと戻るように撤退し移転。

アンナさんは、そのメンズサロンに店舗を貸していたオーナーさんを過去の美容学校仲間から紹介され、《東京に店舗を移転しませんか?》《店舗家賃はできる限り安くします》《どうか借りることで助けていただけませんか?》と相談を受けていたらしい。

美容院の機材などの多くは店舗に残されていて、簡単な改装さえ行えば、すぐにでもとりあえず開店できる状態。

アンナさんは僕が東京へ引っ越ししたあの日、引っ越しのあとに店舗のある大田区まで行って実際にオーナーさんと会い、空いた店舗の状態を見て《仮承諾》したんだとか…って、全っ然知らなかった。


『これで…これからもあなたの髪をカットしてあげられるわね…詩織』

『えっ?』


詩織がアンナさんを見た。
アンナさんは優しく微笑んでいた。


『だから詩織、ヘアカットできる日が分かったら、早めに私に連絡するのよ…ね』

『うん。ありがとうアンナさん…夢みたい。嬉しい』


それを聞いて、秋良さんがまた『わははは』と笑った。


『やっぱ、詩織の髪はアンナさんじゃなきゃ、カットさせられねーよなぁ!』

『うん。子どもの頃から私、ずーっとアンナさんだったし、アンナさんじゃなきゃ嫌だったから…これからもなんて、本当に嬉しい…』






それからも、祈願書に書いた願い事の…暴露?告白?…は続いて…。

啓介さんは『遅くなったけど、俺も秋良さんや大基さんと同じ。新しい開業が上手くいくように』って言ってたけど…本当かなぁ。
実は、歩美さんと同じ願い事を書いていたり…?

…それはないかな。どうだろう。























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