上 下
66 / 158
G.F. - 再始動編 -

page.545

しおりを挟む
僕は…いや僕らは、樋口絵里佳を乗せて駐車場から走り去る、鈴ちゃんの車を見送った。

金魚をジロリと見る樋口の顔…ちょっと怒ってたようにも見えた…。
う、うん。もう少し樋口と小まめに連絡取り合っても良さそうかな…。
《樋口が次の瀬ヶ池の1番の女の子になる計画》とか《"カラフル"管理者としての報告》とか、今後も色々と聞きたいこととかあるし…。


『んま、そういうことで…まだ少しだけ時間、いいよな?』


秋良さんが歩美さんと僕に、そう訊いてきた。


『…いい?』


歩美さんも僕を見る…僕は『あ、はい。大丈夫です』って、秋良さんと歩美さんに返答した。


『じゃあ金魚。この近くで休憩できる店とか…お前知ってるか?』


僕はふと思い出す…確か、僕の母校である緑川北高の近くに…。


『あ、あります。カフェスィーツ店とかじゃないですけど、ちょっとお洒落な喫茶店とか』

『ほぉ…あるか。よし』







『みんなー、今日はここでお別れねー。私たちの初詣に、付き合ってくれてありがとーう!またねー!』


詩織が、僕らを囲む瀬ヶ池の女の子たちに手を振る。
そして詩織はここへ来たときとは違い、今度は啓介さんの車に乗り込んだ。

今も動画撮影を続けている瀬ヶ池の女の子たち。手を振った詩織にみんなが手を振って返していた。


『じゃあ、行こう金魚ちゃん。お洒落な喫茶店までの案内、宜しくね』

『はい。えっと…まずは駐車場を出ます』


僕の乗り込んだ歩美さんの車が、先導するため一番に走り出した。


『あははは。まぁそうだよね』


…??
何がそうなの?
なぜか…歩美さんは笑ってた。

歩美さんの車に続き、秋良さんの車…アンナさんの車…啓介さんの車…大基さんの車の順で、岸鉾神社の駐車場を出ていく。







アンナファミリーの不思議なところは、場所なんて関係なくメンバー全員が集まれさえすれば、騒がしくずっとお喋りして、笑い合って、夢みたいに楽しい時間を過ごせること。
そして…あっというまに時間が過ぎていくこと…。




僕の母校の近くのお洒落な喫茶店に入って、それぞれ好きな飲み物と、このお店の唯一のスィーツ《ホットケーキ》を注文して…お店には、ちょっと騒がし過ぎてご迷惑だったかもしれないけど…そんなこんなで、みんなで楽しく過ごしていたら…。


『あー。もう11時かぁ』


…午前10時57分。
秋良さんがまた、みんなの顔を見た。


『喫茶店を出たら、ここで解散か…?』


詩織や春華さんや歩美さん、啓介さんや大基さんも…なんか急に寂しそうな表情をしてた。
あんなに楽しかった雰囲気が、急に冷めたようにも感じた…。


『詩織は、いつから今年の仕事初めだったかしら…?』


アンナさんが詩織にそう訊いた。


『うん。私も信吾も…3日から。だから明日にはまた、東京のマンションに戻らなきゃ…』


詩織が、いよいよ更に寂し気な顔をした。


『今度…いつ、またアンナファミリー全員で集まれるか…分からないね…』

『あぁ…』


遂に、秋良さんまで寂しそうな顔に…。
そしてしばらく全員が静かになってしまった…と思っていたら…。


『なぁ…信吾…』

『あ、はい…』


秋良さんは僕に、少し堅苦しく笑って見せた。


『お前を見送るの、歩美ちゃんだけじゃ…寂しいだろ?』


僕は少し躊躇しながらも…正直にウンと小さく頷いた。


『なぁ、俺もお前ん家まで見送っていいか?』


…えっ?


『なぁ、いいか?春華』


秋良さんは僕を見たまま、春華さんにそう訊いた。


『うん。私は別に。秋良くんがいいなら』

『秋良くん…』


アンナさんも、心配そうに秋良さんに声を掛けた。


『だってよ、ここで信吾らと《じゃあ、またいつか!》って…なんか寂しいじゃんか…なぁ』


ファミリーの全員で、わいわいと楽しく過ごせてた分…みんなが別れの寂しさを凄く強く感じてた。


『じゃあ…私も一緒に…いい?啓介くん』


詩織がそう言うと…。


『私もどんなところなのか、見てみたいわ。信吾くんのご実家のあるところ』


…ナオさんも続いてそう言った。


『じゃあ、ナオがそう言うなら私も行くことになるわね』

『なんだよ。じゃあ俺も行こうかな!』


アンナさんも、大基さんも…。
それで結局…。


『よっしゃあ!じゃあ全員で…信吾を実家まで見送るかぁ!』

『やっぱりアンナファミリーは、そうこなくっちゃあ!あははは』
『信吾のお母さんに会えるよね。去年の夏振りなんだけどー♪』


…急に、また盛り上がって騒がしさを取り戻したアンナファミリーのみんな。
やっぱり僕は、このアンナファミリーが…うん。
口にするのは恥ずかしいけど…僕はみんなが本当に大好き。


『良かったわね。金魚』


アンナさんが微笑んで、僕にそう優しく声を掛けてくれた。


『はい。嬉しいです…』























しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

十年目の離婚

杉本凪咲
恋愛
結婚十年目。 夫は離婚を切り出しました。 愛人と、その子供と、一緒に暮らしたいからと。

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

処理中です...