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G.F. - 再始動編 -
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鈴ちゃんの車は、僕らの車から少し離れたところに停車した。
運転席のドアが開き、鈴ちゃんが出てきて僕らの方へと急ぎ歩いてくる。
『遅れてごめんなさい。みんな、明けましておめでとう』
鈴ちゃんも歩美さんのような、とても暖かそうな服装をしていた。
鈴ちゃんは詩織の隣へと来た。
『詩織ちゃん。アイドルデビューおめでとう』
『うん。ありがとう鈴ちゃん』
『金魚ちゃんも、明けましておめでとう』
『じゃあ、鈴ちゃんも来たことだし、早速行くかぁ!』
秋良さんがそう言って、全員の顔を見たとき…詩織が手を挙げた。
『待って。秋良くん』
『あぁ?何だ?』
詩織が、スマホのカメラをこっちに向けて撮影している、周りの女の子たちを見回す…。
『今日、ここに来てくれた女の子たちに言いたいの』
詩織以外のアンナファミリーのメンバーのそれぞれが、少し複雑な様々な心境で詩織を見る。詩織は周りの女の子たちに向かって、叫ぶように言った。
『私たち、アンナファミリーの初詣を撮影することには私は何も言わない。けど、悪用するのだけはやめてね!』
『それと今日の初詣は私たちのプライベートなの。だからお願い。あまり邪魔はしないで』
詩織の一言に続いて、アンナさんも女の子たちにそう言った。
『よし。じゃあ行くか』
僕は改めて、一つの円を描くように並んだメンバー全員の顔を見た。
歩美さん、詩織、鈴ちゃん、春華さん、アンナさん、ナオさん、美弥さん、大基さん、秋良さん、啓介さん…それと、飛び入り参加の樋口絵里佳…。
こうして全員が集まると、やっぱり凄いな!アンナファミリーって…って、改めて思えてくる。
一人一人のそれぞれに、確かな存在感がある。誰一人欠けてもいけない。全員揃ってのアンナファミリー。
『よし。先頭は、今年成人式を迎える《振り袖3人娘組》な』
振り袖3人娘組…それは僕と詩織と樋口のこと。
『じゃあ、振袖袴の美弥ちゃんも。私たちと一緒に行こう』
そう言って、詩織は美弥さんを見た。
『え…でも私、24歳』
『いいんだよ美弥ちゃん。詩織がそう言ってるんだから』
…ということで、先頭は《振り袖3人娘と美弥さん》、その後ろを《春華さんと鈴ちゃんの同い歳ペア&歩美さん》、次が《アンナさんとナオさんのお姉さんペア》、そして最後尾に《秋良さん、啓介さん、大基さんのイケメン3人組》ということになった。
グループの先頭として、歩き出した振り袖3人娘の僕ら。左に金魚、右に詩織と並んだそのあいだに…まるで猫のようにスルリと…え?
『ちょっと!なんで真ん中に割り込んでくるのよ!絵里佳ちゃん!』
詩織が樋口と睨み合う…。
僕らの予定では《詩織が真ん中》になるはずだった。
『私は、姫さまの隣じゃなきゃ嫌なんです。だから私が真ん中です』
『はぁ?…そんなに金魚の隣がいいんなら、金魚を真ん中にすれば』
『ダメです。詩織ちゃんはそっちで。私が真ん中で』
『はぁぁ!?』
樋口って、自分で《こうしたい!》って言い出したら本当に超頑固…。
結局…詩織が仕方なく譲って、樋口が《振り袖3人娘》の真ん中で歩くことに。
飛び入り参加者の、樋口の遠慮感は何処へ…。
そもそもそんなの、最初から持ち合わせてないんだろうけど…。
僕らは石畳の道を、いいテンポで歩いて行く。道の両側に立つ石燈籠の笠の上や僕らの足元に、白くうっすらと雪が残っている。
『私…《G.F.》の専属素人モデルとして、復帰しようかと思ってます』
歩きながら、そして少し俯きながら、樋口はそう言った。
以前は地元藤浦市の無料配布冊子《G.F.》の、とある洋服屋さんの専属素人モデルを務めていた樋口。
だけど丹波彩乃との言い争いとか色々あって…辞めてしまってたんだ。
『へぇ…どこの専属モデルとして復帰するの?あ、前に所属してたお店の…』
『ううん。違うところ』
樋口は、詩織のその言葉を否定した。
『じゃあ…?』
『コスメ店の《BlossoM》で…』
…え?化粧品店の《BlossoM》って、ナオさんの…!
その専属モデルは、ほんの少しだけ僕…金魚が…。
『姫さまが…そのお店の専属モデルをやってたから、その代わりを引き継いで、私が…』
樋口が僕の顔をちらりと見て、はにかみを見せながらも可愛らしく、にこりと笑った。
詩織が一瞬立ち止まって、後ろをゆっくりと振り向く。
『本当なの!?ナオさん』
『うん…まだ返事はしてないけど。彼女、必死というか本気みたいだったから…』
…そんな雑断などを話しながら歩いていたら…目の前に見えてきた大きな石造りの鳥居。ここから長い道のりの、緩い勾配の坂となる。
去年の僕は不甲斐なく、歩くのが下手でみんなに迷惑掛けてた…。
今年は去年とは違う…。
もっと早く、余裕をもって綺麗に歩いてみせる。
僕らの後ろを、騒がしく付いてきている瀬ヶ池の女の子たちも見ているんだし。
僕はそう決意して石造りの鳥居を見上げると…何だか急に僕の体中に気合が込み上げてきた…!
運転席のドアが開き、鈴ちゃんが出てきて僕らの方へと急ぎ歩いてくる。
『遅れてごめんなさい。みんな、明けましておめでとう』
鈴ちゃんも歩美さんのような、とても暖かそうな服装をしていた。
鈴ちゃんは詩織の隣へと来た。
『詩織ちゃん。アイドルデビューおめでとう』
『うん。ありがとう鈴ちゃん』
『金魚ちゃんも、明けましておめでとう』
『じゃあ、鈴ちゃんも来たことだし、早速行くかぁ!』
秋良さんがそう言って、全員の顔を見たとき…詩織が手を挙げた。
『待って。秋良くん』
『あぁ?何だ?』
詩織が、スマホのカメラをこっちに向けて撮影している、周りの女の子たちを見回す…。
『今日、ここに来てくれた女の子たちに言いたいの』
詩織以外のアンナファミリーのメンバーのそれぞれが、少し複雑な様々な心境で詩織を見る。詩織は周りの女の子たちに向かって、叫ぶように言った。
『私たち、アンナファミリーの初詣を撮影することには私は何も言わない。けど、悪用するのだけはやめてね!』
『それと今日の初詣は私たちのプライベートなの。だからお願い。あまり邪魔はしないで』
詩織の一言に続いて、アンナさんも女の子たちにそう言った。
『よし。じゃあ行くか』
僕は改めて、一つの円を描くように並んだメンバー全員の顔を見た。
歩美さん、詩織、鈴ちゃん、春華さん、アンナさん、ナオさん、美弥さん、大基さん、秋良さん、啓介さん…それと、飛び入り参加の樋口絵里佳…。
こうして全員が集まると、やっぱり凄いな!アンナファミリーって…って、改めて思えてくる。
一人一人のそれぞれに、確かな存在感がある。誰一人欠けてもいけない。全員揃ってのアンナファミリー。
『よし。先頭は、今年成人式を迎える《振り袖3人娘組》な』
振り袖3人娘組…それは僕と詩織と樋口のこと。
『じゃあ、振袖袴の美弥ちゃんも。私たちと一緒に行こう』
そう言って、詩織は美弥さんを見た。
『え…でも私、24歳』
『いいんだよ美弥ちゃん。詩織がそう言ってるんだから』
…ということで、先頭は《振り袖3人娘と美弥さん》、その後ろを《春華さんと鈴ちゃんの同い歳ペア&歩美さん》、次が《アンナさんとナオさんのお姉さんペア》、そして最後尾に《秋良さん、啓介さん、大基さんのイケメン3人組》ということになった。
グループの先頭として、歩き出した振り袖3人娘の僕ら。左に金魚、右に詩織と並んだそのあいだに…まるで猫のようにスルリと…え?
『ちょっと!なんで真ん中に割り込んでくるのよ!絵里佳ちゃん!』
詩織が樋口と睨み合う…。
僕らの予定では《詩織が真ん中》になるはずだった。
『私は、姫さまの隣じゃなきゃ嫌なんです。だから私が真ん中です』
『はぁ?…そんなに金魚の隣がいいんなら、金魚を真ん中にすれば』
『ダメです。詩織ちゃんはそっちで。私が真ん中で』
『はぁぁ!?』
樋口って、自分で《こうしたい!》って言い出したら本当に超頑固…。
結局…詩織が仕方なく譲って、樋口が《振り袖3人娘》の真ん中で歩くことに。
飛び入り参加者の、樋口の遠慮感は何処へ…。
そもそもそんなの、最初から持ち合わせてないんだろうけど…。
僕らは石畳の道を、いいテンポで歩いて行く。道の両側に立つ石燈籠の笠の上や僕らの足元に、白くうっすらと雪が残っている。
『私…《G.F.》の専属素人モデルとして、復帰しようかと思ってます』
歩きながら、そして少し俯きながら、樋口はそう言った。
以前は地元藤浦市の無料配布冊子《G.F.》の、とある洋服屋さんの専属素人モデルを務めていた樋口。
だけど丹波彩乃との言い争いとか色々あって…辞めてしまってたんだ。
『へぇ…どこの専属モデルとして復帰するの?あ、前に所属してたお店の…』
『ううん。違うところ』
樋口は、詩織のその言葉を否定した。
『じゃあ…?』
『コスメ店の《BlossoM》で…』
…え?化粧品店の《BlossoM》って、ナオさんの…!
その専属モデルは、ほんの少しだけ僕…金魚が…。
『姫さまが…そのお店の専属モデルをやってたから、その代わりを引き継いで、私が…』
樋口が僕の顔をちらりと見て、はにかみを見せながらも可愛らしく、にこりと笑った。
詩織が一瞬立ち止まって、後ろをゆっくりと振り向く。
『本当なの!?ナオさん』
『うん…まだ返事はしてないけど。彼女、必死というか本気みたいだったから…』
…そんな雑断などを話しながら歩いていたら…目の前に見えてきた大きな石造りの鳥居。ここから長い道のりの、緩い勾配の坂となる。
去年の僕は不甲斐なく、歩くのが下手でみんなに迷惑掛けてた…。
今年は去年とは違う…。
もっと早く、余裕をもって綺麗に歩いてみせる。
僕らの後ろを、騒がしく付いてきている瀬ヶ池の女の子たちも見ているんだし。
僕はそう決意して石造りの鳥居を見上げると…何だか急に僕の体中に気合が込み上げてきた…!
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