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G.F. - 再始動編 -
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詩織も、ピプレのメンバーが控え室を出ていくのを心配そうに見守っていた。
そしてその姿が見えなくなったあと、ゆっくりと振り向いて僕を見た。
『大丈夫かなぁ…海音ちゃんたち。だって』
『規約に書いてあったもんね…控え室から出るのはダメだって』
息を合わせたように、詩織と僕は同時に大きくウンと頷いた。
『ってかもし、ステージの観衆のなかに、このあと出演する本物のアイドルがいるなんてのが、バレちゃったら!』
『うん。大騒ぎになるね…』
控え室の入り口のほうを、もう一度大きく振り返ってじっと見た詩織。
『それに大騒ぎになったら、今ステージで実演してる沖縄の人たちにも迷惑掛けちゃう!』
そう言いながら、また僕を見た…けど、すぐに僕の後ろのほうをチラッと見た…?
『あなたは観に行かなかったの?沖縄演舞のステージ』
『だって!ダメってルールが…』
…?
後ろを振り返ると、そこには早坂美雪さんが立っていた。
『ふふっ。あの子たち、面白い子たちね』
早坂さんは僕の左隣に来て、目の前の詩織の肩を軽くポンと叩いた。
『たぶん心配なんていらないわよ。あの様子だといつもやり慣れてるって感じだから。あの子たち』
早坂さんが詩織に『ほら、にこっと笑いなさい』と言うかのように、詩織に優しく笑顔を見せる。
『あなたもあの子たちのように、心躍るくらいテンション上げたら?』
『あ、えっと…はい…』
詩織はまだ、今も少し戸惑い顔。
『今日は、アイドルデビューを発表するんでしょう?ステージで』
『えっ…』
早坂さんは、また軽くポンポンと2回、詩織の肩を叩いた。
その話を海音さんたちから聞いたんだろう…ってことは容易に想像できる。
『私たちにとって、お客さんの前でライブする日はお祭りみたいなものよ。あの子たちぐらい、今日という日を楽しまなきゃ』
『…はい!あの…ありがとうございます!』
大きくお辞儀をしてお礼を伝えた詩織。
みるみるうちに、詩織は満面の明るい笑顔に変わってゆく。
そんな詩織の表情を見てか、早坂さんは安心したようにまた笑った。
『でも気をつけてね。私は規約とかルールのあれこれについて、若い子たちにあぁだこうだと厳しいことを言うつもりはないけど、他の大御所の人たちの皆がそうなんじゃないんだから』
『はい。気をつけます』
そんな会話をしている中に、スタッフらしき女性が近づいてきた…?
早坂さんもそれに気づいたようで、チラリとその女性を見た。
『早坂美雪さま、特別室への移動は…』
『えぇ。でもごめんなさい。私、この子たちともう少しお話したいから。ここでいいわ』
『あ…あー。えぇと、承知いたしました。失礼します…』
少し困惑した様子を見せながらも、女性スタッフは離れていき、扉を開けて控え室から出ていこうとした。
『きゃっ!』
『おっと。すみません』
扉を開けた拍子に、女性スタッフは危なくぶつかり掛けた…あの人と。
『えっ、池田さん…?』
『あー!変な人ぉ!』
女性スタッフに頭を下げ、こちらへと向かって歩いてきて…。
『…あ?どっちだ!?僕のことを《変な人》って言ったのはぁ!』
詩織が素早く僕を指差す。
『違うよ!詩織だろ!』
『あら?私…って言っちゃう?信吾…』
『…えっ』
…結局、詩織に僕が言ったことにされて、僕は池田さんに謝った…理不尽。
『…ってか、あの大御所演歌歌手の!早坂美雪さんじゃないですかぁ!!』
池田さんは慌てて早坂さんに名刺を差し出し…。
『僕は冴嶋プロダクションの池田と申します…』
『あら。あの冴嶋さんのところの社員さんなのね』
…快く名刺を受け取ってもらってた。
『それで…池田さん。今日はなんでここに?』
そう訊いた詩織を、眼鏡の鼻当てを右手の中指でクイッと上げて、似合わないキリッとした目でじっと見た。
『今日は詩織ちゃんの初ステージライブで、アイドルデビュー発表を初めてする日だろう?』
詩織はキョトンとした目で『…はい』と小さく頷いた。
『だからそれを、ちゃんと見届けにきたんだよ!』
『…そうなんですかぁ。ありがとうございます』
『それと…こんな言葉を聞いたことあるだろう?《池田来るところに事務所からの伝言あり!》ってね!!』
『じゃ…じゃあ、私は向こうで少しゆっくりしてるわね』
『あ、早坂美雪さん。お話できて嬉しかったです。ありがとうございましたぁ♪』
離れていく早坂さん。
その早坂さんに会釈する詩織。
…ほんの1分ほど、池田さんは詩織に無視され続けた。
そしてその姿が見えなくなったあと、ゆっくりと振り向いて僕を見た。
『大丈夫かなぁ…海音ちゃんたち。だって』
『規約に書いてあったもんね…控え室から出るのはダメだって』
息を合わせたように、詩織と僕は同時に大きくウンと頷いた。
『ってかもし、ステージの観衆のなかに、このあと出演する本物のアイドルがいるなんてのが、バレちゃったら!』
『うん。大騒ぎになるね…』
控え室の入り口のほうを、もう一度大きく振り返ってじっと見た詩織。
『それに大騒ぎになったら、今ステージで実演してる沖縄の人たちにも迷惑掛けちゃう!』
そう言いながら、また僕を見た…けど、すぐに僕の後ろのほうをチラッと見た…?
『あなたは観に行かなかったの?沖縄演舞のステージ』
『だって!ダメってルールが…』
…?
後ろを振り返ると、そこには早坂美雪さんが立っていた。
『ふふっ。あの子たち、面白い子たちね』
早坂さんは僕の左隣に来て、目の前の詩織の肩を軽くポンと叩いた。
『たぶん心配なんていらないわよ。あの様子だといつもやり慣れてるって感じだから。あの子たち』
早坂さんが詩織に『ほら、にこっと笑いなさい』と言うかのように、詩織に優しく笑顔を見せる。
『あなたもあの子たちのように、心躍るくらいテンション上げたら?』
『あ、えっと…はい…』
詩織はまだ、今も少し戸惑い顔。
『今日は、アイドルデビューを発表するんでしょう?ステージで』
『えっ…』
早坂さんは、また軽くポンポンと2回、詩織の肩を叩いた。
その話を海音さんたちから聞いたんだろう…ってことは容易に想像できる。
『私たちにとって、お客さんの前でライブする日はお祭りみたいなものよ。あの子たちぐらい、今日という日を楽しまなきゃ』
『…はい!あの…ありがとうございます!』
大きくお辞儀をしてお礼を伝えた詩織。
みるみるうちに、詩織は満面の明るい笑顔に変わってゆく。
そんな詩織の表情を見てか、早坂さんは安心したようにまた笑った。
『でも気をつけてね。私は規約とかルールのあれこれについて、若い子たちにあぁだこうだと厳しいことを言うつもりはないけど、他の大御所の人たちの皆がそうなんじゃないんだから』
『はい。気をつけます』
そんな会話をしている中に、スタッフらしき女性が近づいてきた…?
早坂さんもそれに気づいたようで、チラリとその女性を見た。
『早坂美雪さま、特別室への移動は…』
『えぇ。でもごめんなさい。私、この子たちともう少しお話したいから。ここでいいわ』
『あ…あー。えぇと、承知いたしました。失礼します…』
少し困惑した様子を見せながらも、女性スタッフは離れていき、扉を開けて控え室から出ていこうとした。
『きゃっ!』
『おっと。すみません』
扉を開けた拍子に、女性スタッフは危なくぶつかり掛けた…あの人と。
『えっ、池田さん…?』
『あー!変な人ぉ!』
女性スタッフに頭を下げ、こちらへと向かって歩いてきて…。
『…あ?どっちだ!?僕のことを《変な人》って言ったのはぁ!』
詩織が素早く僕を指差す。
『違うよ!詩織だろ!』
『あら?私…って言っちゃう?信吾…』
『…えっ』
…結局、詩織に僕が言ったことにされて、僕は池田さんに謝った…理不尽。
『…ってか、あの大御所演歌歌手の!早坂美雪さんじゃないですかぁ!!』
池田さんは慌てて早坂さんに名刺を差し出し…。
『僕は冴嶋プロダクションの池田と申します…』
『あら。あの冴嶋さんのところの社員さんなのね』
…快く名刺を受け取ってもらってた。
『それで…池田さん。今日はなんでここに?』
そう訊いた詩織を、眼鏡の鼻当てを右手の中指でクイッと上げて、似合わないキリッとした目でじっと見た。
『今日は詩織ちゃんの初ステージライブで、アイドルデビュー発表を初めてする日だろう?』
詩織はキョトンとした目で『…はい』と小さく頷いた。
『だからそれを、ちゃんと見届けにきたんだよ!』
『…そうなんですかぁ。ありがとうございます』
『それと…こんな言葉を聞いたことあるだろう?《池田来るところに事務所からの伝言あり!》ってね!!』
『じゃ…じゃあ、私は向こうで少しゆっくりしてるわね』
『あ、早坂美雪さん。お話できて嬉しかったです。ありがとうございましたぁ♪』
離れていく早坂さん。
その早坂さんに会釈する詩織。
…ほんの1分ほど、池田さんは詩織に無視され続けた。
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