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G.F. - 再始動編 -
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テーブルの上に置かれた電話のスピーカーから、ガチャガチャと何か雑音が聞こえたすぐ…。
「もしもし、冴嶋社長。こんにちわ。理事長の皐月です」
『先日は弊社の所属タレントの岡本詩織ちゃんが、大変お世話になりました』
そして、挨拶とあわせてしばらく他愛な世間話を交わしたすぐ…。
「では、早速ですが…」
『はい』
電話に視線を落としていた冴嶋社長。
ほんの一瞬だけ顔を上げて、僕と視線を交わす…少し緊張する…。
「岡本詩織さんをアイドルとしてデビューさせるということでしたが、どういった経緯からでしたか…?」
『…と、言いますと…?』
…ん?
なんか急に話のトーンというか、雰囲気が変わった…?
急に緊張感が、さらに増したように感じた…。
「FAXで頂いた詩織さん自筆のプロフィールの内容と、詩織さんご本人と私との会話のなかでの、表情や声から伝わる感情の変化、それと会話の内容…」
『皐月理事長は、詩織ちゃんと直接会話をされたんですか…?』
「…からして……えぇ。詩織さんと30分ほど話をしましたよ。それで…」
冴嶋社長は、他にも何か言いたいことがあったのかもしれないんだけれど、皐月理事長のその言葉を聞いてすぐに黙ってしまった。
「私は…いえ、我が養成スクールは…岡本詩織さんはアイドルとしてではなく、女優として育成していくほうが明敏であり将来的に有望であるという判断を、今回の適正評価より導き出し結論づけました」
『…。』
冴嶋社長をじっと見ていた僕。
それが急に気になったのか、黙ったままの冴嶋社長がまた僕を見た…僕は慌てて冴嶋社長の左斜め後ろに置かれた椅子に座っている、美人お姉さん系秘書の朱莉さんに視線を向けて、冴嶋社長との視線を交わさないよう気をつけた。
今、冴嶋社長と向き合って座っていることが、何だか少し気まずく感じる…。
ふと自身を見た僕に、ニコッと愛嬌ある綺麗な笑顔を見せてくれた朱莉さん。普段ならとても嬉しいことなんだろうけど、今は…ごめんなさい。そういうのは求めてないです。
「…それで、冴嶋社長の判断は変わらないままですか…?」
『変わらないとは…どう…?』
「ですから私が冴嶋社長に申し上げたいのは、岡本詩織さんの本心に寄り添わず、本当にアイドルとして活動させるおつもりですか?と言いた…」
『ですが先生、このことは弊社の初見面談並びに、正式な計画会議を通じて…』
…先生?
いつしか冴嶋社長の顔から、余裕さえ感じられていたあの笑顔が完全に消えていた…。
「美智子ちゃん、私はあなたや御社の経営方針などに口を出すつもりはありません。けれど彼女の希望は…」
…美智子ちゃん?
皐月理事長さんと冴嶋社長は、そこまでよく知り合っている間柄…?
「あと…そう。和将くんはどうお考えなの?岡本詩織さんの活動方針について」
『ですから、このことは大槻専務執行役の最終判断をもとに決定されたものです』
「和将くんが?…いいえ、賢明な彼ならそんな判断は」
『でも本当なんです。先生…あ、ちょっとお待ちいただけますか?』
「…えぇ。どうぞ」
冴嶋社長が電話の保留ボタンを押し、また僕を見た。
『岩塚くん、ごめんなさい。ここを退室して2階の事務所隣の控室で待っててもらえる?』
『あ…はい。分かりました』
僕は慌てたように立ち上がり、エレベーターの扉の前まで行った。
エレベーターの階数表示は、2階で止まっていることを表示していた。
冴嶋社長は通話をスピーカーから受話器に換えた…もう皐月理事長の声は聞こえない。
僕はエレベーターのボタンを押した。
『…とは言いましても、この業界のことを何も知らない…子役経験もない詩織ちゃんに女優業を薦めるのは…』
…3…4…5。
エレベーターの扉が開いた。僕はさっと昇降室に乗り込む。
そして振り返って《2》のボタンを押した。
「もしもし、冴嶋社長。こんにちわ。理事長の皐月です」
『先日は弊社の所属タレントの岡本詩織ちゃんが、大変お世話になりました』
そして、挨拶とあわせてしばらく他愛な世間話を交わしたすぐ…。
「では、早速ですが…」
『はい』
電話に視線を落としていた冴嶋社長。
ほんの一瞬だけ顔を上げて、僕と視線を交わす…少し緊張する…。
「岡本詩織さんをアイドルとしてデビューさせるということでしたが、どういった経緯からでしたか…?」
『…と、言いますと…?』
…ん?
なんか急に話のトーンというか、雰囲気が変わった…?
急に緊張感が、さらに増したように感じた…。
「FAXで頂いた詩織さん自筆のプロフィールの内容と、詩織さんご本人と私との会話のなかでの、表情や声から伝わる感情の変化、それと会話の内容…」
『皐月理事長は、詩織ちゃんと直接会話をされたんですか…?』
「…からして……えぇ。詩織さんと30分ほど話をしましたよ。それで…」
冴嶋社長は、他にも何か言いたいことがあったのかもしれないんだけれど、皐月理事長のその言葉を聞いてすぐに黙ってしまった。
「私は…いえ、我が養成スクールは…岡本詩織さんはアイドルとしてではなく、女優として育成していくほうが明敏であり将来的に有望であるという判断を、今回の適正評価より導き出し結論づけました」
『…。』
冴嶋社長をじっと見ていた僕。
それが急に気になったのか、黙ったままの冴嶋社長がまた僕を見た…僕は慌てて冴嶋社長の左斜め後ろに置かれた椅子に座っている、美人お姉さん系秘書の朱莉さんに視線を向けて、冴嶋社長との視線を交わさないよう気をつけた。
今、冴嶋社長と向き合って座っていることが、何だか少し気まずく感じる…。
ふと自身を見た僕に、ニコッと愛嬌ある綺麗な笑顔を見せてくれた朱莉さん。普段ならとても嬉しいことなんだろうけど、今は…ごめんなさい。そういうのは求めてないです。
「…それで、冴嶋社長の判断は変わらないままですか…?」
『変わらないとは…どう…?』
「ですから私が冴嶋社長に申し上げたいのは、岡本詩織さんの本心に寄り添わず、本当にアイドルとして活動させるおつもりですか?と言いた…」
『ですが先生、このことは弊社の初見面談並びに、正式な計画会議を通じて…』
…先生?
いつしか冴嶋社長の顔から、余裕さえ感じられていたあの笑顔が完全に消えていた…。
「美智子ちゃん、私はあなたや御社の経営方針などに口を出すつもりはありません。けれど彼女の希望は…」
…美智子ちゃん?
皐月理事長さんと冴嶋社長は、そこまでよく知り合っている間柄…?
「あと…そう。和将くんはどうお考えなの?岡本詩織さんの活動方針について」
『ですから、このことは大槻専務執行役の最終判断をもとに決定されたものです』
「和将くんが?…いいえ、賢明な彼ならそんな判断は」
『でも本当なんです。先生…あ、ちょっとお待ちいただけますか?』
「…えぇ。どうぞ」
冴嶋社長が電話の保留ボタンを押し、また僕を見た。
『岩塚くん、ごめんなさい。ここを退室して2階の事務所隣の控室で待っててもらえる?』
『あ…はい。分かりました』
僕は慌てたように立ち上がり、エレベーターの扉の前まで行った。
エレベーターの階数表示は、2階で止まっていることを表示していた。
冴嶋社長は通話をスピーカーから受話器に換えた…もう皐月理事長の声は聞こえない。
僕はエレベーターのボタンを押した。
『…とは言いましても、この業界のことを何も知らない…子役経験もない詩織ちゃんに女優業を薦めるのは…』
…3…4…5。
エレベーターの扉が開いた。僕はさっと昇降室に乗り込む。
そして振り返って《2》のボタンを押した。
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