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G.F. - 再始動編 -
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『あ…はい。僕も聞きましたけど…どういうミーティングなんですかね?』
ちなみに《僕も聞きましたけど》っていうのは…その場で反射的に出た嘘。山本さんごめんなさい。
山本さんの電話からは、風が強そうなビュービューという雑音が聞こえていた。
だからたぶん、今の僕のその声は山本さんには届いてなかったんだろうと思う。
山本さんは、僕の問いには答えず…。
『明日も鈴ちゃんとの同行が忙しくて行けないから、ミーティングは岩塚くん一人だけで聞いてほしいの』
『…あ、わかりました。それで…』
『…ミーティングは何時からだったですかね…』という僕の声は届いたらしい。『確か11時からだったわよね…遅刻しないようにね。申し訳ないけど宜しくね』って、山本さんは少し慌てたふうだったけど、電話がそれで突然に切れた。
まぁ…いいや。大丈夫。要件は解ったから。
それにしても、明日の11時から事務所で冴嶋社長とミーティング…?
何のミーティングなんだろう。
冴嶋社長からの僕への電話は…そのあと10分くらい遅れて掛かってきた。
…ということで、次の日も詩織と一緒に電車で堀内芸能事務所へ…ってか、昨夜の葛飾区内の某自動車学校への独り夜間初通学…めっちゃくちゃ緊張したんだけど!
そんな話はいいとして。それでしばらく詩織たちの練習風景を見ていて…。
僕は午前10時15分を過ぎた頃に、堀内芸能事務所を出て冴嶋プロダクションの事務所へ向かった。
『おはようございます…』
『おはよう岩塚くん。突然の呼び出しだったけど、来てくれてありがとう』
冴嶋プロダクションビルの5階…社長室。冴嶋美智子社長に案内され、社長室内の応接席で向かい合ってソファーに座る。
山本さんの不参加については『そのことは電話で聞きました』との社長からの返事。
『11時頃に、タレント養成スクールの方から電話がくるとかで』
『詩織のことについてですよね…』
『そうね。だからマネージャーを務めている、岩塚くんや静恵ちゃんにも一緒に聞いてほしいって思ったの』
綺麗な社長秘書さんの津田朱莉さんが、冴嶋社長と僕に温かいコーヒーを運んで来てくれた。
冴嶋社長は朱莉さんに『ありがとう』とニコッと微笑んだ。
『…それで、何の電話なんでしょうか…?』
『このタレント養成スクールは、ただ教育するだけじゃなくて《タレント適正評価》もしてくれるの。タレントとして向いてるか向いてないか…とか、どの分野が合ってるとか、得意そうだとか…色々ね』
なるほど。つまり詩織のタレント適正評価についての電話…ってことかな。
『11時までにはまだ少し時間があるから…ちょっと待ちましょう』
…午前10時58分。
社長室内の応接席の机に設置されていた電話が鳴った。
冴嶋社長が、電話のスピーカー通話ボタンを押す。
『はい。冴嶋です』
「社長。美咲タレント養成スクールの霜月様からお電話です」
『繋いで』
「かしこまりました」
…しばらく電話は無音となった。
「もしもし。私、美咲タレント養成スクールのトレーニングマネージャーを務めています、霜月紗奈と申します」
ハキハキとした女性の声が、大きく電話のスピーカーから聞こえてきた。
「冴嶋プロダクションの冴嶋美智子社長様でお間違いありませんか?」
『えぇ。私が冴嶋美智子です』
…電話の内容は《岡本詩織さんは、アイドルとしての適正は優良です》《ダンスも歌も問題なし》《自己アピールも積極性もあり、アイドルとしての今後の活躍も、十分期待できると思われます》ってことだった。
でも、突然…。
「…えっ、あ、ちょっ…はい」
…??
電話は…養成スクールのほうで、霜月さんが誰かと話をされているみたい…?
「…あ、冴嶋社長様」
『はい。どうなされました?』
「えぇと…皐月理事長が冴嶋社長様と、直接お話されたいということですので…このままお電話を代わります…」
『…はい』
「少々お待ちください…」
また電話は一旦無音に…。
『…どういうことなの?理事長が私と直接話をしたいって…?』
僕と冴嶋社長は互いを見合った。
まっ、まさか…詩織!
タレント養成スクールで、何か大問題を起こしてた…!?
ちなみに《僕も聞きましたけど》っていうのは…その場で反射的に出た嘘。山本さんごめんなさい。
山本さんの電話からは、風が強そうなビュービューという雑音が聞こえていた。
だからたぶん、今の僕のその声は山本さんには届いてなかったんだろうと思う。
山本さんは、僕の問いには答えず…。
『明日も鈴ちゃんとの同行が忙しくて行けないから、ミーティングは岩塚くん一人だけで聞いてほしいの』
『…あ、わかりました。それで…』
『…ミーティングは何時からだったですかね…』という僕の声は届いたらしい。『確か11時からだったわよね…遅刻しないようにね。申し訳ないけど宜しくね』って、山本さんは少し慌てたふうだったけど、電話がそれで突然に切れた。
まぁ…いいや。大丈夫。要件は解ったから。
それにしても、明日の11時から事務所で冴嶋社長とミーティング…?
何のミーティングなんだろう。
冴嶋社長からの僕への電話は…そのあと10分くらい遅れて掛かってきた。
…ということで、次の日も詩織と一緒に電車で堀内芸能事務所へ…ってか、昨夜の葛飾区内の某自動車学校への独り夜間初通学…めっちゃくちゃ緊張したんだけど!
そんな話はいいとして。それでしばらく詩織たちの練習風景を見ていて…。
僕は午前10時15分を過ぎた頃に、堀内芸能事務所を出て冴嶋プロダクションの事務所へ向かった。
『おはようございます…』
『おはよう岩塚くん。突然の呼び出しだったけど、来てくれてありがとう』
冴嶋プロダクションビルの5階…社長室。冴嶋美智子社長に案内され、社長室内の応接席で向かい合ってソファーに座る。
山本さんの不参加については『そのことは電話で聞きました』との社長からの返事。
『11時頃に、タレント養成スクールの方から電話がくるとかで』
『詩織のことについてですよね…』
『そうね。だからマネージャーを務めている、岩塚くんや静恵ちゃんにも一緒に聞いてほしいって思ったの』
綺麗な社長秘書さんの津田朱莉さんが、冴嶋社長と僕に温かいコーヒーを運んで来てくれた。
冴嶋社長は朱莉さんに『ありがとう』とニコッと微笑んだ。
『…それで、何の電話なんでしょうか…?』
『このタレント養成スクールは、ただ教育するだけじゃなくて《タレント適正評価》もしてくれるの。タレントとして向いてるか向いてないか…とか、どの分野が合ってるとか、得意そうだとか…色々ね』
なるほど。つまり詩織のタレント適正評価についての電話…ってことかな。
『11時までにはまだ少し時間があるから…ちょっと待ちましょう』
…午前10時58分。
社長室内の応接席の机に設置されていた電話が鳴った。
冴嶋社長が、電話のスピーカー通話ボタンを押す。
『はい。冴嶋です』
「社長。美咲タレント養成スクールの霜月様からお電話です」
『繋いで』
「かしこまりました」
…しばらく電話は無音となった。
「もしもし。私、美咲タレント養成スクールのトレーニングマネージャーを務めています、霜月紗奈と申します」
ハキハキとした女性の声が、大きく電話のスピーカーから聞こえてきた。
「冴嶋プロダクションの冴嶋美智子社長様でお間違いありませんか?」
『えぇ。私が冴嶋美智子です』
…電話の内容は《岡本詩織さんは、アイドルとしての適正は優良です》《ダンスも歌も問題なし》《自己アピールも積極性もあり、アイドルとしての今後の活躍も、十分期待できると思われます》ってことだった。
でも、突然…。
「…えっ、あ、ちょっ…はい」
…??
電話は…養成スクールのほうで、霜月さんが誰かと話をされているみたい…?
「…あ、冴嶋社長様」
『はい。どうなされました?』
「えぇと…皐月理事長が冴嶋社長様と、直接お話されたいということですので…このままお電話を代わります…」
『…はい』
「少々お待ちください…」
また電話は一旦無音に…。
『…どういうことなの?理事長が私と直接話をしたいって…?』
僕と冴嶋社長は互いを見合った。
まっ、まさか…詩織!
タレント養成スクールで、何か大問題を起こしてた…!?
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