G.F. -ゴールドフイッシュ-

木乃伊(元 ISAM-t)

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G.F. - 再始動編 -

page.513

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『…って、詩織もその《女性刑事役》やったの?』


詩織は恥ずかしそうに、ちょっとうつむいた。


『だって、男女に別れて全員やるんだっていうんだもん。やるしかないじゃない…』

『あぁ…ね。なるほど』

『でも、凄く恥ずかしかった…』




生徒全員が見ているなか、詩織の演技が終わったあと…俳優さんの講師からは『人前で演じることを恥ずかしがっては駄目』『もう少し声も大きく、動きも大胆に』『私はプロの女優なんだ!…ってつもりで』って、ご指導されたらしい…。




『…ってか、飲まないの?ホットココア。冷めないうちに飲んで…ほら』

『えっ…あ!』


そうだね、って僕は少し冷めはじめたココアをひと口ゴクっと飲もう…と、待てよ。
んん…?

詩織が…何かを期待してるかのように僕を見てる?
…てことは…まっ、まさか!?また僕を揶揄からかおうとしてる…??

これ…ホットココアのふりして、実はただの《ミルク多めのコーヒー》だったり!?
いや待てよ…なんて疑わせてて飲んでみたら…やっぱり本当にホットココアだったり…??

あぁぁーっ!!
詩織の表情からは…何も読み取れない!!本当はどっち!?


『…ねぇ?本当にホットココアなのか…と見せかけて、実はミルクコーヒーだったり…なんて信吾、疑ってたりしない?ふふっ…♪』


…!
心を読まれてる…たぶん、僕の表情から…か?


『飲むよ!これは…本当にホットコ…ん…いや!やっぱり、ミルク多めのコーヒーだ…!!』


僕はゴクゴクと一気に飲み干……あ。

や、やっぱり…ほ、本当にホットココアだった…。


『ホットココアでしたー。はずれー。きゃはははは♪』


詩織は見ていて心地よいくらい豪快に、お腹を抱えて笑ってた。そしてしばらく笑い続けて、疲れたのか…詩織の笑いはようやく止んだ。


『あはは…。ねえ、信吾も覚えておいて。これは大事なことだから』

『…?』

『《心理戦》とか《駆け引き》とか、《ポーカーフェイス》も《嘘をつくとき》も…大事なのは昂然とした態度と《演技力》よ』


…演技力。さすがだ…詩織。
僕はまんまと、詩織の優れたそれを見せ付けられ負けた…ってことか。


『それも、養成スクールで教わったの?』


…って僕が訊くと、詩織は…。


『うぅん。今のは私が高校生のときに見付けた、私だけの私なりの解釈よ』


そう言って、詩織は僕に可愛くニコッ♪とピースをして見せて…。


『信吾、ゲームやろう。実はね…私、Nintendo Switch買ったの。今さらだけど。ゲーム機買うの、私初めてー』







…んまぁ、そんなこんなで…。
僕は《詩織のタレント養成スクール5日目》の話を思い出して、纏めよう。



詩織は、5日目も《俳優デビュー養成コース》へと呼ばれた。
午前も前日と同じように現役女優さんの講義で、午後もまた実演講習。

けど昨日と違うのは、午後の半分…午後3時になって、詩織はあの《年老いた女性の先生?》に呼ばれたこと。
詩織は一人、別室へと呼ばれた。

詩織と先生?はテーブルを挟んで、向き合うように座った。


『こんにちは。岡本詩織さん』

『こ、こんにちは』


その女性の先生らしき人は、ニコリともしなかった。表情は少し硬いまま。


『…私はこのタレント養成スクールの、校長兼理事長の皐月千代香と言います』

『りっ、理事長さんですか…!?』

『いいのよ。そんなに緊張しないで。力を抜いて』


そこでようやく、皐月理事長は初めて詩織に微笑んでくれた。


『私は…これに目を通させてもらいました』


スッとテーブルの上に出された…見たことのある白い用紙。


『気になって、あなたの所属する冴嶋プロダクションさんから、FAXで送信してもらったの』

『これ…私のプロフィール記入用紙…!』


詩織は皐月理事長から『あなたの目指す芸能活動は、アイドルで間違いないかしら?』と訊かれて…少し戸惑いながらも『…はい』と答えた。

そして『じゃあ、詩織さんの憧れのアイドルは?』と訊かれたけど…そもそもアイドルというものに、そんなに興味のなかった詩織は…『…あっ!伊藤鈴ちゃんは前から好きです!それと、木橋みかなちゃんとかかな…。けど他のアイドルの子たちのことは…分かりません』と正直に答えた。
























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