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G.F. - 再始動編 -
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午前10時16分。父さんが町内の寄り合いから帰ってきた。
僕はその頃、顔だけメイクしたままでベッドの上でスマホでゲームをしていた。
「信吾、帰ったぞ」
『おかえり。父さん』
1階から父さんの声。けど、またすぐ…。
「悪いが、ちょっとまた出掛けてくる」
『はーい。行ってらっしゃーい』
玄関扉が《ガラガラ…バタン》と閉まる音がした。
僕はふと何かを思い出したかのように、ゲームを止めてスマホを自分の傍に置いた。
…でも、何であの場に金魚はいなかったのに…今年の《G.F.アワード》の大賞に、金魚が選ばれたんだろう…。
YOSHIKAさんの撮影が終わったあと…雄二さんは冴嶋プロダクションの事務所に寄ってそのまま、アンナさんの待つ藤浦市へと帰っていったんだ。
それと、次の日は12月の第2土曜日…と聞けば、勘のいい人ならすぐ思い出すはず。
…そう。《G.F.》の専属モデル撮影の日。
そしてその土曜日は、僕は朝から詩織の住む葛飾区の賃貸マンションに来ていた…。
『…ふふっ。コーヒー…信吾も飲む?』
詩織が優しい声で、僕にコーヒーを勧めてくれた。
『あ、いや…僕はいいよ』
『美味しいよー。温かいし』
ダイニングチェアーに座り、キッチンでコーヒーを淹れてる詩織を、テーブルに頬杖をついて眺めてた僕。
『人のお気遣いは快く、受け入れるべきよ…はい』
結局…コトンと小さく音を立てて、詩織は僕の分も温かいコーヒーを淹れて持ってきてくれた…。
『うぅん。それコーヒーじゃないから』
『えっ?これ…?』
『甘ぁくて美味しいホットココア。コーヒーの飲めないお子ちゃまには…ね♪』
『お、お子ちゃまって…僕は』
『きゃははははは♪』
めちゃくちゃ笑ってるし…。
僕だって別にコーヒーくらい飲める!ただ遠慮しただけ…。
『雄二さん、今日…《G.F.》の撮影だってね…』
『うん。みたいだね』
藤浦市尾久保区にある笹川ビルディング。その3階には《藤浦市商業開発広告製作委員会》の事務所。
その委員長さんからちゃんとした仕事として、雄二さんにモデルの撮影依頼が来たらしい。
前回…9月の《G.F.》撮影日までは、雄二さんは詩織のモデル撮影専属だったのに。
でも今回は…詩織じゃなくて…。
『…ちょっと寂しい?』
僕が詩織にそう訊くと…。
『うん…ちょっとだけ』
詩織は少し寂し気な表情を僕に見せた。
『でも、今日は信吾といられるから…』
そう言って微笑んだ詩織。
それを見たら…僕は何だか安心した。
YOSHIKAさんは極端に《綺麗!》ってタイプだったけど、詩織は《綺麗と可愛いがバランスよく混在してる》って感じ。
どっちを…なんて言い方をしたら、二人に本当に失礼だけど…。
僕は、やっぱり詩織といるほうが落ち着く。この笑顔を見ると《守ってあげないと!》っていう強い使命感を思い出せる。
『そういえば…タレント養成スクールはどうだった?詩織』
『えっ?』
詩織は凄く辛かった…って訴えかけるような顔をした。
『…もう、凄く嫌で早く帰りたかったぁ…』
うん。それはLINEを見たから僕も分かってる。
『嫌だったってのは、どんなふうに…?』
詩織は『うん…』と小さく頷いた。
『養成スクールに来てた子は、中学生の女の子たちばっかだった…』
…う、うん…。
『…ばっかだったぁ!!』
そんなに強く言わなくても。い、いや分かったから…。
『そんな中学生ばっかりの中に私も混ぜられて!私はダンスとか歌とか体力作りとか!そういうのさせられてたのよ…』
詩織が泣きそうなほど強い視線で、僕をじっと見る。
『しかも少ないけど小学生だっていた…高校生の子もいたけど』
僕らみたいな年齢…20歳にもなって、中学生たちと混ぜられてレッスンを受けるのは、それはちょっと嫌だな…確かに。
『しかも…あの子たちは何!?』
『?』
詩織がひと口、コーヒーを含んでコクンと飲んだ。
『他の子たちは夕方とか夜から来てたのに…学校休んで、合宿までして来てた中学生もいたのよ!』
今さらになって、ここで『あなた達はちゃんと学校に行きなさい!』って怒ってる詩織…。
いや、気持ちはわかるけど…。
『でもね…ひとつ不思議なこともあったの…』
ん?
不思議なこと…?
僕はその頃、顔だけメイクしたままでベッドの上でスマホでゲームをしていた。
「信吾、帰ったぞ」
『おかえり。父さん』
1階から父さんの声。けど、またすぐ…。
「悪いが、ちょっとまた出掛けてくる」
『はーい。行ってらっしゃーい』
玄関扉が《ガラガラ…バタン》と閉まる音がした。
僕はふと何かを思い出したかのように、ゲームを止めてスマホを自分の傍に置いた。
…でも、何であの場に金魚はいなかったのに…今年の《G.F.アワード》の大賞に、金魚が選ばれたんだろう…。
YOSHIKAさんの撮影が終わったあと…雄二さんは冴嶋プロダクションの事務所に寄ってそのまま、アンナさんの待つ藤浦市へと帰っていったんだ。
それと、次の日は12月の第2土曜日…と聞けば、勘のいい人ならすぐ思い出すはず。
…そう。《G.F.》の専属モデル撮影の日。
そしてその土曜日は、僕は朝から詩織の住む葛飾区の賃貸マンションに来ていた…。
『…ふふっ。コーヒー…信吾も飲む?』
詩織が優しい声で、僕にコーヒーを勧めてくれた。
『あ、いや…僕はいいよ』
『美味しいよー。温かいし』
ダイニングチェアーに座り、キッチンでコーヒーを淹れてる詩織を、テーブルに頬杖をついて眺めてた僕。
『人のお気遣いは快く、受け入れるべきよ…はい』
結局…コトンと小さく音を立てて、詩織は僕の分も温かいコーヒーを淹れて持ってきてくれた…。
『うぅん。それコーヒーじゃないから』
『えっ?これ…?』
『甘ぁくて美味しいホットココア。コーヒーの飲めないお子ちゃまには…ね♪』
『お、お子ちゃまって…僕は』
『きゃははははは♪』
めちゃくちゃ笑ってるし…。
僕だって別にコーヒーくらい飲める!ただ遠慮しただけ…。
『雄二さん、今日…《G.F.》の撮影だってね…』
『うん。みたいだね』
藤浦市尾久保区にある笹川ビルディング。その3階には《藤浦市商業開発広告製作委員会》の事務所。
その委員長さんからちゃんとした仕事として、雄二さんにモデルの撮影依頼が来たらしい。
前回…9月の《G.F.》撮影日までは、雄二さんは詩織のモデル撮影専属だったのに。
でも今回は…詩織じゃなくて…。
『…ちょっと寂しい?』
僕が詩織にそう訊くと…。
『うん…ちょっとだけ』
詩織は少し寂し気な表情を僕に見せた。
『でも、今日は信吾といられるから…』
そう言って微笑んだ詩織。
それを見たら…僕は何だか安心した。
YOSHIKAさんは極端に《綺麗!》ってタイプだったけど、詩織は《綺麗と可愛いがバランスよく混在してる》って感じ。
どっちを…なんて言い方をしたら、二人に本当に失礼だけど…。
僕は、やっぱり詩織といるほうが落ち着く。この笑顔を見ると《守ってあげないと!》っていう強い使命感を思い出せる。
『そういえば…タレント養成スクールはどうだった?詩織』
『えっ?』
詩織は凄く辛かった…って訴えかけるような顔をした。
『…もう、凄く嫌で早く帰りたかったぁ…』
うん。それはLINEを見たから僕も分かってる。
『嫌だったってのは、どんなふうに…?』
詩織は『うん…』と小さく頷いた。
『養成スクールに来てた子は、中学生の女の子たちばっかだった…』
…う、うん…。
『…ばっかだったぁ!!』
そんなに強く言わなくても。い、いや分かったから…。
『そんな中学生ばっかりの中に私も混ぜられて!私はダンスとか歌とか体力作りとか!そういうのさせられてたのよ…』
詩織が泣きそうなほど強い視線で、僕をじっと見る。
『しかも少ないけど小学生だっていた…高校生の子もいたけど』
僕らみたいな年齢…20歳にもなって、中学生たちと混ぜられてレッスンを受けるのは、それはちょっと嫌だな…確かに。
『しかも…あの子たちは何!?』
『?』
詩織がひと口、コーヒーを含んでコクンと飲んだ。
『他の子たちは夕方とか夜から来てたのに…学校休んで、合宿までして来てた中学生もいたのよ!』
今さらになって、ここで『あなた達はちゃんと学校に行きなさい!』って怒ってる詩織…。
いや、気持ちはわかるけど…。
『でもね…ひとつ不思議なこともあったの…』
ん?
不思議なこと…?
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