Ｇ.Ｆ. -ｺﾞｰﾙﾄﾞﾌｲｯｼｭ-

G.F. - 再始動編 -

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「そうか…じゃあ安心かな」


そう言ったあとに、池田さんは「じゃあ、まぁそれはもういいんだけど」と続けて…。


「今日この電話は、大槻専務取締役からの伝言があってのことなんだけど」

『大槻専務さんから伝言？…ですか？』


何の話？かと思って聞いていたら…！

大槻専務取締役から《来週の月曜日から、葛飾区某所の自動車学校に通い、自動車普通免許を取得すること》って…！


「岩塚くんはしばらく山本さんの下で、詩織ちゃんの《専属サブマネージャー兼メイク担当》として働く予定だろう？」

『まぁ…はい』


…僕のこの電話の最中でも、モデルのYOSHIKAさんの撮影は進んでいた。


「山本さんは担当するタレントも多いし大変なんだ。ましてや送迎できる担当タレントの数ってのにも限界があるし」


…確かに。
だから僕に《免許を取りなさい！》ってことらしい。


「まぁ、自動車学校の学費は、うちの会社が半分負担するって言ってるし。ってことで来週から車校頑張れー。岩塚くん」



…って言って、池田さんは一方的に電話を切った…！
あっ、くそっ…。

池田さんに『YOSHIKAさんに僕のLINEを教えたのは池田さんじゃないですか！？』って、真実を訊こうと思ってたのに…。
まぁ…いいや。絶対に池田さんなんだって、僕も解ってるから…。







…今日の前半の《美人バーテンダーのYOSHIKAさん》の撮影がささっと終わり、後半の《クリスマスイルミネーションが輝く東京駅の駅前でのモデル撮影》も、１時間掛からないくらいで無事に終わって…。

時刻は午後４時を少し過ぎた頃。空が暗くなる前に撮影を済ませたい…ってことで、今日の撮影は少し早く終わった。


『じゃあお先に帰るね。信吾くん♪…はい。約束のこれ』


YOSHIKAさんから手渡された長方形の白い封筒…。
中身は…僕は解ってる。


『えっ…いや、いいですよ。お気持ちだけで』

『ダメよ。約束なんだから』


僕は『…ありがとうございます』って、丁寧にYOSHIKAさんに頭を下げた。


『最終日の明日は、普通の格好でいいよ』

『はい』

『だけど、今度また…女装した信吾くんでディナー誘わせてね』


そう言うと、YOSHIKAさんは僕に可憐に手を振り、マネージャーである男性と車に乗って、一緒に帰っていった…。


『よし。じゃあ俺らも帰るか。金魚』

『…はい。雄二さん』


来週から…遂に僕も自動車学校かぁ。緊張するなぁ…。







…そして、YOSHIKAさんの撮影最終日。
それと今日から12月。

『タレント養成スクール！もう嫌だぁぁ…』って、何が理由なのか言ってた詩織も、今日でそれから解放される。
YOSHIKAさんが『最終日の今日は普通の服でいい』って言ってたから、それに従って普通の服で出掛ける支度をする。

今日は雄二さんは、午前10時頃に迎えに来てくれるって言ってた…。







…今日のYOSHIKAさんの撮影は、１回の撮影だけで済んだ。時間にして約１時間半。

午後２時14分。都内某所の撮影スタジオで、この４日間続いた撮影がようやく終了。
撮影のための、ちょっと早めの振袖姿のYOSHIKAさんが、監督…雄二さん…ヘアメイクのお姉さん…その次に、僕のところへ来てくれて握手を交わした。


『４日間ありがとうね！お疲れ様。信吾くんのおかげで、この４日間ずっと楽しかったよ！』

『はい。僕も色々ととても勉強になりました。YOSHIKAさん、ありがとうございました』


YOSHIKAさんは僕と『また絶対会おうね♪』と僕と約束を交わし、向こうの撮影スタッフの集まるところへと向かって離れていった。


『今日は早く済んだな。信吾はどうする？アパートに帰るか？』


僕が雄二さんに『雄二さんは、どうするんですか？』って訊いたら『とりあえず、終了報告に冴嶋芸能事務所に寄る』って言ったから、僕も付いて行くことにした。
しばらくしたら、詩織も冴嶋プロダクションの事務所に来るはずだから。詩織を迎えてあげたいし。


『皆さん、ありがとうございました』


僕はスタッフの皆さんに深々と一礼した。
スタッフの皆さんも、僕をたくさん褒めてくれ……たん…だ…。







「…おはよーう。信ちゃーん…もう朝よー」