Ｇ.Ｆ. -ｺﾞｰﾙﾄﾞﾌｲｯｼｭ-

G.F. - 再始動編 -

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『ごめんなさい…』『雄二さんを、芸能界から追い出すことになってしてしまったのは、私の罪…』『もう、絶対どこにも行かないでください…！』とそう言い謝り、時々鼻を啜すすり、流れる涙が止まらなかった高須賀あずさ人事部長。

対して、優しく笑いながら『あずさは悪くない』『あずさのせいじゃないさ』『あの頃の俺が悪かったんだ』と言って返していた、天才カメラマンの中澤雄二さん。



そういえば…先日、詩織と高須賀人事部長がこれに関した話をし掛けたときには、冴嶋社長は『その話はあとにして』って言ってたけど、今日は…。


『いつまで芸能活動してたんだ？』

『26歳まで。それからは冴嶋社長のお取り計らいで、人事部に所属させてもらったんです。部長になったのは４年前で…』

『結婚は？』

『あっ、えっと…4歳下の婿養子を貰いまして、今６歳の息子が一人います』

『そうか。よかった』

『雄二さんは？結婚は…』


『あずさちゃん、雄二くん』


雄二さんも高須賀人事部長も『！』って顔をして、そおっと冴嶋社長を見た。
冴嶋社長は、優しい笑顔をお二人に見せていた。


『では…会議が始まるのは午前10時からです。それまでは許します。10時になったら話の途中でも止めますよ。いいですね？』


『はい。すみません』
『お気遣いありがとうございます。冴嶋社長』


謝ったすぐに、高須賀人事部長が…。


『あの、社長…私だけ雄二さんが来ることを知らなかったって、これって…』

『ふふっ。あずさちゃんへの《びっくりサプライズ》よ』

『えー』






…午前10時までの約12分間、雄二さんも高須賀人事部長も、感情から溢れる言葉は途切れることなく、ずっとあれこれと話し続けた。

結局、冴嶋社長から『午前10時になりましたよ。お話の続きは今夜のディナーのお共に取っておいて』と中断を言われ、一旦終了した。

とにかく今日をきっかけに、15年以上も前に始まって長きに渡り続いていた《高須賀あずささんの初恋事件とその物語》はそろそろラストシーンに入って、誰かがそれを知るということもなく、ひっそりと幕を閉じるんだ…良かった。







『…ということで、冴嶋社長からお伝えされたとおり、岩塚くんは今日から５日間、中澤雄二さんの撮影にメイク担当として付き添うことで。お願いしますよ…と』


池田さんがそう僕に話してすぐに、急に立ち上がった。


『今さらで申し遅れましたが…初めまして。僕は高須賀あずさ部長の部下の池田孝良と言います。今後は宜しくお願いします』


池田さんが雄二さんに、深々と頭を下げて初対面の挨拶をした…って、本当に今さら！？





とりあえず…今日は午後から雄二さんに付き添って、東京千代田区某所にある《飯田プロダクション》入って、23歳の女性モデルの《YOSHIKA》さんという人の撮影の打ち合わせをする…ってらしい。

そして明日から金曜日までの４日間、時間や撮影場所は様々だけど、一区切り一区切りしながら撮影するんだとか。







更にまた次の日…。
時刻は午後１時52分。撮影場所は都内の高級ホテル。

雄二さんと僕がそのホテルに着いた頃には、モデルのYOSHIKAさんは少し狭い一室のドレッサーの前に座っていて、女性のヘアメイクさんもその隣に立って待っていた。


『おはようございます…カメラマンの中澤雄二です』

『あ、おはようございます。今日から４日間よろしくお願いしまーす』


YOSHIKAさんが立ち上がって挨拶。

僕はゆっくりと、この少し狭い一室をふと見回してみると…監督さんだろう男の人と、何の担当なのか判らないけど…スタッフさんが何人かいた。


『…で、こっちの若造が、モデルさんのメイクを担当する岩塚信吾』

『えっ、待って！』


YOSHIKAさんが、目を円くして僕を見る。


『えぇ…う、嘘でしょ？この子、男の子だけど。しかも凄く若いし…っていうかメイク、本当にできるの！？』