G.F. -ゴールドフイッシュ-

木乃伊(元 ISAM-t)

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G.F. - 再始動編 -

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11月の第4金曜日。時刻は午前9時12分。
僕は江東区の《冴嶋プロダクションビル》に到着。そして何人かの社員さんと混じってエレベーターに乗り、2階の事務所へ。

僕の今日の服装は女装…じゃないよ。ってかもうしばらくは、女装は控えさせてほしい…。
アパートでは女装しないあいだも、週に2、3回は訓練を兼ねてメイクする予定だけど。

エレベーターを降り、事務所に入ると…えぇと。池田さんは…?
ゆっくりと、キョロキョロと事務所内を見回す僕。
すると張り切ったように、手を振って駆けてきてくれた池田さん。


『おー!おはよーう、岩塚くん!』

『おはようございます』

『隣の控え室で待ってて。詩織ちゃんももう来てるから』

『わかりました』


やっぱり先に来てたかぁ詩織。ということで、事務所を出て隣の控え室へ。


『おはよう。詩織』

『信吾、おっはよーぉ♪』


詩織に『何時に来たの?』って訊くと『8時47分くらい?』って、早すぎでしょ…。


詩織は控え室に置いてあるロングソファーに座っていた。
そして僕もその隣に座った。


『じゃあここで今まで、何して待ってたの?』

『へへっ。久しぶりにねぇ、iPhoneで見てたの』


ちなみに《カラフル》とは、僕らの地元?の藤浦市のお洒落な女の子たちが集まる情報サイト《★Colorful-Girlsカラフル・ガールズ★》のこと。


『へぇ。で、何か書いてあった?』

『…うん』


詩織が、少し寂しそうな表情を僕に見せた。


『《金魚ちゃんと詩織ちゃんが居なくなって寂しい》って…』


詩織は『他には《詩織ちゃんも金魚ちゃんも芸能界に入るために東京へ行ったよ》って、まるで噂みたいに書いてあった』って教えてくれた。


『あっ!それと!』

『えっ?なに??』


急に詩織の顔が一変して、手をパチンと叩いて叫ぶように言った。


『ヤバいよ!来年の春、彩乃ちゃんが大学を卒業したら東京に来るんだって!』

『なっ、なんで!?』

『あの《Starlight-Office Kira♠︎m》に入るとかって!』


…すたーらいとおふぃす…きらむ??
僕は詩織と違って、芸能界とかテレビの何とやらにめちゃくちゃうとい僕…。
《あの》って言われても…。有名なのかな?それ。


『えっ?まさか信吾…知らないわけないよね?《キラム》』

『ま…まさかぁ。それくらいぼっ、僕だって知ってるよ…げ…芸能事務所とかでしょ…?きらむって…』

『…本当に?』


じーっと、つい嘘をついてしまった僕を見る、詩織の刺さるような…疑いの目…うぅ。


『逃げないで。私の目をちゃんと見なさい!』

『えぇ…』


…なんでいつも詩織ってこういう時、僕を追い詰めようとするの…。

誰か…た、助けて…。


『じゃあ…キラムに所属するタレントさん、一人でいいから言ってみて…?』


どっ、どどうしよう…!!
ここは当てずっぽで、知ってるフリでなんとか…。


『……さ、桜井…花子』

『…は?えっ、誰それ??きゃはははははー♪』


参りました…僕の負けです…。
『きゃはははー、お腹いたーい』って、大笑いしている詩織…。

ようやく笑いが止まって『朝から笑わせてくれてありがとっ♪信吾』って…なんのお礼だか…。





『彩乃ちゃん、寿鶴殿っていう結婚式の会社の専属モデルしてたでしょ?ウェディングドレスの』

『あー。うん。してたね』

『その専属モデルのお仕事の繋がりで、紹介されたのか…新人モデルとして《キラム》に入るんだって』


その詩織の言葉を最後に、しばらく見合ってた僕ら。


『本っ当嫌ね…来なきゃいいのに…彩乃ちゃん』

『だね…』


…一瞬、体がブルっと震えた。今後、彩乃と出会ったり関わることはないだろうか…。
ふと脳裏に不安がよぎる…。


『あーらら。ごめんね。お待たせしちゃって』


マネージャーの山本さんが控え室に入ってきた。


『時間厳守どころか早く来てくれて。嬉しいわ。二人とも』

『あー。おはようございまぁす』
『おはようございます。山本さん』























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