13 / 162
G.F. - 再始動編 -
page.492
しおりを挟む
『芸能界とは…特別技量や能力をもった才者が集まり、協力し合い創り上げて、それを余すことなく披露し、または提供して全国民が楽しみ喜び求められることで存続する…《スーパーエンターテイメント業界》』
『特別な才能…って、例えば綺麗なスタイルとか顔が可愛いとかもそうだけど、演技力とか歌唱力とか…頭が良いとかトークが上手とか…これまでの幸運もだけど、他にもたくさん』
大槻専務取締役の言葉に補足するように、冴嶋社長も続いてそう語った。
『…それでだ。君が続けてきた《無尽の努力》は《恥ずかしいこと》だと?…それは違うとは岩塚くん…君は思わないか?』
『あの…』
僕と大槻専務取締役とのやり取りを、他の役員幹部の人たちは黙ってじっと聞いてた。
『我々と同じように、君の素晴らしい才能が芸能界で活躍する姿を…突然現れた奇跡とも云えるほどの、君の女装やメイクの完成度を見たい…全国民の多くが《君が起こす、その奇跡とも言える姿を見たい》と…そう思うだろう。そしてその《君の活躍》によって、世の経済や大金が大きく動き、芸能界や我が社がもっと成長し発展していく…違うだろうか?』
ぐうの音も出ない僕をじーっとしばらく見て、大槻専務取締役はまた大きく頷いた。
『冴嶋社長。彼の芸能界デビューの日については、今まで以上に慎重に協議し決めなければなりません』
『えぇ。そうね。分かりました』
『上手くいけば彼の存在と才能が、この芸能界や世間のあらゆる話題を収奪し、我が冴嶋プロダクションを更に大きく成長させてくれると考えます』
僕のデビューの日については…?
…の日について《も》じゃなくて…?
じゃあ詩織のデビューの日については??
もし、詩織のデビューのことを差し置いて、そんな話が進んでいたとしたら…。
だったらまるで、詩織の芸能界デビューなんかそんな重要じゃない。そんなことよりも、僕のデビューのほうが重要…みたいな言い方じゃないか…?
『岩塚信吾くん。君に一つ頼みたい』
…なんだろう。この重い気持ち…。
何だか大槻専務取締役のその言い方に、大きく憤りを感じて、少しムカムカしてきた。
『何ですか?』
『君の《デビューを1年控える》というのを《最長で1年》と変更させてくれないか?』
僕は今にも言いたいことを、ついハッキリと言ってしまった。
『詩織のデビューのことも、ちゃんと大切に考えてくれると約束してもらえるなら…考えてみてもいいです』
『ちょっと!信吾…そんな言い方!』
詩織は目を円くして僕の横顔を見てた…けど、僕は振り向かなかった。
あの専務取締役は、詩織のことを全然何も解ってない…!
『ふふっ…そうだよな。けれど安心してくれ。ちゃんと考えるよ』
ってか最長1年って…極端な例えだけど…2ヶ月後に《池川金魚、芸能界デビュー!》なんてこともあるってこと…?
…えぇ?それは勘弁してほしい…。
『岡本くんが《本当は女優になりたい》という、勇気ある心のうちも聞いたよ。だが彼女はまずは…新人アイドルとして』
『それを詩織が嫌がったら、詩織はここでは働けないんですか…?』
突然、詩織が僕の手をギュッと握ってきた。
それでようやく僕は、詩織と視線を交わらせた。
『信吾…もう大丈夫なの。そのお話しはちゃんと、話し合って終わったの』
『君らは従業員採用試験の場に来たんじゃないんだ。我々はこの事務所に所属するタレントとして、君たちに働いてほしいと思っている』
『安心して。岩塚くん。ここでは《あなた達の今後の活動方針を確かめて協議している》だけなんだから』
大槻専務取締役に続いて高須賀人事部長がそう言って、僕を安心させてくれた。
『でっ、では皆さま…そろそろお時間です。これにて初見面談を…』
池田さんがそう言い掛けたとき…あっ!
『いやいや…すみません、遅れました。ごめんなさい。ドラマの撮影が予定より長くなっちゃいまして…』
『あっ、浅見さん!』
『浅見丈彦さん!』
『特別な才能…って、例えば綺麗なスタイルとか顔が可愛いとかもそうだけど、演技力とか歌唱力とか…頭が良いとかトークが上手とか…これまでの幸運もだけど、他にもたくさん』
大槻専務取締役の言葉に補足するように、冴嶋社長も続いてそう語った。
『…それでだ。君が続けてきた《無尽の努力》は《恥ずかしいこと》だと?…それは違うとは岩塚くん…君は思わないか?』
『あの…』
僕と大槻専務取締役とのやり取りを、他の役員幹部の人たちは黙ってじっと聞いてた。
『我々と同じように、君の素晴らしい才能が芸能界で活躍する姿を…突然現れた奇跡とも云えるほどの、君の女装やメイクの完成度を見たい…全国民の多くが《君が起こす、その奇跡とも言える姿を見たい》と…そう思うだろう。そしてその《君の活躍》によって、世の経済や大金が大きく動き、芸能界や我が社がもっと成長し発展していく…違うだろうか?』
ぐうの音も出ない僕をじーっとしばらく見て、大槻専務取締役はまた大きく頷いた。
『冴嶋社長。彼の芸能界デビューの日については、今まで以上に慎重に協議し決めなければなりません』
『えぇ。そうね。分かりました』
『上手くいけば彼の存在と才能が、この芸能界や世間のあらゆる話題を収奪し、我が冴嶋プロダクションを更に大きく成長させてくれると考えます』
僕のデビューの日については…?
…の日について《も》じゃなくて…?
じゃあ詩織のデビューの日については??
もし、詩織のデビューのことを差し置いて、そんな話が進んでいたとしたら…。
だったらまるで、詩織の芸能界デビューなんかそんな重要じゃない。そんなことよりも、僕のデビューのほうが重要…みたいな言い方じゃないか…?
『岩塚信吾くん。君に一つ頼みたい』
…なんだろう。この重い気持ち…。
何だか大槻専務取締役のその言い方に、大きく憤りを感じて、少しムカムカしてきた。
『何ですか?』
『君の《デビューを1年控える》というのを《最長で1年》と変更させてくれないか?』
僕は今にも言いたいことを、ついハッキリと言ってしまった。
『詩織のデビューのことも、ちゃんと大切に考えてくれると約束してもらえるなら…考えてみてもいいです』
『ちょっと!信吾…そんな言い方!』
詩織は目を円くして僕の横顔を見てた…けど、僕は振り向かなかった。
あの専務取締役は、詩織のことを全然何も解ってない…!
『ふふっ…そうだよな。けれど安心してくれ。ちゃんと考えるよ』
ってか最長1年って…極端な例えだけど…2ヶ月後に《池川金魚、芸能界デビュー!》なんてこともあるってこと…?
…えぇ?それは勘弁してほしい…。
『岡本くんが《本当は女優になりたい》という、勇気ある心のうちも聞いたよ。だが彼女はまずは…新人アイドルとして』
『それを詩織が嫌がったら、詩織はここでは働けないんですか…?』
突然、詩織が僕の手をギュッと握ってきた。
それでようやく僕は、詩織と視線を交わらせた。
『信吾…もう大丈夫なの。そのお話しはちゃんと、話し合って終わったの』
『君らは従業員採用試験の場に来たんじゃないんだ。我々はこの事務所に所属するタレントとして、君たちに働いてほしいと思っている』
『安心して。岩塚くん。ここでは《あなた達の今後の活動方針を確かめて協議している》だけなんだから』
大槻専務取締役に続いて高須賀人事部長がそう言って、僕を安心させてくれた。
『でっ、では皆さま…そろそろお時間です。これにて初見面談を…』
池田さんがそう言い掛けたとき…あっ!
『いやいや…すみません、遅れました。ごめんなさい。ドラマの撮影が予定より長くなっちゃいまして…』
『あっ、浅見さん!』
『浅見丈彦さん!』
1
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
失恋少女と狐の見廻り
紺乃未色(こんのみいろ)
キャラ文芸
失恋中の高校生、彩羽(いろは)の前にあらわれたのは、神の遣いである「千影之狐(ちかげのきつね)」だった。「協力すれば恋の願いを神へ届ける」という約束のもと、彩羽はとある旅館にスタッフとして潜り込み、「魂を盗る、人ならざる者」の調査を手伝うことに。
人生初のアルバイトにあたふたしながらも、奮闘する彩羽。そんな彼女に対して「面白い」と興味を抱く千影之狐。
一人と一匹は無事に奇妙な事件を解決できるのか?
不可思議でどこか妖しい「失恋からはじまる和風ファンタジー」
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
化想操術師の日常
茶野森かのこ
キャラ文芸
たった一つの線で、世界が変わる。
化想操術師という仕事がある。
一般的には知られていないが、化想は誰にでも起きる可能性のある現象で、悲しみや苦しみが心に抱えきれなくなった時、人は無意識の内に化想と呼ばれるものを体の外に生み出してしまう。それは、空間や物や生き物と、その人の心を占めるものである為、様々だ。
化想操術師とは、頭の中に思い描いたものを、その指先を通して、現実に生み出す事が出来る力を持つ人達の事。本来なら無意識でしか出せない化想を、意識的に操る事が出来た。
クズミ化想社は、そんな化想に苦しむ人々に寄り添い、救う仕事をしている。
社長である九頭見志乃歩は、自身も化想を扱いながら、化想患者限定でカウンセラーをしている。
社員は自身を含めて四名。
九頭見野雪という少年は、化想を生み出す能力に長けていた。志乃歩の養子に入っている。
常に無表情であるが、それは感情を失わせるような過去があったからだ。それでも、志乃歩との出会いによって、その心はいつも誰かに寄り添おうとしている、優しい少年だ。
他に、志乃歩の秘書でもある黒兎、口は悪いが料理の腕前はピカイチの姫子、野雪が生み出した巨大な犬の化想のシロ。彼らは、山の中にある洋館で、賑やかに共同生活を送っていた。
その洋館に、新たな住人が加わった。
記憶を失った少女、たま子。化想が扱える彼女は、記憶が戻るまでの間、野雪達と共に過ごす事となった。
だが、記憶を失くしたたま子には、ある目的があった。
たま子はクズミ化想社の一人として、志乃歩や野雪と共に、化想を出してしまった人々の様々な思いに触れていく。
壊れた友情で海に閉じこもる少年、自分への後悔に復讐に走る女性、絵を描く度に化想を出してしまう少年。
化想操術の古い歴史を持つ、阿木之亥という家の人々、重ねた野雪の過去、初めて出来た好きなもの、焦がれた自由、犠牲にしても守らなきゃいけないもの。
野雪とたま子、化想を取り巻く彼らのお話です。
僕とお父さん
麻木香豆
キャラ文芸
剣道少年の小学一年生、ミモリ。お父さんに剣道を教えてもらおうと尋ねるが……。
お父さんはもう家族ではなかった。
来年の春には新しい父親と共に東京へ。
でも新しいお父さんが好きになれない。だからお母さんとお父さんによりを戻してもらいたいのだが……。
現代ドラマです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる