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G.F. - 再始動編 -

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…僕は控え室の壁掛け時計を何度も見ながら、金魚になるための準備を急いでいた。

詩織のためにも…1秒でも早く戻ってあげないと。







…よし。できた。

今日の金魚の服装は…明るい灰色の少し余裕あるサイズのニットのタートルセーターに…スカートは膝丈の黒色のトレンチスカート。腰のベルトも灰色…って、セーターが被ってて隠れてるけど。そしてベージュのストッキングを履いて…靴は太い6cmヒールの革製赤茶色ミニブーツ。

髪型は相変わらず、ショートのウルフレイヤー。
うーん。後ろ髪を手櫛で整えて、前髪をちょっと摘んで直して…左耳には忘れず《赤姫と黒助くん》。

メイクなら任せて。
いつもどおりの《ファンデ薄めでリップも薄ピンク。チークも濃くない超ナチュラル柔らかすっぴん系メイク》。

…名前長い?




準備が済んだ僕は控え室を出て、慌ててエレベーターへと向か…ん?

エレベーターの目の前に…ちょっとやんちゃそうな、めちゃくちゃモテそうなイケメン男子が…。
見た目…年齢は僕らとあんまり変わらない?
服はストリート系のパーカーで、そしてダボっとしたジーパンのポケットに、両手を突っ込んでそこに立っている。

僕が慌ててパタパタと走って近づいてきたもんだから、そのイケメン男子はゆっくり振り向いて僕を見た…。


『は?誰?…お前』

『えっ?…えぇと、その…』


タイミングが良かったのか悪かったのか…エレベーターの扉が今開いた。


『…いいよ。先に乗れよ』

『あっ、あ…ありがとう』


僕はささっとエレベーターに乗った。続いてイケメン男子もエレベーターに乗る。


『何階?』

『あ、はい!3…で』

『3階?』

『はい…』


…ん?イケメン男子くん…?
押して…エレベーターの階数のボタン…?


『会議室か?そういやぁ今日、新人のオンナが来るって言ってたなぁ…』


あの…僕、急いでるんで。押してよ…3階のボタン。


『じゃ、アイドル志望のオンナって…お前?』

『い、いやぁ…』


たぶん詩織のことを言ってるんだろうけど…詩織はアイドル志望じゃない。
本当は女優になりたいんだから…ってか、このイケメン男子って誰??


『違うんか?ふぅん…んま、じゃいいけど』


やっと謎のイケメン男子がボタンを押してくれた。
彼は3階のほかに4階のボタンも押した。
そして動き出すエレベーター。


『お前…名前は?』
《3階です…ドアが開きます》


2階から乗って3階だから、エレベーターの扉はすぐ開いた。

僕は名前を言わず『今急いでるんで…!』って言って、エレベーターから慌てて降りた。

エレベーターの扉が閉じる…。
ほんと誰だったんだろう…ぶっきらぼうな話し方の、今のイケメン男子…。




ちょっと早歩きで、今使っている会議室の扉の前へ来た。
一旦深呼吸をして…ドアをノック。

《コンコンコン…》

もう一度、深呼吸…。


『すみません…遅くなりました…』


そう言い終えるか言い終わらないかのうちに、扉が開いた。


『おかえり。金魚♪』


いつもの明るい詩織の笑顔。


『戻って座ろう』

『うん』


詩織が先に、自分の座っていたパイプ椅子に座る。
僕も座っていたパイプ椅子へと戻って座ろうとす…。


『岩塚くん。待って』

『!』


冴嶋社長が、それを止めた。
僕はパイプ椅子の前で立ったまま。


『皆さん、どうですか?』

『彼女が…本当にさっきの彼ですか…?』

『えぇ。そうよ。大槻専務』


池田さんが慌てたように、司会進行を進めはじめた。


『それでは…続きまして彼のご紹介を始めます』


池田さんから『どうぞ』と勧められて…。


『えぇと…岩塚信吾です…20歳です。です。宜しくお願いします…』


『ぇ、今…何って?名前…?』


高須賀あずさ人事部長のそれに、すぐに詩織が反射的に答えてくれた。


『池川金魚です。信吾が女の子になったときの名前です。池川金魚…ねー♪』


詩織は座ったまま、可愛らしい笑顔で…僕の顔を見上げた。

























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