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G.F. - 再始動編 -
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【岡本詩織】
…そうリクエストしてくれた冴嶋社長さんに、私はできるだけ明るい笑顔で大きく頷いて、ゆっくりと立ち上がりました。
『enchanté. Je m'appelle Shiori Okamoto. Enchanté de faire votre connaissance.』
私はフランス語で『初めまして。私の名前は岡本詩織です。お会いできて嬉しいです』と、ゆっくりと言いました。
『かっこいい!皆さんもそう思いますよね!』
そう言って、高須賀あずささんが私に拍手を送ってくれました。
他の方たちも高須賀あずささんに賛同して『凄いねぇ』って喜んでくれました。
今のでちょっとだけ気分が回復できました。
私は今度は本当の笑顔で、一礼してまた座りました。
『あと…社交ダンスも踊れるの?』
初めて山本静恵さんが、私に訊いてきてくれました。
『えっと、踊れるっていうか…子どもの頃にジュニアでちょっとやってたぐらいです』
『静恵ちゃんも社交ダンスやってたよね?ここで詩織ちゃんと組んで踊ってみたら?』
冴嶋社長さんが、山本さんにそう言いました。
山本さん、社交ダンスやってるんだぁ。
『あ、じゃあ…』
私は小走りに、山本さんの元へ駆け寄りました。
『えっ?待って。踊りはしないけど…じゃあ組んでみましょう。組むだけでも少しは判るから』
私は立ち上がった山本さんと組んで、社交ダンスの基本姿勢をとりました。
少しそのままの姿勢のあと、ちょっとしてすぐに山本さんは私をゆっくりと放しました。
『えぇ。これは本当に社交ダンスやってましたね。詩織ちゃんの基本姿勢、とても綺麗だと思います』
…なぜか、急に恥ずかしくなっちゃって…。
私はまた小走りで、自分の席へと戻りました。
『ほら…今見てて思ってたんだけど、彼女は歩き方も整ってて綺麗なんじゃない?』
『大槻専務。ちゃんと本気で社交ダンスをやってた女の子は、みんな歩き方は綺麗なんです』
そう大槻専務さんに言いながら、山本さんもまた席に戻りました。
『細くてスタイルもいいし、顔は可愛いし、綺麗なウォーキングもできるのなら、詩織さんの衣装モデルの活動も本格的に考慮しても良さそうですね』
…って、あずささん!やめてください!
褒めすぎ恥ずかしいです!照れちゃいますってば!凄く心地いいですけど!
『あー。それアリかもしれないね…うん』
そう言ったあと、私のプロフィールをコピーした用紙の隅に、何かメモしてる様子の渡部副社長さん。
『詩織さん』
『あ、はい!』
照れてる場合じゃない。
高須賀あずささんに呼ばれて、私は慌てて顔を上げました。
『あなたが《女優に憧れてる》ことは解ったし、《すぐには女優には成れない》ことを私たちがあなたに伝えて、少し落胆してるかもしれないけど』
『…はい』
『詩織さんは《アイドルが嫌なら、ここで働けないんですか?》って心配してたわよね?』
『…。』
ほんの少し言葉が止まって、私を見たあと…あずささんは優しそうな笑顔で、小さく頷いてくれました。
『あなたにはたくさんの才能も、あと色々な可能性もあることが解ったから。だから』
『私の才能?…ですか?』
あずささん…気持ちいいくらいの美人さん。
そんなあずささんが、女神さまのような綺麗な笑顔を見せてくれたあと…。
今度は冴嶋社長さんが私に話しました。
『そうよ。フランス語が話せるし、社交ダンスの経験もある。だから歩き方も綺麗なのよね。それにスタイルも良くて、顔も耳心地のいい声も可愛らしいし』
…いやぁ…ごめんなさい。ほんと照れちゃいます。
私の才能…解っちゃいましたかぁ…♪
『あとは…芸能界でやっていける度胸がどれほどあるか…だね』
渡部副社長さん。そこはちょっと自信があります。
丹波彩乃ちゃんとの口喧嘩でも、私は負けじと果敢に…!
《コンコンコン…》
きた…会議室の扉をノックする音!
信吾が、金魚に変身して戻ってきてくれたんだぁ!!
「すみません…遅くなりました…」
扉の向こうの信吾の声。
冴嶋社長さんが『どうぞ』と言ったか言わないかのうちに、私は駆け出して扉を開けてあげていました。
『おかえり♪金魚』
…そうリクエストしてくれた冴嶋社長さんに、私はできるだけ明るい笑顔で大きく頷いて、ゆっくりと立ち上がりました。
『enchanté. Je m'appelle Shiori Okamoto. Enchanté de faire votre connaissance.』
私はフランス語で『初めまして。私の名前は岡本詩織です。お会いできて嬉しいです』と、ゆっくりと言いました。
『かっこいい!皆さんもそう思いますよね!』
そう言って、高須賀あずささんが私に拍手を送ってくれました。
他の方たちも高須賀あずささんに賛同して『凄いねぇ』って喜んでくれました。
今のでちょっとだけ気分が回復できました。
私は今度は本当の笑顔で、一礼してまた座りました。
『あと…社交ダンスも踊れるの?』
初めて山本静恵さんが、私に訊いてきてくれました。
『えっと、踊れるっていうか…子どもの頃にジュニアでちょっとやってたぐらいです』
『静恵ちゃんも社交ダンスやってたよね?ここで詩織ちゃんと組んで踊ってみたら?』
冴嶋社長さんが、山本さんにそう言いました。
山本さん、社交ダンスやってるんだぁ。
『あ、じゃあ…』
私は小走りに、山本さんの元へ駆け寄りました。
『えっ?待って。踊りはしないけど…じゃあ組んでみましょう。組むだけでも少しは判るから』
私は立ち上がった山本さんと組んで、社交ダンスの基本姿勢をとりました。
少しそのままの姿勢のあと、ちょっとしてすぐに山本さんは私をゆっくりと放しました。
『えぇ。これは本当に社交ダンスやってましたね。詩織ちゃんの基本姿勢、とても綺麗だと思います』
…なぜか、急に恥ずかしくなっちゃって…。
私はまた小走りで、自分の席へと戻りました。
『ほら…今見てて思ってたんだけど、彼女は歩き方も整ってて綺麗なんじゃない?』
『大槻専務。ちゃんと本気で社交ダンスをやってた女の子は、みんな歩き方は綺麗なんです』
そう大槻専務さんに言いながら、山本さんもまた席に戻りました。
『細くてスタイルもいいし、顔は可愛いし、綺麗なウォーキングもできるのなら、詩織さんの衣装モデルの活動も本格的に考慮しても良さそうですね』
…って、あずささん!やめてください!
褒めすぎ恥ずかしいです!照れちゃいますってば!凄く心地いいですけど!
『あー。それアリかもしれないね…うん』
そう言ったあと、私のプロフィールをコピーした用紙の隅に、何かメモしてる様子の渡部副社長さん。
『詩織さん』
『あ、はい!』
照れてる場合じゃない。
高須賀あずささんに呼ばれて、私は慌てて顔を上げました。
『あなたが《女優に憧れてる》ことは解ったし、《すぐには女優には成れない》ことを私たちがあなたに伝えて、少し落胆してるかもしれないけど』
『…はい』
『詩織さんは《アイドルが嫌なら、ここで働けないんですか?》って心配してたわよね?』
『…。』
ほんの少し言葉が止まって、私を見たあと…あずささんは優しそうな笑顔で、小さく頷いてくれました。
『あなたにはたくさんの才能も、あと色々な可能性もあることが解ったから。だから』
『私の才能?…ですか?』
あずささん…気持ちいいくらいの美人さん。
そんなあずささんが、女神さまのような綺麗な笑顔を見せてくれたあと…。
今度は冴嶋社長さんが私に話しました。
『そうよ。フランス語が話せるし、社交ダンスの経験もある。だから歩き方も綺麗なのよね。それにスタイルも良くて、顔も耳心地のいい声も可愛らしいし』
…いやぁ…ごめんなさい。ほんと照れちゃいます。
私の才能…解っちゃいましたかぁ…♪
『あとは…芸能界でやっていける度胸がどれほどあるか…だね』
渡部副社長さん。そこはちょっと自信があります。
丹波彩乃ちゃんとの口喧嘩でも、私は負けじと果敢に…!
《コンコンコン…》
きた…会議室の扉をノックする音!
信吾が、金魚に変身して戻ってきてくれたんだぁ!!
「すみません…遅くなりました…」
扉の向こうの信吾の声。
冴嶋社長さんが『どうぞ』と言ったか言わないかのうちに、私は駆け出して扉を開けてあげていました。
『おかえり♪金魚』
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