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G.F. - 再始動編 -
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【岡本詩織】
ちょっと、いきなり怖い印象の大槻専務さんが、左手に持っていたプロフィールの用紙をそっと机に置きました。
『…冴嶋社長は、彼女のタレント活動について、どう志望されているんですか…?』
大槻専務さんが、覗くようにそっと隣の冴嶋社長さんを見ました。
冴嶋社長さんはちょっと、言葉を詰まらせたみたいでした。
『私は、今は…まずアイドルとしての活動を…』
『まずは…ですか?』
『…えぇ。それについては、追々話し合って決めていこうかと…』
『そうですか。分かりました』
冴嶋社長が、ちらっと緊張した表情を見せました。
…何だか見てて変な感じ。
冴嶋社長さんは社長なんだから、この会社では一番偉い人なんだろうけど…大槻専務さんの意見には、冴嶋社長さんはちょっと弱いって感じ…?
…!
大槻専務さんが、また鋭い視線で私を見てきました。
『岡本詩織くん』
『…はい!』
『君は、本当はアイドルより、女優に成りたいのか…?』
『えっ、えっと…』
『…そうか』
大槻専務さんが、大きく『はぁぁ…』と、息を払いました。
『岡本詩織くん。悪いことは言わない。初めはアイ…』
『あの…!』
あの時…大槻専務さんの話の途中だったのに、割り込むようにそれを遮ったのは…今もごめんなさいって思います。
『冴嶋社長さんが、私にアイドル活動を志望されているのは十分に解っています。アンナさんも私が、アイドルとして有名になる日を待ってることも』
今もじっと、私を見ている大槻専務さん。
私は大槻専務さんが、何か言い返してくるんじゃないかと思って、それを待って一瞬黙ってしまいました。
『…いいよ。話を続けてくれ。岡本詩織くん』
『あ、はい』
そして私は、一番気にしていたあのことを訊きました。
『もし、私が《将来的には女優をやってみたいです》って言ったら、もうここでは働けませんか?』
『ん?それは…どういうことだ?』
…って訊き返されても…。
また私は黙ってしまいました。
『ひとつ、教えてくれ』
『はい』
大槻専務さんの、真剣さが伝わってくる眼差し…。
私が馬鹿げたことを言ったみたいに、クスリと笑う様子もありませんでした。
それは他の役員幹部の方たちも。
『…子役の経験は?』
『あの…ありません』
大槻専務さんは、静かに小さく頷きました。
『中学や高校のときには、演劇部に所属していたとかは』
『中学と高校のときは、女子バスケ部でした。大学では、1年だけですけど…外国語実習サークルに所属していました』
『…なるほど』
なんだか…会議室の空気が重い…。
そんなふうに思いました。
『はっきり言って申し訳ないが…女優として活動するのは難しいだろう』
…だよね。って…自分を言い聞かせてしまう自分が…悲しかった。
『君は芸能界のことを何も知らないだろう。それを知ることから始めると思って、まずはアイドルの活動から始めてみたらどうだ?』
『……はい』
たぶん、私の笑顔は死んでしまっていたと思います…なんだか悔しい気持ちで。
『え、えっと…では、別のプロフィールについても触れていきましょうか』
池田さんが、思い空気を払拭するように進行を進めはじめました。
本当は、もっと強い《女優をやりたい!》ってアピールをしたかったんですけど『難しい』って言われちゃったから…その気持ちを抑えました…。
『君は…フランス語が話せるのかい?』
渡部副社長さんが、私にそう訊いてくれました。
私が自己PRにそれを書いたことを、渡部副社長さんが見付けて拾ってくれたみたいです。
そこで、これを機にもう一度、気分を換えて元気に明るく振る舞おうと思いました。
『はい。でもまだ勉強中なので、得意ってほどではないんです』
『ちょっとだけでも聞いてみたいわ。何か話してみて』
『あ、はい』
ちょっと、いきなり怖い印象の大槻専務さんが、左手に持っていたプロフィールの用紙をそっと机に置きました。
『…冴嶋社長は、彼女のタレント活動について、どう志望されているんですか…?』
大槻専務さんが、覗くようにそっと隣の冴嶋社長さんを見ました。
冴嶋社長さんはちょっと、言葉を詰まらせたみたいでした。
『私は、今は…まずアイドルとしての活動を…』
『まずは…ですか?』
『…えぇ。それについては、追々話し合って決めていこうかと…』
『そうですか。分かりました』
冴嶋社長が、ちらっと緊張した表情を見せました。
…何だか見てて変な感じ。
冴嶋社長さんは社長なんだから、この会社では一番偉い人なんだろうけど…大槻専務さんの意見には、冴嶋社長さんはちょっと弱いって感じ…?
…!
大槻専務さんが、また鋭い視線で私を見てきました。
『岡本詩織くん』
『…はい!』
『君は、本当はアイドルより、女優に成りたいのか…?』
『えっ、えっと…』
『…そうか』
大槻専務さんが、大きく『はぁぁ…』と、息を払いました。
『岡本詩織くん。悪いことは言わない。初めはアイ…』
『あの…!』
あの時…大槻専務さんの話の途中だったのに、割り込むようにそれを遮ったのは…今もごめんなさいって思います。
『冴嶋社長さんが、私にアイドル活動を志望されているのは十分に解っています。アンナさんも私が、アイドルとして有名になる日を待ってることも』
今もじっと、私を見ている大槻専務さん。
私は大槻専務さんが、何か言い返してくるんじゃないかと思って、それを待って一瞬黙ってしまいました。
『…いいよ。話を続けてくれ。岡本詩織くん』
『あ、はい』
そして私は、一番気にしていたあのことを訊きました。
『もし、私が《将来的には女優をやってみたいです》って言ったら、もうここでは働けませんか?』
『ん?それは…どういうことだ?』
…って訊き返されても…。
また私は黙ってしまいました。
『ひとつ、教えてくれ』
『はい』
大槻専務さんの、真剣さが伝わってくる眼差し…。
私が馬鹿げたことを言ったみたいに、クスリと笑う様子もありませんでした。
それは他の役員幹部の方たちも。
『…子役の経験は?』
『あの…ありません』
大槻専務さんは、静かに小さく頷きました。
『中学や高校のときには、演劇部に所属していたとかは』
『中学と高校のときは、女子バスケ部でした。大学では、1年だけですけど…外国語実習サークルに所属していました』
『…なるほど』
なんだか…会議室の空気が重い…。
そんなふうに思いました。
『はっきり言って申し訳ないが…女優として活動するのは難しいだろう』
…だよね。って…自分を言い聞かせてしまう自分が…悲しかった。
『君は芸能界のことを何も知らないだろう。それを知ることから始めると思って、まずはアイドルの活動から始めてみたらどうだ?』
『……はい』
たぶん、私の笑顔は死んでしまっていたと思います…なんだか悔しい気持ちで。
『え、えっと…では、別のプロフィールについても触れていきましょうか』
池田さんが、思い空気を払拭するように進行を進めはじめました。
本当は、もっと強い《女優をやりたい!》ってアピールをしたかったんですけど『難しい』って言われちゃったから…その気持ちを抑えました…。
『君は…フランス語が話せるのかい?』
渡部副社長さんが、私にそう訊いてくれました。
私が自己PRにそれを書いたことを、渡部副社長さんが見付けて拾ってくれたみたいです。
そこで、これを機にもう一度、気分を換えて元気に明るく振る舞おうと思いました。
『はい。でもまだ勉強中なので、得意ってほどではないんです』
『ちょっとだけでも聞いてみたいわ。何か話してみて』
『あ、はい』
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