女装と復讐は街の華

木乃伊(元 ISAM-t)

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女装と復讐 -完結編-

page.473

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『おかえり。信吾』


詩織が明るく元気に、僕にそう言ってくれた。


『うん。ごめん…遅くなって』

『うぅん。気にしないで。ちゃんと絵里佳ちゃんと話してくるのよって、送り出したのは私なんだし』

『…うん』


運転席のアンナさんが、ミラー越しに後部座席の僕らを見る。


『じゃあ、美容院クローシュ・ドレへ帰るわね』


再び発進し、街道へ出て走り出したアンナさんの車。
アンナさんへの《復讐完了のご報告》は、車の外で僕が樋口と話をしているあいだに、車内で詩織からアンナさんに《終わった》と報告されていた。


『あっ、そうです…そのことで、アンナさんに訊きたいことがあるんです』

『私に?訊きたいこと…?って?』




僕はアンナさんに訊いてみた…。

僕が瀬ヶ池の女の子たちへの復讐を誓ったときには、僕は《僕が声高らかに、お前らのことを笑ってやるよ!!畜生!!》って、怨念に似た強い怒りを抱いていた…。
けど実際、復讐を果たす場となった僕に…あの時のような強い怒りはもう無かった。

逆に女の子たちに感謝すら…。


『…これはアンナさんが初めから、この復讐劇のラストはこう完結させるんだと構想して、この金魚となった僕の活動の約1年のあいだに、僕の強い復讐想念を誘導し、意識の操作したんじゃ』

『待って。それだけは否定させてもらうわ』


アンナさんは即答で、それを否定した。

『だって私はこの復讐劇の結末は、ファミリーのみんなが幸せになっていてほしいと、それだけを願って目論んた。そしてその為に、あなた達を瀬ヶ池で有名にさせて、この願いの実現へと導き見守っていたのは認めるけど…信吾くんの復讐する姿までは、私でも見通すことはできてなかった』

『でも、じゃあなんで僕は』

『信吾くん!考えてみて。菊江さんが岡ちゃんを紹介してくれたことや、そこから鈴ちゃんまで紹介されて、親友にまでなれたこと…金魚にそっくりな鮎美ちゃんも現れて、ファミリーに加入までしてくれたことも…あと、雄二が冴嶋プロダクションに戻れることになったのも、私の当初の計画には無かった…ただ《幸運が風に乗って舞い込んで来てくれた》ってだけでしょう…?』


…た、確かに…。

もし本当にアンナさんがそんな幸運まで本当に見通せていたら…僕はもうアンナさんは《人の姿をした幸運の女神》としか考えられなくなってたと思う。


『信吾くんのをね、本当に心から心配してくれていたのは…詩織よ』


…!?

えっ、詩織…!?


『アンナさん。やめてよぉ…恥ずかしいよぉ…』


僕は勢いよく振り向いて、僕の横に座る詩織を見た…詩織は恥ずかしそうにウンと小さく頷いた。























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