女装と復讐は街の華

木乃伊(元 ISAM-t)

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女装と復讐 -完結編-

page.472

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『絵里佳ちゃんは金魚が…早瀬ヶ池で一番の女の子…だったって思う?』

『あ、はい。もちろんです』


樋口が可愛く頷く。


『だったら…金魚が東京へ行っちゃったら…早瀬ヶ池の一番の子は、また…誰でもなくなる…ってことだよね』


樋口は小さくウンと頷いた。
そう。空いた《瀬ヶ池で一番の女の子》の席を…次は…。


『…絵里佳ちゃん。次の《瀬ヶ池で一番の女の子》は、絵里佳ちゃん…あなたが成るの』

『えっ、私が…ですか?』


『本当に成れるか分からない』『自信がない』って言う樋口を、僕は『絵里佳ちゃんなら大丈夫。可愛いから』『瀬ヶ池の女の子たちを寂しがらせないためにも』って付け加えて、応援の言葉を贈った。


『…それでね、彩乃ちゃんの瀬ヶ池再出現の阻止と、瀬ヶ池の差別意識の改善とその経過観察を、絵里佳ちゃんが務めるの。できるよね?』

『えっ!でも…彩乃ちゃん』

『大丈夫。もう絵里佳ちゃんは、彩乃ちゃんなんかに負けないから!頑張って!』


僕は少し躊躇いながら…樋口の頭を優しく撫でてあげた。


『姫さまが、それを望むなら…私、次の《瀬ヶ池の一番の女の子》を目指してみようかなぁって思います』

『うん。情報サイト《パレット》の管理と監視も、これからも続けてね』


…って僕からのお願いに、樋口…また《条件》を叩き付けてきた…。


『…それしたら…お願い聞いてくれるんだよね…?』

『はい。優しく…お願いします…だから早く…』

『…。』


…優しい軽めのKissしてあげると…樋口は泣きながら、また僕を勢いよく抱きしめてきた。


『姫さまぁ…嫌だぁ…やっぱり離れたくない!!でも行くのなら…私も連れてって!!東京に…うわぁぁぁー』


…そんな子ども染みた願いは叶わない…なんてことは樋口も知ってる。
だけど、解っててもそんな想いを《金魚姫》にぶつけてきた…樋口の気持ちも、僕には痛いぐらい伝わってきた…。


「絵里佳ちゃーん…」

『!』


この樋口を呼ぶ声…佐藤美佳ちゃんの声だ。樋口も、ハッ!とした表情をして泣き止んで、慌てて僕から離れた。


『あっ、いた…絵里佳ちゃん』

『美佳ちゃん…』


『…どうしたの?泣いてたの?』そう言って、樋口を優しく包むように抱きしめてあげている佐藤美佳ちゃん。


『池川金魚は…岩塚くん…だったんだよね…?』


真顔で僕にそう訊く美佳ちゃん。それ以上は何も言ってこなかった。

僕は絵里佳ちゃんに何も答えられず、二人の様子をただ見ているだけだった…。


『行こう。戻ろう。絵里佳ちゃん…岩塚くんに泣かされたの?安心して…』


半ば強引に…美佳ちゃんに引き摺られるように、樋口はキャンパスへと戻っていく…。

その様子を、しばらく見守っていた僕…。
しばらくして僕は振り返って、後部座席のドアを開けて、アンナさんの車に乗り込んで戻った…。






















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