女装と復讐は街の華

木乃伊(元 ISAM-t)

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女装と復讐 -完結編-

page.458

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『あの…緋子ちゃんは、金魚ちゃんが誰なのか…知ってるの?』

『はい。もちろんです』


そうはっきりと答えた緋子ちゃん。僕を指差してニコリと笑う。


『だって私、信吾くんと昔付き合ってた《元カノ》ですから…♪』

『…………ぇ??』


緋子ちゃんから出たその嘘を真に受けて、彼?彼女?をじっと見て、目を円くしている…!


『ぶっ、ちょっと待ったぁぁー!』

『それに、今年のバレンタインデーのエピソードには続きがあって…ね。信吾くん…あの夜、私の部屋にひと晩泊まっ…』

『だから!待って!!ってぇぇぇ!!!』






…無邪気に笑ってる忠彦くん…ったく。いきなり何を言い出すことやら…。
今飲んでたキャラメルマキアート、もう少しで吹き出しそうだったじゃん…。

さっきの爆弾発言のあと、その疑いも晴れて今は春華さんも笑ってる…。
ただ、ひと晩泊まったことは事実だけど…。


『もう止めてって…そういう誤解されるような発言…』

『あははは。面白かったね♪』

『…。』


…ね♪なんて言われても、忠彦くん…僕は全然面白くなかったし。逆にどっと疲れて…心臓がちょっと痛いし…。


『そういえば金魚ちゃん、《メイクの先生》のお店でアルバイトしてたね。8月の夏休み』


どうやら忠彦くん…《メイクの先生》はナオさんだと勘違いしてるらしい。

僕は《メイクの先生》はナオさんじゃなくて、美容院クローシュ・ドレの店長を務めるアンナさんであることを説明し、勘違いを訂正した。


『あーっ!美容院で思い出した!』

『?』
『?』

『下村さん、なんか美容院のことも訊いてきてた!』

『えっ?…どんなふうに!?』


…あの下村という記者は、金魚の活動拠点が美容院であることまでも、もう突き止めるところまできてた…。


『ただ…《その美容院がどこにあって、何て名前だか知らない?》って。私たちに…』


…ヤバい。


『…それも先週のことだから、もう調べてその美容院の名前も場所も分かってるかも…』


…マジでヤバい…。


『…あと…』

『うん!聞いたことや知ってること、何でも全部教えて!』

『うん。今年の6月に…金魚ちゃんが《G.F.》って、あの市内配布の小冊子に特集され載ったってことも、年末の《G.F.》アワードにも出場するんじゃないかなぁ?…なんてことも言ってた』


…《G.F.》デビューのことから、アワード選出のことまで…。

急に忠彦くんが身を乗り出し、僕にぐっと顔を近づけてきた。


『それに本当にをつけて!下村さん、池川金魚って名前と顔写真から、幼少期とか学生時代について、あちこちコソコソと聞き込みして調べてるみたいなんだけど…誰からも何処からも、過去の話が何も出てこないことから…偽名とか顔の美容整形とか、性転換や女装とか、そんなところまでもう疑いはじめてるから…』

『えっ…』


もう駄目だ…こんなに早く調べ尽くされてるなんて…。
池川金魚が偽名で女装だってことを知られるのも、もう時間の問題だ…。

あと《G.F.》アワードの出場も諦めないと…。
アワードに選出されるのを待ってる時間なんて、もう無い…。

辛さと哀しさや悔しさが…胸に込み上がってくる…。






『…私が信吾くんに伝えたかったのは、それだけ』

『ううん。ありがとう』


それだけ…なんて、こんなにたくさんのしらせを…本当にありがとう。

『…じゃあ、もう行くね』と緋子ちゃん。


『頑張って!私は金魚ちゃんの味方だからね!応援してるから!』






















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