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女装と復讐 -完結編-
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…テーブルを挟んで向かい合うように座ると、下村と名乗る記者の男性は直ぐに『確か…鈴ちゃんって、藤浦市が地元だったよね?』と訊いてきた。
嘘をつくわけにもいかないので『あ、はい』と答えると、下村は着ているシャツの胸ポケットから、小さなメモ帳とペンを取り出した。
それをじーっと見る鈴ちゃん。
小さなメモ帳には何枚か、そのメモ帳よりも大きい現像された写真が挟まれている…?
下村はメモ帳を開き、ペンを握った右手で、メモ帳に挟んであった3枚の写真を引き抜いて、鈴ちゃんに手渡した。
…!!
『この女の子さぁ、鈴ちゃんの地元…藤浦市の早瀬ヶ池っていう街で、もの凄く可愛いって有名らしいんだけど…鈴ちゃん、知らないかなぁ?』
それは…金魚の写真だった。
訊かれて鈴ちゃんは『この子、今初めて見ました。存じませんね』と、知らないフリをした。
『知らない?本当に?…おかしいなぁ。こんなに可愛いんだから、もう子どもの頃から、とっくに地元では有名だったんじゃないかなぁと思うんだよねぇ…本当に知らない?』と、しつこく訊いてくる下村。
それでも鈴ちゃんは、最後まで《知らない》を貫き通した。
下村は、鈴ちゃんがラジオの仕事のため、毎週土曜日は地元に帰っていることも、当然のように知っていた。
鈴ちゃんが『素人のこの子を調べて、雑誌に載せられるような面白い記事になんて、なるんですかね…』と訊くと、下村は、冷めた視線で鈴ちゃんを見据え…ニヤリと気味悪く笑った…。
『この可愛さで、素人の娘だってほうが不思議なくらいだ。この子だったら雑誌の記事にしてしまえば、すぐに世間の注目と話題をさらってくれますよ。そうなれば、すぐに…何処かの芸能事務所が目を付けて、すぐに芸能界デビューするんじゃないかなぁ。叩けば色々と興味深い埃が出てきそうですし。まぁ見ててください。僕が面白い記事にしてみせますよ….』
『…。』
記事のネタの1つすら掴めないんだったら、ここに長居しても仕方ない…と、下村は鈴ちゃんから写真を返してもらい、代わりにズボンのポケットから出した別の1枚の写真を裏返し、テーブルの上にそっと置いた。
『…?』
『お邪魔しました。僕は帰りますよ』
下村は立ち上がり、鈴ちゃんに背を向け接客室をあとにし…。
…接客席を出る間際…下村は振り返って、鈴ちゃんをもう一度だけ見た…。
『鈴ちゃん、本当に知らないって言い切るんだよね?…この子、名前は…たしか《池川金魚》というらしいですよ…』
『!!!』
…下村は接客室を出て行った。
「おぉ。これは冴嶋社長。今お帰りですか…ははは。お邪魔しました。また日を改めて来ますよ…」
接客室の向こうで、冴嶋社長へ声を掛ける下村の声が聞こえた。
あ…そういえば。この写真…?
鈴ちゃんは、テーブルの上に置かれた裏返された写真を…恐る恐る摘んで、ゆっくりと表に返した…!!!
『鈴。今の《月刊文秋》の下村よね!何を訊かれたの!?』
『…い、いえ…。何も問題…ありません…』
下村の置いていった写真には…詩織と金魚と鈴ちゃんが、3人揃って笑顔で嘉久見大通りを歩く姿が…。
それは、しっかりと捉えられた《証拠を示す写真》だった…。
この件について驚いたのは、鈴ちゃんだけではなく、事務所に居た社員の全員と、帰社したばかりの冴嶋社長も…。ーー
…と、ここまでがLINEに書かれていた《事件報告》…怖っ!!
このあと、鈴ちゃんの《見解》と《注意喚起》が書かれている。
ーー下村さんは《池川金魚》という名前…そして《私と繋がりがある》ことまでは調べ上げていても《実は女装男子》であることまでは、まだ知らない…と思いたい…。
嘘をつくわけにもいかないので『あ、はい』と答えると、下村は着ているシャツの胸ポケットから、小さなメモ帳とペンを取り出した。
それをじーっと見る鈴ちゃん。
小さなメモ帳には何枚か、そのメモ帳よりも大きい現像された写真が挟まれている…?
下村はメモ帳を開き、ペンを握った右手で、メモ帳に挟んであった3枚の写真を引き抜いて、鈴ちゃんに手渡した。
…!!
『この女の子さぁ、鈴ちゃんの地元…藤浦市の早瀬ヶ池っていう街で、もの凄く可愛いって有名らしいんだけど…鈴ちゃん、知らないかなぁ?』
それは…金魚の写真だった。
訊かれて鈴ちゃんは『この子、今初めて見ました。存じませんね』と、知らないフリをした。
『知らない?本当に?…おかしいなぁ。こんなに可愛いんだから、もう子どもの頃から、とっくに地元では有名だったんじゃないかなぁと思うんだよねぇ…本当に知らない?』と、しつこく訊いてくる下村。
それでも鈴ちゃんは、最後まで《知らない》を貫き通した。
下村は、鈴ちゃんがラジオの仕事のため、毎週土曜日は地元に帰っていることも、当然のように知っていた。
鈴ちゃんが『素人のこの子を調べて、雑誌に載せられるような面白い記事になんて、なるんですかね…』と訊くと、下村は、冷めた視線で鈴ちゃんを見据え…ニヤリと気味悪く笑った…。
『この可愛さで、素人の娘だってほうが不思議なくらいだ。この子だったら雑誌の記事にしてしまえば、すぐに世間の注目と話題をさらってくれますよ。そうなれば、すぐに…何処かの芸能事務所が目を付けて、すぐに芸能界デビューするんじゃないかなぁ。叩けば色々と興味深い埃が出てきそうですし。まぁ見ててください。僕が面白い記事にしてみせますよ….』
『…。』
記事のネタの1つすら掴めないんだったら、ここに長居しても仕方ない…と、下村は鈴ちゃんから写真を返してもらい、代わりにズボンのポケットから出した別の1枚の写真を裏返し、テーブルの上にそっと置いた。
『…?』
『お邪魔しました。僕は帰りますよ』
下村は立ち上がり、鈴ちゃんに背を向け接客室をあとにし…。
…接客席を出る間際…下村は振り返って、鈴ちゃんをもう一度だけ見た…。
『鈴ちゃん、本当に知らないって言い切るんだよね?…この子、名前は…たしか《池川金魚》というらしいですよ…』
『!!!』
…下村は接客室を出て行った。
「おぉ。これは冴嶋社長。今お帰りですか…ははは。お邪魔しました。また日を改めて来ますよ…」
接客室の向こうで、冴嶋社長へ声を掛ける下村の声が聞こえた。
あ…そういえば。この写真…?
鈴ちゃんは、テーブルの上に置かれた裏返された写真を…恐る恐る摘んで、ゆっくりと表に返した…!!!
『鈴。今の《月刊文秋》の下村よね!何を訊かれたの!?』
『…い、いえ…。何も問題…ありません…』
下村の置いていった写真には…詩織と金魚と鈴ちゃんが、3人揃って笑顔で嘉久見大通りを歩く姿が…。
それは、しっかりと捉えられた《証拠を示す写真》だった…。
この件について驚いたのは、鈴ちゃんだけではなく、事務所に居た社員の全員と、帰社したばかりの冴嶋社長も…。ーー
…と、ここまでがLINEに書かれていた《事件報告》…怖っ!!
このあと、鈴ちゃんの《見解》と《注意喚起》が書かれている。
ーー下村さんは《池川金魚》という名前…そして《私と繋がりがある》ことまでは調べ上げていても《実は女装男子》であることまでは、まだ知らない…と思いたい…。
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