女装と復讐は街の華

木乃伊(元 ISAM-t)

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女装と復讐 -完結編-

page.439

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『信吾くんのお母様、ありがとうございました』


鈴ちゃんは母さんにお礼を言い会釈して、レンタカーに乗り込んだ。
山本さんは既に運転席に座っていた。

後部座席のガラス窓がゆっくりと下りる。


『鈴ちゃん、気を付けて帰ってね!』

『うん。詩織ちゃんもね』


僕の隣に立つ詩織は、そう鈴ちゃんに言っ…えっ!?


『詩織は?乗らないの?』

『えぇ…だ、だって信吾は…?』


モジモジと体を揺すり、乗車し帰ることにやや抵抗している詩織…。


『僕は実家にひと晩泊まって明日、母さんに車で送ってもらうから』

『う、うん…』


そんな様子を見ていた母さんは…。


『ねぇ、詩織ちゃん。今夜ウチに泊まってく?』

『えっ!…お母様、お言葉に甘えていいんですか…!?』

『あはははは』


母さん…笑ってるし…。

更に鈴ちゃんまで空気を読んだように…。


『…そろそろ行くね。じゃあ山本さん…』

『あっ、ありがとう。鈴ちゃん!またね!』



午後2時31分。
後部座席の窓がゆっくりと閉まって、レンタカーは走り出した。
それを目で追いながら、大きく手を振る詩織。


『鈴ちゃん…行っちゃったね』

『さぁて。信ちゃんと詩織ちゃん。家に入ろっか』

『はいっ!今夜のお料理は私、お手伝いします!』

『あははは。詩織ちゃんは今夜、何が食べたい?』


ハキハキと元気な詩織…笑いながら母さんと家へと入っていく。

そんな母さんと詩織の後ろ姿は、まるで今日が初めて会ったふうには見えないってくらい、凄く馴染んで見えた…。

ってか、そもそも…初めから本当に泊まる気だったんだ…詩織。






今夜は、母さんと詩織が協力して作ってくれた《ピーマン多めの青椒肉絲チンジャオロース》だった。豚肉も柔らかくて凄く美味しいかった…。


『ご馳走さまでした…』


夕食後、父さんは居間でテレビを点けて野球観戦。


僕はダイニングで椅子に座ってスマホ…詩織と母さんは、キッチンで片付けと皿洗い…って、鈴ちゃん達が帰ったあれから…『あはは』『きゃはは』と笑いながらずーっと一緒。まるで実家に帰ってきた本物の母娘みたい…。


『信吾!』
『信ちゃん』


えっ?…って、母詩織コンビが顔を見合わせてまた笑い声…。


『宏美叔母さんが今から来るって。それで私たちと詩織ちゃんも連れて《押木温泉》行こうか…って。信ちゃんも行く?』


宏美叔母さんというのは、父さんの1つ歳下の妹。


『ねぇ、詩織ちゃんは…』

『絶っ対行きたいです!私、温泉大好き!』

『あははは。じゃあ…ちょっとお父さんにも訊いてくるわね』


…。

ちょうど皿洗いも終わって、詩織がキッチンからダイニングへ戻ってきた。

ふーん。
詩織のエプロン姿…んま、まぁまぁ…かっ、か可愛…いいんじゃない…?
凄くに…似合ってる…というか…。


『…そのエプロンは…?』

うちから持ってきてたの。食後のお皿洗いとかも《あるかもしれない》って、先に想定して。これ可愛いでしょ』


ま…まぁね…。少しドキドキ。


『詩織…い、家に電話しなくて…いいの…?』

『えっ、なんで?』

『だって、僕ん家に泊まるって』

『あー。きゃははは』


詩織が悪戯っぽく元気に笑う。


『今日、家を出る前に、もう言ってきてるから』

『は?えっ?』

『今日は《金魚のご実家で泊まらせてもらうから。安心して!》って。うちのお母さんに』

『えぇ…』


あぁ…そうでしたか…。
そりゃ計画万全なことで…。

























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