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女装と復讐 -完結編-
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とりあえず、マネージャーの山本さんの運転するレンタカーは、田舎町の僕の家を目指して走り出した…。
《実は私、田舎町の雰囲気ってね、意外とけっこう好きだったりするのー♪》って…詩織。僕は今そんなことを訊いてるんじゃない…。
『…あのさ、詩織。べつに遊びに行くわけじゃないんだけど…』
それを聞いた詩織、急に真剣な表情に。
『…だから私も鈴ちゃん達に無理を言って付いてきたの。信吾が東京へ行くことになったのも、私が我儘を言ったせいだし、心配だったから…』
詩織の我儘…ってより、僕とアンナさんとの《詩織を守ってあげて》の約束もそうだし…それに冴嶋社長の僕とのタレント契約の切実な願いで、東京へ行かなきゃならなくなった…ってのが一番大きいんだけど。
『詩織にまで心配を掛けさせて…ごめん』
『うぅん。私も信吾に内緒で付いて来ちゃって…ごめんなさい…』
藤浦市から北へ、地方高速道を走って約50分。僕の生まれ育った町…真山市押木町に到着。
高速道のインターを下りて、更に約15分。
ほとんど信号の無い、交通量は少ないくせに、綺麗に再整備された県道を走り続けていると、いつの間にか建物は減り、ぽつりぽつりと民家がちらほら見えるだけで、それらを囲む遠くの山々と高圧電線の鉄塔、それに周りは駄々っ広いだけの田園風景に。
田畑に囲まれた、僕の家がぽつりと見えた頃には、詩織…。
『わーぁ♪《昔見た長編アニメ映画》の田舎町の撮影地みたーい♪』
…どんな長編アニメ映画を想像してるかは知らないけど…アニメーションって撮影じゃなくて、デジタル描画製作だし…。
それに、野生のタヌキとかキツネとか野鹿は、たまには遭遇したりするけど…詩織が言うような、そんな夢みたいな不思議な生き物とかは、一度も遭遇したことないから…って当たり前か。
午前10時52分。遂に僕の家に到着。家の玄関先では母さんが待ってくれていた。
母さんには電話で、お客さんを連れて今日行くことを先に伝えていたから。
『ただいま…』
『おかえり。信ちゃん』
詩織も鈴ちゃんも山本さんも、僕の家を眺めて…。
『うわぁ…もの凄く大きなお家…』
『うん。立派…凄いお宅…』
田舎造りの家ってどこも、だいたいこんな感じだから。
更に玄関に入ると…。
『玄関も、もの凄く広い…』
『ひとつの部屋ってぐらい、見たことないくらい広い…』
鈴ちゃんが振り向いて、お母さんを見た。
『あの…持ち物を玄関に置かせてもらってもいいですか?』
『えぇ。どうぞ』
鈴ちゃんとマネージャーの山本さん、お礼を言ってハンドバッグや黒革の鞄を玄関框の隅に置いた。
『…はぁ?詩織…何その大っきな旅行カバン…』
『ぁ…きゃははは。万が一泊まることになったとき用にって…準備してきたの…』
…。
母さんが家に上がるよう、僕らを誘った。
『では、主人が居間で待っていますので…こちらです』
居間は玄関のすぐ左側。僕らは靴を脱ぎ、スーッと襖を開けたお母さんに案内されて居間へと移動。
青々とした畳…12畳の和室。その真ん中に大きな木製の和机が置かれ、父さんが腕を組み、ドンと座ってる待っていた…。
『お、お父さん…ただいま』
『うむ。どうぞ…客人も信吾も、座りなさい』
『失礼します』
『失礼致します』
『お邪魔しまぁす…』
《実は私、田舎町の雰囲気ってね、意外とけっこう好きだったりするのー♪》って…詩織。僕は今そんなことを訊いてるんじゃない…。
『…あのさ、詩織。べつに遊びに行くわけじゃないんだけど…』
それを聞いた詩織、急に真剣な表情に。
『…だから私も鈴ちゃん達に無理を言って付いてきたの。信吾が東京へ行くことになったのも、私が我儘を言ったせいだし、心配だったから…』
詩織の我儘…ってより、僕とアンナさんとの《詩織を守ってあげて》の約束もそうだし…それに冴嶋社長の僕とのタレント契約の切実な願いで、東京へ行かなきゃならなくなった…ってのが一番大きいんだけど。
『詩織にまで心配を掛けさせて…ごめん』
『うぅん。私も信吾に内緒で付いて来ちゃって…ごめんなさい…』
藤浦市から北へ、地方高速道を走って約50分。僕の生まれ育った町…真山市押木町に到着。
高速道のインターを下りて、更に約15分。
ほとんど信号の無い、交通量は少ないくせに、綺麗に再整備された県道を走り続けていると、いつの間にか建物は減り、ぽつりぽつりと民家がちらほら見えるだけで、それらを囲む遠くの山々と高圧電線の鉄塔、それに周りは駄々っ広いだけの田園風景に。
田畑に囲まれた、僕の家がぽつりと見えた頃には、詩織…。
『わーぁ♪《昔見た長編アニメ映画》の田舎町の撮影地みたーい♪』
…どんな長編アニメ映画を想像してるかは知らないけど…アニメーションって撮影じゃなくて、デジタル描画製作だし…。
それに、野生のタヌキとかキツネとか野鹿は、たまには遭遇したりするけど…詩織が言うような、そんな夢みたいな不思議な生き物とかは、一度も遭遇したことないから…って当たり前か。
午前10時52分。遂に僕の家に到着。家の玄関先では母さんが待ってくれていた。
母さんには電話で、お客さんを連れて今日行くことを先に伝えていたから。
『ただいま…』
『おかえり。信ちゃん』
詩織も鈴ちゃんも山本さんも、僕の家を眺めて…。
『うわぁ…もの凄く大きなお家…』
『うん。立派…凄いお宅…』
田舎造りの家ってどこも、だいたいこんな感じだから。
更に玄関に入ると…。
『玄関も、もの凄く広い…』
『ひとつの部屋ってぐらい、見たことないくらい広い…』
鈴ちゃんが振り向いて、お母さんを見た。
『あの…持ち物を玄関に置かせてもらってもいいですか?』
『えぇ。どうぞ』
鈴ちゃんとマネージャーの山本さん、お礼を言ってハンドバッグや黒革の鞄を玄関框の隅に置いた。
『…はぁ?詩織…何その大っきな旅行カバン…』
『ぁ…きゃははは。万が一泊まることになったとき用にって…準備してきたの…』
…。
母さんが家に上がるよう、僕らを誘った。
『では、主人が居間で待っていますので…こちらです』
居間は玄関のすぐ左側。僕らは靴を脱ぎ、スーッと襖を開けたお母さんに案内されて居間へと移動。
青々とした畳…12畳の和室。その真ん中に大きな木製の和机が置かれ、父さんが腕を組み、ドンと座ってる待っていた…。
『お、お父さん…ただいま』
『うむ。どうぞ…客人も信吾も、座りなさい』
『失礼します』
『失礼致します』
『お邪魔しまぁす…』
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