女装と復讐は街の華

木乃伊(元 ISAM-t)

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女装と復讐 -完結編-

page.428

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冴嶋社長は僕の一つ目の条件に了承はしたものの、少し困惑した様子だった。
だけど、次に出た二つ目の条件に、冴嶋社長は…。


「えっ…本当に?それが条件でいいの?…信じられないわ。嬉しい…ありがとう」






『えっと…どういうこと?』


電話を終えた僕にそう訊いてきた詩織。もの凄く、きょとんとした顔をしてる。


『どういうこと…って、だから…2人だけで東京に行くのは寂しいから《もう1人》一緒に《冴嶋プロダクション》に連れて行こう…ってこと』


『うぅん。それは私にも聞こえてたし。そうじゃなくて、その《一緒に連れて行きたいもう1人》って…誰なの?』


僕はにこっと、詩織に笑って見せた。


『それはー…今は秘密』

『えーっ。なんで秘密なのよぉ!』


泣いたり、ちょっと怒ってみたり…今日の詩織は感情の変化が忙しそうだ。


『じゃあ…鮎美ちゃん』

『ぶぶー。歩美さんではありません』

『んじゃあ……あっ!…えーっ!?』

『?』


詩織…誰か思い当たったみたい…?


『嫌っ!!あの子と一緒に東京に行くのなんて…私、絶っ対に嫌だからっ!!』


んー?
誰と勘違いしてんの…?


『…だから…ね。ほら…あの子でしょ?』

『誰…?』


詩織が、ふらふらと目を泳がせる。


『だからぁ…絵里佳ちゃん…一緒に連れて行くの…』

『はあぁぁ…!?』


なんで僕らが樋口と一緒に…。
あのさ…全っ然違うし。


『…まぁ、とにかく…《あの人》を一緒に東京に連れて行くには、詩織の協力が必要だから。その時は言うから。宜しく詩織』

『うーん。誰のことなのか…なんだかよく解らなくなっちゃったけど…分かったわ』


突然、控室のドアが開いた。


『詩織ちゃん、金魚ちゃん。冴嶋社長から電話…来た?無事に終わった?』


詩織も僕もナオさんを見た。


『はい。無事に終わりました』
『控え室をお借りしちゃいまして、ありがとうございましたぁ♪』






…僕が金魚として、詩織と早瀬ヶ池に出没《できる》のも、あと3ヶ月と少し。
そのタイムリミットのカウントダウンが…今始まった。

このカウントダウンが終わったとき…僕の復習は果たされているはず。そして金魚は役割を終えて、早瀬ヶ池から《永久に》消えてしまうんだ…。






…9月2日。今日は土曜日。

鈴ちゃんはラジオ番組の生放送の仕事を終えて、ナオさんのお店に来店している。

金魚も詩織も《早瀬ヶ池の巡回》を午前中に早々と終えて、同じくナオさんのお店に戻ってきた。

彩乃は、今も東京に出入りしている…という噂。出会うことはなかった…。

時刻は午後1時ちょうど。場所を詳しく言うと…またあの《控え室》。























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