女装と復讐は街の華

女装と復讐 -完結編-

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もし本当に鈴ちゃんが言うように、僕らが東京入りするのが10月末とか11月の初めだったとしたら…復讐実行できる期間は、この約2ヶ月のうち。

本当はそんなでもないんだろうけど…なんか展開が急過ぎるようにも感じる…。


『…ですが、私は冴嶋社長に、詩織ちゃんと信吾くんの東京入りを来年の１月まで遅らせてもらえるよう、お願いしてみるつもりです』

『鈴ちゃん、来年１月まで遅らせたいっていう、その理由は…？』


そう訊いたアンナさんを再び、鈴ちゃんは振り向いて見た。


『はい。年末に開催される《G.F.アワード》を金魚ちゃんに獲らせてあげたいからです』


鈴ちゃんは、また僕をちらりと見て、そして説明を続けた。


『これは私の勝手な予想ですが…たぶん今年も私は《特別審査委員長》を務めさせてもらえるんじゃないかと思っています…』


12月の《G.F.アワード》が開催されるまで、金魚が《女装した男子》であることを隠し通せれば、金魚は間違いなく《G.F.アワード》のノミネートに選出される。

そして、大した大物ライバルもなく、金魚は余裕をもって見事に今年のアワードに選ばれ獲得するはず…と。


『…会場のステージの上で、アワードに選ばれ《池川金魚》の名前が呼ばれたとき…私が金魚ちゃんに《おめでとう！》と言いながら花束を渡したそのときこそ…遂に《復讐》のチャンスが巡ってきます…』


花束を胸に抱いた金魚がマイクを握って、会場の観衆の女の子たちに応援してくれたお礼の一言を述べるそのとき…その場を借りて金魚の真実を暴露し、復讐を成就じょうじゅさせる。アワード受賞を拒否し、蹴飛ばすことにはなるけど…というのが鈴ちゃんの考え得る計画…らしいんだけど…。

てゆうか、天使とまで言われた…って、実際に聞いたことはないけど…そんな鈴ちゃんの見た目のイメージからは、全然想像できないような…なんという大胆な計画であることか…。




でも、アンナさんは鈴ちゃんの、そんな大胆な計画案を大絶賛。

他のみんなもアンナさんに賛同するようにして、この計画を支持した。


『あの！鈴ちゃん…！』


だけど、意外にもその計画に《待った！》を入れたのは…。


『えっ？どうかしたの？信吾くん…？』


…僕、本人だった。


『あの…今更になって、僕がこんなことを言ったら、みんな僕のことを嫌いになる…見損なうかもしれない…けど…』

『待って！信吾！…ちょっとあなた、今何を言おうとしているの！？』


僕は振り返って、詩織を見ようともせず、そのまま話を続けた…。


『僕…もう復讐できないかもしれない…』

『えぇっ！？』


みんなの視線から逃げる…俯うつむこうとする自分を僕は抑えた。


『…というか元々こんな僕が、瀬ヶ池の女の子たちに復讐なんて、できなかったんだ…って…』