389 / 490
女装と復讐 -完結編-
page.378
しおりを挟む
『じゃあね、今日のメイクは…パッと明るい感じにして、でも絶対に派手過ぎにはならないくらいに抑えた、ナチュラルな可愛らしい感じでいこっか』
『はい!』
僕は可奈美ちゃんから一度離れ、仮設メイクルームの端っこに置いてある、メイク道具がたくさん並んで乗った、2台のワゴンのうちの1台を引っ張って、また可奈美ちゃんの隣に戻った。
そのワゴンを覗き込んだ可奈美ちゃん。
『うわぁ…凄ーい。お化粧道具がいっぱーい…』
『えへへっ…でしょ。この下の6段の引き出しにも、出し切れない道具がまだいっぱい入ってるんだよ』
『へぇ…凄い…』
ナオさんから『アルバイトの期間中は、これを使ってね』って言われたとき…全身に鳥肌がざわざわと波打った。
アンナさんも使ってた、プロ仕様のコスメワゴン。僕はもの凄く惹かれてた…本当に使いたかった。
このワゴンを使うことを許されること…それはまるで《メイクの上級者だと認められた証》…みたいな。
『まずは保湿とベースメイクからね。いい?じゃあ始めるよ』
『はい。宜しくお願いします』
まずは、ヘアクリップで前髪を丁寧に優しく留める。
そしてファンデは…この子は乾燥肌っぽかったけど…リキッドよりもパウダーかな。でもちゃんと保湿のベースもしっかりとやってあげたから大丈夫。安心だし。
それと日焼け止め効果もあって汗をかいても崩れにくい、ちょっとお高めブランドのほうを使ってあげよう。
待てよ…ナオさんに怒られちゃうかな…?
ううん。今日デートだっていうこの子のためだ。その時は素直に『ごめんなさい』しよう…うん。
肌に軽く叩き込むように、顔の輪郭のほうから…塗り塗り、トントン…そのまま顔の中心である鼻の部分から、伸ばしながら顔全体に…トントン…。
はーぁ…よし。ベースメイクは済んだ。ここからが本当にめちゃくちゃ大事。
…可奈美ちゃんに似合う《ナチュラルな可愛らしい感じのメイク》…さぁて、どういこうか。僕の中のイメージ力をフル活用…。
ふぅむ…だよね、やっぱり。若い女の子らしくキラキラしてて、優しくふわっとしてるけど、かといって艶やかになり過ぎない、少し抑えたメイクに仕上げてあげたほうがいいね。
でもなぁ…うーん…あ、そうだ。唇はプルンと艶っぽさを、ほんのちょっと強調してあげようか。それを見た彼がドキドキするような唇に。
そして淡いピンクのチークを、散らすように頬の上にささっと。
じゃあアイメイクはどうだろう…あまり《濃いオトナメイク》にならないように、アイシャドウは控えておこう。
アイライナーは丁寧に、そして太さを抑えて清楚で上品な感じに。
瞼を挟んで痛い思いをさせないよう、細心の注意を払いながらビューラーでしっかりカールさせてあげて…マスカラは今回は黒は使わない。《クリアマスカラ》を使おう…。
『…よしっと。これで完成でいいかな』
鏡に映る自分を、じっと真っ直ぐ見詰めている可奈美ちゃん。
僕はそのまま、前髪を留めていたヘアクリップを外してあげた。
『私のメイク…どうかな…?』
そう訊くと鏡越しに、にっこりと可愛い笑顔を見せてくれた。
『佳奈美ちゃん、お気に召してくれましたか…?』
『はい。自然な感じなのがとってもいいです』
『やったぁ。ありがとう!』
最後に、今回のメイクのポイントを可奈美ちゃんに説明する。《基本的には薄めに抑えたメイク》でありながら、《唇はツヤを保たせ、ほんのり色っぽく仕上げました》と。
では…ご一緒にお会計へ。
『金魚ちゃん。こんな素敵なメイク、ありがとうございました』
『うん。デート楽しんできて。いってらっしゃい!』
『はーい』
本当にこの子、笑顔が凄く可愛いなぁ。
…ってことで、可奈美ちゃんは小さく手を振ってお店を出た。
あ!…お店の前で待っていた男子高校生と挨拶して…男子の肩を軽く叩いてケラケラと笑ってる。
相手の男子は…なんとも爽やかな雰囲気が見て感じられる。
バスケ部ですって感じ。ほんと勝手な想像だけど。
二人とも照れくさそうに、ゆっくりとそっと手を繋ぎ、お喋りしながら…眺めてた僕の視界から消えていった。
『はい!』
僕は可奈美ちゃんから一度離れ、仮設メイクルームの端っこに置いてある、メイク道具がたくさん並んで乗った、2台のワゴンのうちの1台を引っ張って、また可奈美ちゃんの隣に戻った。
そのワゴンを覗き込んだ可奈美ちゃん。
『うわぁ…凄ーい。お化粧道具がいっぱーい…』
『えへへっ…でしょ。この下の6段の引き出しにも、出し切れない道具がまだいっぱい入ってるんだよ』
『へぇ…凄い…』
ナオさんから『アルバイトの期間中は、これを使ってね』って言われたとき…全身に鳥肌がざわざわと波打った。
アンナさんも使ってた、プロ仕様のコスメワゴン。僕はもの凄く惹かれてた…本当に使いたかった。
このワゴンを使うことを許されること…それはまるで《メイクの上級者だと認められた証》…みたいな。
『まずは保湿とベースメイクからね。いい?じゃあ始めるよ』
『はい。宜しくお願いします』
まずは、ヘアクリップで前髪を丁寧に優しく留める。
そしてファンデは…この子は乾燥肌っぽかったけど…リキッドよりもパウダーかな。でもちゃんと保湿のベースもしっかりとやってあげたから大丈夫。安心だし。
それと日焼け止め効果もあって汗をかいても崩れにくい、ちょっとお高めブランドのほうを使ってあげよう。
待てよ…ナオさんに怒られちゃうかな…?
ううん。今日デートだっていうこの子のためだ。その時は素直に『ごめんなさい』しよう…うん。
肌に軽く叩き込むように、顔の輪郭のほうから…塗り塗り、トントン…そのまま顔の中心である鼻の部分から、伸ばしながら顔全体に…トントン…。
はーぁ…よし。ベースメイクは済んだ。ここからが本当にめちゃくちゃ大事。
…可奈美ちゃんに似合う《ナチュラルな可愛らしい感じのメイク》…さぁて、どういこうか。僕の中のイメージ力をフル活用…。
ふぅむ…だよね、やっぱり。若い女の子らしくキラキラしてて、優しくふわっとしてるけど、かといって艶やかになり過ぎない、少し抑えたメイクに仕上げてあげたほうがいいね。
でもなぁ…うーん…あ、そうだ。唇はプルンと艶っぽさを、ほんのちょっと強調してあげようか。それを見た彼がドキドキするような唇に。
そして淡いピンクのチークを、散らすように頬の上にささっと。
じゃあアイメイクはどうだろう…あまり《濃いオトナメイク》にならないように、アイシャドウは控えておこう。
アイライナーは丁寧に、そして太さを抑えて清楚で上品な感じに。
瞼を挟んで痛い思いをさせないよう、細心の注意を払いながらビューラーでしっかりカールさせてあげて…マスカラは今回は黒は使わない。《クリアマスカラ》を使おう…。
『…よしっと。これで完成でいいかな』
鏡に映る自分を、じっと真っ直ぐ見詰めている可奈美ちゃん。
僕はそのまま、前髪を留めていたヘアクリップを外してあげた。
『私のメイク…どうかな…?』
そう訊くと鏡越しに、にっこりと可愛い笑顔を見せてくれた。
『佳奈美ちゃん、お気に召してくれましたか…?』
『はい。自然な感じなのがとってもいいです』
『やったぁ。ありがとう!』
最後に、今回のメイクのポイントを可奈美ちゃんに説明する。《基本的には薄めに抑えたメイク》でありながら、《唇はツヤを保たせ、ほんのり色っぽく仕上げました》と。
では…ご一緒にお会計へ。
『金魚ちゃん。こんな素敵なメイク、ありがとうございました』
『うん。デート楽しんできて。いってらっしゃい!』
『はーい』
本当にこの子、笑顔が凄く可愛いなぁ。
…ってことで、可奈美ちゃんは小さく手を振ってお店を出た。
あ!…お店の前で待っていた男子高校生と挨拶して…男子の肩を軽く叩いてケラケラと笑ってる。
相手の男子は…なんとも爽やかな雰囲気が見て感じられる。
バスケ部ですって感じ。ほんと勝手な想像だけど。
二人とも照れくさそうに、ゆっくりとそっと手を繋ぎ、お喋りしながら…眺めてた僕の視界から消えていった。
1
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』
コバひろ
大衆娯楽
前作 “雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ”
(全20話)の続編。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/329235482/129667563/episode/6150211
男子キックボクサーを倒したNOZOMIのその後は?
そんな女子格闘家NOZOMIに敗れ命まで落とした父の仇を討つべく、兄と娘の青春、家族愛。
格闘技を通して、ジェンダーフリー、ジェンダーレスとは?を描きたいと思います。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる