女装と復讐は街の華

木乃伊(元 ISAM-t)

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女装と復讐 -街華編-

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鈴ちゃんは悲し気に下を向いた。


『…ごめんなさい』


詩織は少し慌てながらも、鈴ちゃんに優しく言葉を掛けて返す。


『鈴ちゃんが悪いんじゃないもの。だから鈴ちゃんが謝ることないよ』


僕も詩織に続いて言葉を掛ける。


『そうだよ。別に…ただ鈴ちゃんは彩乃ちゃんに、サイトを譲って代わりをお願いしたってだけだし。悪いのは…』

『ううん。そうじゃなくて…』


…えっ、そうじゃなくて…?

鈴ちゃんは心苦しそうに僕らを見た。


『…私が彩に、このサイトの受け継ぎをお願いしたとき…私のこのサイトへの《想い》や《願い》を彼女に伝えきれなかった…言葉が足りなかった私が一番悪いの…』






…鈴ちゃんが同じ中学で同級生の、パソコンに詳しいことでよく知られていた男子にお願いして、初めて《早瀬ヶ池に集まる女の子たちの為の、早瀬ヶ池情報サイト》を作成してもらったのが14歳の頃。

その頃のサイト名は《早瀬ヶ池☆情報通信》だった。

サイトを公開して間もなく、すぐに同級生たちのあいだで利用が広がり、中学の生徒全体にも広がり、他の中学校や高校生にも広がって…そうやってこのサイト《早瀬ヶ池☆情報通信》は、早瀬ヶ池の女の子たちの集まる情報交換サイトとして有名になり流行っていった。

…2年が経ち、高校生になって《G.F.》デビュー。そしてその年末に《G.F.アワード受賞》までも果たした鈴ちゃん。16歳で芸能界入り。
アイドルとしての芸能活動の忙しい最中でも、鈴ちゃんは《早瀬ヶ池☆情報通信》の管理を怠ることはなかった。

…18歳になって、宮端学院大学にも余裕で合格した鈴ちゃん。今まで頑張ってきたサイトの管理も、もう限界…今後それを続けてゆくのは難しいと自ら判断し、当時14歳だった実妹の彩乃に、サイト管理の受け継ぎをお願いした…。






『…私は早瀬ヶ池がいつまでも、《この街に来ればどんな女の子でも、誰でもお洒落な可愛い子になれる》って、これからもずっとそう言われてほしい…そんな願いを込めて、彩にサイトをお願いしたつもりだったのに…』


…そのための《早瀬ヶ池情報サイト》だった。


『…けどね、彩は私の想いを勘違いして理解したようで…彩はサイト名を《★Colorful-Girls★》と改名して《お洒落な女の子以外は早瀬ヶ池の街から追い出す!》という姿勢で《早瀬ヶ池はお洒落な女の子たちの街》の定着イメージを維持しようとし始めたの…』


…つまり、サイト管理者が鈴ちゃんから彩乃に代わって《決してお洒落だとは言えないような女の子でも、ここに来れば絶対に可愛くお洒落になれる…そんな小粋な街》を願ったサイトの理想像が《ダサい女の子は早瀬ヶ池から徹底的に排除!》の姿勢に、すっかり変えられてしまった…。
























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