女装と復讐は街の華

木乃伊(元 ISAM-t)

文字の大きさ
上 下
356 / 490
女装と復讐 -街華編-

page.345

しおりを挟む
…7分ちょっとで新井早瀬駅に到着。

地下鉄の改札口を通過し…瀬ヶ池の街へ来てた女の子たちから、ささやかな声援を貰い、それに応えながら…詩織と僕は、東京都の品川区へと帰宅する歩美さんを見送るため、長い長い駅の構内を案内して…今、その改札口の前。


『金魚ちゃんも詩織ちゃんも、ほんとに凄い人気者だね!』

『あはは…んまぁね』

『…お二人とも、今日は本当にありがとう…』


来たときと同じようにダンボール箱を抱き抱え、僕らに笑顔をくれる歩美さん。


『いえいえ。そんなそんな。それよりも啓介くん、いいお部屋を見付けてくれるといいね!』

『うん。啓介さんにも私、いっぱいお礼を言わなくちゃ』



…今日も改札口を挟んで、お互いに精一杯に手を振り合い、僕らは東京へと帰る歩美さんを見送った。






駅を出て、詩織が岡ちゃんに電話…したら、岡ちゃんのスマホの留守電が起動。
これは《ただ今業務中。電話に出られません》という証し。なので留守電に…。


『岡ちゃーん。お疲れさまぁ。詩織です。今日の帰りはアンナさんに迎えに来てもらいまーす。心配しないでねー』






詩織が続けてアンナさんに電話して…駅前で待つ僕らに手を振ってくれた女の子らに手を振り返しながら…約17分が経過。
ようやくアンナさんの車が僕らの目の前に…そして停車。


『アンナさん、お仕事中なのにごめんなさーい』
『ありがとうございます。アンナさん』

『いいから。乗りなさい』






『…うん。そうなの!鮎美ちゃん、無事に秋良くん達と一緒に働けることになったの!はーぁ…良かったぁ♪』


運転しながら詩織の話に耳を傾け、頷いてあげているアンナさん。


『そういえば…アンナさん、まだ鮎美ちゃんに会ったこと、ないんだよね…』

『そうね』

『早くアンナさんに会わせて、鮎美ちゃんも《アンナファミリー》に誘ってあげなきゃ!』


笑顔でアンナさんにそう言いながら、振り向いて詩織はふと僕を見た。


『金魚も、そう思うでしょ?』

『…。』


詩織は突然、何かを思い出したかのように…。


『はっ!?ヤバっ!!…ってか金魚!まだ正式にアンナファミリーに加入してなかったよね!?…本っ当ごめん!もうしてたって気に私なってた!!』


僕は小さく頷いて返し、詩織に訊いた。


『あの、詩織…初めに《アンナファミリー》って考えたのは誰?』


詩織は、ふと真顔になって…少し微笑んでから僕に答えてくれた。


『私よ』






初めて詩織が『アンナファミリー』と言ったのは、14歳のとき…らしい。


『…ファミリーの1番目は、もちろん雄二さん。次が私で…その次が、前から美容院クローシュ・ドレのお客さまだった春華さん。4番目が春華さんの彼氏の秋良くんで…次に啓介くんも加わって…その次が大基くんで…』


詩織は思い出を懐かしむかのように、微笑みながら少しうつむいて、優しくそおっと…胸に抱いたお気に入りのテディラビッ……えっ!?



ちょっ…こらぁ!詩織!!!
























しおりを挟む
感想 224

あなたにおすすめの小説

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

OLサラリーマン

廣瀬純一
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...