上 下
355 / 490
女装と復讐 -街華編-

page.344

しおりを挟む
とにかく…この1週間のあいだで、歩美さんの住むアパートを探さなければならない…という課題は残ったものの…。

無事に歩美さんの夢が叶って、秋良さんが個人で運営する【Posi-Stylish/Japan】への就職も決まったことだし、全員がケーキを食べ終えたところで、詩織が『私たちが居ると、秋良くん達のお仕事の邪魔しちゃうし…そろそろ帰ろっかなー。私たち』と切り出した。



…そして、事務所のビルの表まで、わざわざ見送りに出てきてくれた、秋良さんと啓介さん。そして歩美さん。


『…ってことで、歩美ちゃんの新しく住む部屋探しは、この頼りになる《啓介》に任せておけば安心だ。なんにも心配要らないからな!』


啓介さんは、驚いた顔で秋良さんを見た…けど。


『啓介さん…宜しくお願いします』

『え…待っ、ちょっ…』


『お願いします』とお辞儀した歩美さんを見て、啓介さんはそのまま視線を流してまた秋良さんを見た。


『いやいや…秋良さんも一緒に探してくれるんじゃ…部屋』

『はぁ?バカ言えよ啓介。お前も解ってんだろが。俺は縫製工場へ搬出する衣装サンプルの荷造り確認とか、出納帳に溜まった収支の簿記処理とか、受注確認の電話対応とか…とにかく忙しいんだ!』

『まぁ…確かに…』


更に秋良さんは啓介さんを指差して、歩美さんに向かって一言付け加えた。


『部屋探し担当者だけじゃないぜ。歩美ちゃんが働きはじめたあとの《負んぶに抱っこ》の世話役も、ぜーんぶ啓介にやらせっから』


『はぁ!?…秋良さん!』

『なんだ?…だから!俺は忙しいっつってんじゃんか!』


秋良さんもまた、啓介さんを見た。


『…んん?お前まさか…歩美ちゃんのことが《嫌い》か…?』

『啓介…さん…』


秋良さんのその一言に、歩美さんは不安そうな表情に少し切なそうな雰囲気も混じって、啓介さんをゆっくりと見詰めた…。


『啓介くんは鮎美ちゃんのこと、嫌いじゃないよね。だってむしろ…』


啓介さんは詩織のその言葉に、少し躊躇しながらもウンと小さく頷いた。


そして歩美さんを安心させようとしてるかのように、啓介さんは歩美さんに向かって優しく微笑んだ。


『まさか嫌いとか…んな訳。ってことらしいから…歩美ちゃん。分からないことがあったら何でも俺に訊いたり、何でも頼ってくれればいいよ』

『はい!啓介さん。私、嬉しいです。ありがとうございます!』


また明るい、柔らかな笑顔に戻った歩美さん。
ダンボールを抱えたまま、啓介さんに深々と会釈した。

秋良さんもニコニコ顔で、啓介さんの肩をポンと軽く叩いた。


『おーし。つーことで頼んだぜ。頑張れよな!啓介』

『では…私も、今日は東京に帰ります』






…春華さんに地下鉄の駅まで送ってもらい、降りて新井早瀬駅へと向かう電車に乗車。

適度に混み合う車内。だけど出発してすぐ、それまでシートに座っていた男子学生らしき2人組に『ど、どうぞ』と、僕らは優しく席を譲ってもらえた。

歩美さんと詩織が笑顔で可愛らしく『譲ってくれるの?わぁ♪ありがとーぉ♪』とお礼を言い、3人でシートに座った。


…降りるの新井早瀬駅だから、すぐっちゃすぐなんだけどね…電車降りるの。
























しおりを挟む
感想 224

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

バーチャル女子高生

廣瀬純一
大衆娯楽
バーチャルの世界で女子高生になるサラリーマンの話

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

兄の悪戯

廣瀬純一
大衆娯楽
悪戯好きな兄が弟と妹に催眠術をかける話

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...