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女装と復讐 -街華編-

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10秒…いや、3秒だけあれば、この綺麗な唇に…。

ちょっ、こら!!待て信吾!!なに考えてんだって!!
いくら歩美さんが眠ってるし、誰にも見られる心配なんてないからって…んな事していいわけないだろうが!!止めろーっ!!

だけど…。

心内こころうちで葛藤を繰り返すうち…意識が朦朧としはじめ、あたまがクラクラと…。

僕は今までに何度、メイクした自分の顔…鏡の中の金魚に恋焦がれ、こんな天使みたいな女の子が本当に居たらなぁ…なんて思ったことか…。




もう我慢の限界!駄目だ!!居ても立ってもいられない!!

僕は意を決して…!






『…あ、鮎美ちゃーん。もう起きてたの?』

『うん。本当に色々と…ごめんね』


どこへ行ってたんだろう…詩織が接客席へと戻ってきた。歩美さんは上体を起こし、ソファーにきちんと座っている。

詩織は僕がさっきまで座っていた、歩美さんの隣に座った。


『あの…ここ、どこ?』

『えへへっ。ここはね、私のお知り合いの《ナオさん》ってお姉さんが経営しているコスメ店なの。だから安心して』


詩織の微笑みにつられ、歩美さんも小さく笑った。


『…なんだかほんのりと甘くて…とても心地のいい香りが漂ってる…』


詩織はキョロキョロと辺りを見回す。


『ねぇ、金魚は?鮎美ちゃんの隣に座ってたはずなんだけど…』

『えっ?私、知らない…』


店舗内に微かに響き、僕の耳に届いた詩織の『金魚ー?』の声に、僕も接客席へと戻る。


『金魚!もぅ何してたの!』


目の前に来た僕に怒る詩織…僕は少し気まずそうに2人を見た。


『ちょっとだけ、新商品の化粧品を見に…』

『ウロウロせずに鮎美ちゃんの隣に座ってあげてて、って私言わなかったっけ!?』

『うん。言ってた…あの…ごめんなさい…』


だって…仕方なかったんだ…!

どうしても抑え切れなかった、男性の本能的な《Kissしたい!》って衝動から逃れるために…慌てて…。



そんな僕の葛藤や判断を、詩織も歩美さんも最後まで、感付いてくれることはなかった。






『本当に詩織ちゃん、金魚ちゃん…色々とありがとうね』

『ううん。気にしないで』


歩美さんは、そろそろ東京へ帰るという。3人でナオさんの元へと向かい、歩美さんはナオさんにお礼を言った。

そしてお店の玄関へと向かう途中…。


『ねぇ、鮎美ちゃん』

『うん』


呼ばれて歩美さんは、振り向いて詩織を見た。


『鈴ちゃんが、鮎美ちゃんにもお土産買ってきてくれるんだって。だから来週もここ…藤浦に来てね』

『…お土産?』

























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