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女装と復讐 -街華編-
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『金魚…あのね…』
iPhoneをまた、膝の上に乗せたハンドバッグの中に戻し入れながら、詩織は僕に話し掛けてきた。
『うん。泉美ちゃんから…?』
僕が振り向き眺めていた詩織の横顔が、ぷいっとこっちに振り向いた。そして互いを見合う。
『そうなの。お久しぶりーな泉美ちゃんからの電話だったんだけどね…』
『うん。それで?』
…ってか詩織。もっと早く、テンポ良く話してよ…。
「金魚の偽物がね…新井早瀬駅のスタバに居るんだって…っていう電話」
詩織が運転中の岡ちゃんに聞こえないように、小声で僕に教えてくれた。
「へぇ…そうなんだ」
『…でもいいよね。わざわざ確認しに行かなくても。もう時間もあんまり無いし』
鈴ちゃんとのランチの待ち合わせ時間は、今日は午後0時10分。場所はアンプリエのあの大きな玄関口の前。
今日は15階にある中華料理屋さんでランチの予定…って、それはまぁいいとして…。
詩織は実は極度の《待ち合わせ時間、超厳守っ子》。《5分前行動》どころか、30分前に待ち合わせ場所に向かい到着…ってことも、全然へっちゃらって子だ。
『いつ、何が起こるか分からないでしょ?だから行動はいつでも早いほうがいいの!』…とは言っても、詩織…30分前ってのはさすがに…。
例えば『待ち合わせ時間までに、まだ25分は余裕があるよ』って、『25分もあれば、偽物金魚の横顔くらい、ちらっとでも見られるんじゃない?』なんて僕が詩織に言ったとしても、詩織の脳内変換に任せたら《25分じゃ時間があんまり無い》…である。
そしてもう一つ、僕も詩織も金魚の偽物を、わざわざ追い込むようなことはしない…つまり完全な《野放し状態》にしている理由がある。
それは…偽物金魚の存在自体はべつに、僕…本物金魚には何の被害も無いみたいだから。
瀬ヶ池の女の子たちも、もう《本物》と《偽物》の区別もできてるようだし。
ただひとつ、前から気になってたのは…逆に瀬ヶ池の女の子の誰かに【そろそろ、あの金魚ちゃんの偽物をうちらで捕まえて、ぎゃふんと言わせちゃおっか!?】などと《カラフル》に書き込まれてたのを、偶然にも見てしまったこと。
まさか…ね?
まぁ、いずれにしても…とにかく本物金魚への悪影響は今のところ無いんだし、この件に関しては、放置でもいいかな…ってことで。
…もうすぐ午後1時。詩織と僕と鈴ちゃんは4人用のテーブル席に座り、美味しかった《飲茶と餃子とミニ炒飯のランチ&スープ付き》を食べ終えて、ちらほらと雑談を始めていた。
iPhoneをまた、膝の上に乗せたハンドバッグの中に戻し入れながら、詩織は僕に話し掛けてきた。
『うん。泉美ちゃんから…?』
僕が振り向き眺めていた詩織の横顔が、ぷいっとこっちに振り向いた。そして互いを見合う。
『そうなの。お久しぶりーな泉美ちゃんからの電話だったんだけどね…』
『うん。それで?』
…ってか詩織。もっと早く、テンポ良く話してよ…。
「金魚の偽物がね…新井早瀬駅のスタバに居るんだって…っていう電話」
詩織が運転中の岡ちゃんに聞こえないように、小声で僕に教えてくれた。
「へぇ…そうなんだ」
『…でもいいよね。わざわざ確認しに行かなくても。もう時間もあんまり無いし』
鈴ちゃんとのランチの待ち合わせ時間は、今日は午後0時10分。場所はアンプリエのあの大きな玄関口の前。
今日は15階にある中華料理屋さんでランチの予定…って、それはまぁいいとして…。
詩織は実は極度の《待ち合わせ時間、超厳守っ子》。《5分前行動》どころか、30分前に待ち合わせ場所に向かい到着…ってことも、全然へっちゃらって子だ。
『いつ、何が起こるか分からないでしょ?だから行動はいつでも早いほうがいいの!』…とは言っても、詩織…30分前ってのはさすがに…。
例えば『待ち合わせ時間までに、まだ25分は余裕があるよ』って、『25分もあれば、偽物金魚の横顔くらい、ちらっとでも見られるんじゃない?』なんて僕が詩織に言ったとしても、詩織の脳内変換に任せたら《25分じゃ時間があんまり無い》…である。
そしてもう一つ、僕も詩織も金魚の偽物を、わざわざ追い込むようなことはしない…つまり完全な《野放し状態》にしている理由がある。
それは…偽物金魚の存在自体はべつに、僕…本物金魚には何の被害も無いみたいだから。
瀬ヶ池の女の子たちも、もう《本物》と《偽物》の区別もできてるようだし。
ただひとつ、前から気になってたのは…逆に瀬ヶ池の女の子の誰かに【そろそろ、あの金魚ちゃんの偽物をうちらで捕まえて、ぎゃふんと言わせちゃおっか!?】などと《カラフル》に書き込まれてたのを、偶然にも見てしまったこと。
まさか…ね?
まぁ、いずれにしても…とにかく本物金魚への悪影響は今のところ無いんだし、この件に関しては、放置でもいいかな…ってことで。
…もうすぐ午後1時。詩織と僕と鈴ちゃんは4人用のテーブル席に座り、美味しかった《飲茶と餃子とミニ炒飯のランチ&スープ付き》を食べ終えて、ちらほらと雑談を始めていた。
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