女装と復讐は街の華

女装と復讐 -街華編-

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詩織や僕が次に何を言うのかと、その言葉を待っているかのように黙り込んでる彩乃。

周りの女の子たちも僕らをじーっも見てる。そして僕らの背後…撮影室の扉の前に立つナオさんも。

ただ本当に黙って下を向いてるのは…詩織だけ。


『…彩乃ちゃんは本当の姉妹のように…本物の姉のように、ずっとずっと自分が慕ってきた、大好きで大切な人からのお願いだったとしても、本当にそれでも断れる？』

『はぁ？言ってることがさっぱり解らないっての！もっと簡素で具体的な説明ってできないの？あなたって』

『じゃあ…金魚の代わりに、私がもっと分かり易く結論から言ってあげるわ』


背後から声…もっと分かり易く結論から言ってあげると、そう言ったナオさん。
僕はその声に対し、全く振り向けずにいた。


『ズルいやり方の素人モデルデビューだか何だか知らないけど…』

『お言葉を挟んですみませんが、私たちのこの言い争いに、口を出さないんじゃありませんでしたか？』


ナオさんに、失礼にも言葉を返す彩乃。


『いいから黙って聞きなさい！』

『…。』


ナオさんも彩乃に言い切り返す。


『詩織ちゃんのモデルデビューへの、特殊な手続きのやり方について、あなたが《詩織ちゃんが悪い！》って言うのなら、悪いのは詩織ちゃんじゃないわ。本当に悪いのは…アンナよ。篠崎杏菜』

『ナオさん！』


咄嗟に振り向き、ナオさんを見る詩織。


『詩織ちゃん…あなたはよく今までアンナを庇かばって、自分独りで耐えて頑張ってきたわよね』


ナオさんは優しく詩織を見た。


『そんなに苦しむくらいなら言えば良かったのよ。《私は何度も何度も断ったのに、アンナが勝手に…規約違反して強引に、専属モデル就任希望届けを広告制作委員会に強制提出したんです！》って』

『えっ！？…なによそれ…』


ナオさんが彩乃を見た。


『真実が見えてないのに、それについて言い合うなんて無駄でしょ。モデルデビューのルール違反が起こった原因は《アンナの身勝手な行動》…もっと分かり易く言うなら、ただの《アンナの強引なわがまま》ってとこよ』






…詩織は優しいアンナさんが大好きだった。アンナさんも、本物の妹のような可愛い詩織が大好きだった。

詩織が中学２年生になった頃…横顔も大人びてきた可愛らしい詩織を見ていて…。

いつしか、雄二さんと２人で秘めた《とある壮大な計画》のために、詩織をこの美容院の専属モデルにすることを腹案。そして…。

《G.F.》デビューなんか待ってたって、いつになるのかなんて判らない。ましてや本当に視察員と遭遇し、デビューできるかも判らない。
そこで強引に、モデル就任を強行した…。






『そんな即興の作り話を、私が信じるとでも思ったんですか？』