女装と復讐は街の華

木乃伊(元 ISAM-t)

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女装と復讐 -街華編-

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…先週の土曜日、僕が久々に瀬ヶ池へと出掛けたら、その新井早瀬駅構内で、あの有名な池川金魚ちゃんを目撃。

しばらく野次馬して観てたら、宮学の学生を探してる様子…?
だから僕が手を挙げたら、その金魚ちゃんに『これを樋口絵里佳ちゃんっていう女の子に渡してほしいの』と頼まれたんだ…。




…と、その場しのぎのでっち上げ話を樋口にしても、今のでっち上げ話でなんとか信じてくれた樋口。

手紙は手書きだけど、その筆跡からは絶対にバレない自信があった。だって本物の女の子の字…詩織が僕に代わって書いてくれたからだ。

手紙を読み終えた樋口。封筒の中に、まだ何か残ってるのに気付き、それを取り出す。


『あ…写真…』


両手で手を振り、笑顔で写るその金魚の全身写真の裏には、ピンクのマジックで《大切なお友達 - 絵里佳ちゃんへ☆》と詩織の字で書いてある。

それを見て一瞬、にこりと小さく笑顔を見せ…掛けた樋口。


『はぁ?なに私の顔をジロジロ見てんだよ…岩塚ぁ!』

『えぇっ!?…いや、あの…ごめん。なさい…』


僕は話題をすり替えるかのように、慌てて樋口に訊いた。


『あの…手紙には…なんて書いてあっ…』


樋口は手紙と写真を封筒に丁寧にそっと戻し、一度胸に抱いてから、自分の鞄の中へ入れた。


『…バカ岩塚なんかには…教えない!!』

『…。』


くるりと背を向け、樋口は軽く駆けて正門を潜り去っていった…。






ほんとはもちろん、手紙の内容は樋口に訊かなくても分かってる。
だって書いたのは詩織だけど、考えたのは僕だから。


【…絵里佳ちゃん、彩乃ちゃんなんかに負けないで。また早瀬ヶ池に戻ってきて。そしたらまた一緒に瀬ヶ池の街を歩こう。約束だよ。私待ってるから。頑張って…】


そして最後に書き添えた、金魚のPCメールアドレス。

今回、樋口に渡すために《akahime_kurosukekun@…》と、金魚専用メールアドレス取得のために、わざわざ新しいアカウントまで作成したこの気合いの入れよう。

あとは今後メールを通じて、樋口の現在の心情状況の把握や確認を。

そして《私は独りじゃないんだ。金魚と詩織っていう頼れる友達がいる。もう彩乃なんて怖くない!》と勇気づける…樋口を精神面から強くさせるって作戦。

樋口…頼む。僕らが何の心配もなく、彩乃に復讐を果たせるかどうかは、樋口の《もう彩乃にビビらない!》強さにも掛かってるんだから。






僕がアパートに帰宅すると、僕のパソコンにもう樋口からメールが届いてた。


【…このアドレスの金魚姫さまは本物ですか?だったら証拠に左手に、しゃもじを持った写真を1枚添付して返信ください…】


…さっそく樋口に疑われてるし…。


























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