女装と復讐は街の華

木乃伊(元 ISAM-t)

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女装と復讐 -街華編-

page.275

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『ぼ…僕が誰かとキス!?…そ、そんなの有り得ないで…すよ…?』

『…。』


僕はつい、無意識に口を右手で隠して、少し斜めに横を向いてしまってた…。


『金魚…だけど』

『あ、あーっ!そう!たこ焼き!…アンプリエの前に車を停めて、たこ焼き売ってた軽ワゴン車のお店でたこ焼き買って、歩きながら食べてたら…唇にかつお節がくっ付いてて…』


…それを通りすがりの女の子たちが、わざわざハンカチを出して僕の唇を拭いてくれたんです…。

なんて…苦しい言い訳を、一生懸命頑張った…僕。


『い…今考えると、たこ焼き売ってたあの軽ワゴン車…ちゃんと営業許可を得て販売してたのかなー。じゃなかったら違法販売だけどー…』


ちょっと僕を疑いの目で見てたアンナさんは、急にケラケラと笑い出した。


『あははは。何事もなく帰ってきたんだし…まぁいいわ』


…ほっ。
たっ、た…助かった…。


『そういえば、さっきね…秋良くんから電話があったの』

『えっ?秋良さんから…ですか?』

『えぇ。そうよ』






アンナさんの話によると…こどもの日である5月5日の金曜日、午後に京都の小旅行から詩織が帰ってくるから、その日の夜…詩織の誕生日祝いを兼ねて、みんなで集まって何処か食いに行こうぜ!…って、秋良さんからの提案らしい。


『信吾くんも、大丈夫よね?』

『はい。わかりました』


僕もこのプレゼント、詩織に渡さなきゃならないし。




…そんな会話のあと…僕はさっさとクレンジングを済ませて着替え、アンナさんの美容院を出て僕のアパートへ、逃げるように慌てて帰った。




今…午前1時過ぎです…ね…寝られない…。

うわぁぁ…身体中にまだ残ってる、樋口絵里佳の柔らかな感触…うぅ。

今夜は絶対に悪夢を見る!…なんて思ってたけど、それどころか眠れないんだから…その悪夢さえ見られない…。






結局…眠れたのは早朝4時…朝8時には、もう眠りが続かなくて、目が覚めて起きたし…でも少しスッキリ。

まだGW中だからいいや。でも今日は一人では瀬ヶ池には行けません…って、アンナさんに電話しとこう…。






…そして次の日。5月5日の金曜日。ただ今の時刻は午後5時36分。
場所は、いつものようにアンナさんの美容院の店内。

美容院の玄関扉には…。


《本日は店長の私事情により、午後からの営業を急きょお休みさせて頂きます。まことに申し訳ございません。》


…の張り紙。


『ねぇ…信吾、今日は金魚にはならないの?』


もう京都の小旅行から帰ってきてた詩織。


『えっ…なんで?今夜は瀬ヶ池に行くんじゃないよ。詩織…』

『うん。だから金魚に着替えてほしいの』

『…はぁ?』


どういうこと?…って思ったら…。
























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